医療現場へのMac導入は「クラウド型電子カルテ」が鍵。医療の質向上、医師の働き方改革にもつながるクラウドの価値/兵庫・みやそう病院のAppleデバイス導入事例(2)

2026.09.09 牧野武文 約6分
医療現場へのMac導入は「クラウド型電子カルテ」が鍵。医療の質向上、医師の働き方改革にもつながるクラウドの価値/兵庫・みやそう病院のAppleデバイス導入事例(2)

兵庫県伊丹市の中規模病院・みやそう病院では、医師用の業務端末としてMacBook Neoを導入し、業務効率を向上させている。Windows PCからMacへのリプレイスが実現したのは、クラウド型電子カルテが導入済みだったことが大きい。業務ツールをクラウド化したことにより、医師の働き方が変わり、医療の質の向上にも貢献している。その詳細は同院の守克則病院長に聞いた。

本記事は、みやそう病院の取材記事の第三回。第一回は以下からチェック。
●「Macが医療現場にもたらすコスト削減、業務効率化ほか多様な利点。“医師の本分”たる『診察と治療』への集中をサポートするMacBook Neo/兵庫・みやそう病院のAppleデバイス導入事例(1)

クラウド型の電子カルテシステムが医療の世界を変える

兵庫県伊丹市の地域に根ざした中規模病院・みやそう病院では、医師用の業務端末としてMacBook Neoの積極導入を進めている。医師の仕事は、診療、治療とともにカルテ業務が大きな割合を占める。

「時間で言えば、勤務時間の半分かそれ以上はカルテを読んだり、書いたりしています」(みやそう病院 守克則病院長)

取材に応じていただいた守克則病院長。

なぜなら、カルテが医療の中心になっているからだ。医師はカルテに診断や治療計画を記入する。医療スタッフはカルテを元に治療、看護を行い、患者の容体を記録。医師はそれを見て、治療計画が適切であるかどうかを判断し、適宜修正していく。カルテにすべての情報が集約されているため、医師は誰が読んでも齟齬が出ないようにカルテを書かなければならない。

このとき活躍するのが写真だ。

「私は整形外科の医師なのですが、たとえば傷や床ずれなどの写真を診察のたびに撮っておけば、時系列順に見ることで治療の経過がすぐにわかります」

みやそう病院では、病棟スタッフはiPadや専用端末をカートに乗せて病棟を回り、電子カルテを確認し、看護ケアの内容を記録する。その際、iPadのカメラが写真撮影にも活用され、医師は業務端末から閲覧できる。かつてはデジタルカメラを持ち出して撮影し、データを吸い出して業務端末に移行したうえで、電子カルテ上に添付する必要があった。クラウド化とiPad導入が、これらの手間を解消した。

スタッフは病棟を回る際にiPadを携帯し、電子カルテに基づいて看護業務を行う。また、病室で行った処置はすべてカルテに記録する。

同院が利用している電子カルテシステムは「Henry」だ。Henryはクラウド型のシステムで、Webブラウザから利用できるため端末を選ばない。これが医療の世界を大きく変えようとしている。

兵庫県伊丹市のみやそう病院は、一般病床49床、療養病床48床の中規模病院。クラウド型電子カルテ「Henry」を採用したことにより、医師が業務端末としてさまざまな端末を選べるようになっただけでなく、医師の働き方改革にも大きな効果が得られているという。

MacとWinの共存は持続する方針だが、“二刀流”は課題

みやそう病院がMacBook Neoを導入しようと考えたのも、カルテがクラウド化され、機種を選ばなくなったからだ。同等のスペックで比較するとWindows PCの半分のコストで済むMacBook Neoを導入したところ、その機動力と使い勝手のよさに驚いた。その結果、今後は医師の業務端末をMacBook Neo中心に移行する方針を固めている。

もちろん、病院が必要としているシステムのすべてがクラウド化されているわけではなく、画像診断システムや検査システムなどWindows専用アプリケーションでしか動作しないものもある。そのため、Windows PCがすべてMacBook Neoに置き換わるわけではない。

また事務系など、日常的に使うアプリケーションがWindows専用のものが多い部署では従来どおり、Windows PCを利用していくそうだ。問題は医師で、MacBook Neoを業務端末として導入しても、Windows PCを使わなければならない場面が残っている。

「現在、医師はMacとWindows PCを2台、使わざるを得なくなっています。将来的にはMac対応アプリがリリースされたり、クラウド化されたりして、MacBook Neoだけでも業務が進められるようになることを期待しています」

守病院長は「Parallels Desktop」アプリなどを使って仮想化環境を構築し、MacBook Neo上でWindowsを動かすことも考えているが、現在は個人で検証を始めている状況だという。

クラウド型とMacBook Neoによる医師の働き方改革

電子カルテがクラウドになったことで、医師の働き方は大きく変わった。電子カルテでも、病院内にサーバを置いてアクセスするオンプレミス方式では、セキュリティを確保するため病院内にいないとカルテを見ることができないものが多い。

一方クラウド型電子カルテでは、すべてのアクセスで「誰が、どの端末から、どこから」を毎回検証するゼロトラストモデルが主流になっている。と言っても認証はすべて端末が自動で行ってくれるため、ユーザは端末を開くだけでアクセス可能だ。この「どこからでも電子カルテにアクセスできる」環境が医師の働き方を変えた。

「カルテがクラウド化されたことで訪問診療もより柔軟になりました。患者さんのご自宅や入居先の施設でカルテを見ることができるため、適切な医療が行えます」

加えて大きいのは、医師の勤務時間外、休日の過ごし方だ。

「医師というのは、休みのときでも自分の患者のことが気になるものです。働き方という観点ではよくないことなのかもしれませんが、どうしても容態が気になり、休日にもかかわらず病院に足を運んでしまうということが以前はたびたびありました。家族旅行に行っても心ここに在らずで、旅先から何度も病院に電話をかけて状況を確認したり。しかしカルテがクラウド化したことで、ちょっとした隙間時間に内容を確認できるようになったため、それで安心することができます。

また、容態の急変は医師のタイミングを選んでくれません。かつては緊急の電話があると休日返上で病院に駆けつけていましたが、現在はMacBook NeoやiPhoneからカルテにアクセスし、外から適切な指示を出せるようになりました。むしろ仕事とプライベートの切り替えがしやすくなっているのです。」

休むときは安心して休むことができる。医師という責任の重い職業である以上、多少の緊急出勤は仕方がない面もある。しかし、心理的な負担は大きく減った。これにより、医師も体調や心の管理がしやすくなる。職業としての環境が改善されるだけでなく、質の高い医療や医師本人のやりがいにも結びついていく。

この大きな原動力になっているのが、クラウド型システムと安価で軽快に動くMacBook Neoだ。この2つの組み合わせは、今後さまざまな分野に広がっていく可能性がある。

病院内外を問わず、MacBook Neoから電子カルテを閲覧できる。この機動力は、業務効率だけでなく医師の働き方改革にもつながっている。

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