
名実ともに先進的なICT教育の環境は、どのように育まれてきたのか
昭和女子大学附属昭和中学校・昭和高等学校(以下、昭和中学校・高等学校)は1920年創立の中高一貫校。理系分野で活躍する女性の育成を意識した教育にも力を入れています。ICT環境の整備と活用にも積極的で、GIGAスクール構想も踏まえた環境整備はもちろん、近年は「総合的な探究の時間」のカリキュラムも推進しています。
「総合的な探究の時間は、『つくる』ということを最上位の目標としてICTの活用に取り組んでいます。『つくる』はものづくりに限らず、組織や仕組みづくりといった幅広い視点でクリエイティブな精神を育むことを重視しています」
驚くことに、昭和中学校・高等学校ではGIGAスクール以前からすでに生徒1人に対して1台のPCを利用する体制が整っており、各教室には電子黒板プロジェクターも備わっていたといいます。そのため、コロナ禍で全国の教育現場が混乱したときにも、「Zoom」によるオンライン授業への切り替え、「Google Workspace for Education」を介した課題の配信などもスムースに対応できたそうです。
そんな同校では、令和7年度から中学校の新入生を対象に、授業などの学校生活で使用する1人1台のデバイスをMacBook Airに統一しました。端末は各家庭で購入し、在学中は学校の管理下で利用します。このプロジェクトを主導したのが、小川諒大先生です。
小川先生の着任当時、生徒用端末はWindowsを基本とするBYOD(Bring Your Own Device)で、学校ではSurfaceを推奨端末としていました。しかし、生徒ごとに端末の設定が異なり、トラブル対応が難しいなどの課題があったことから、中学校での端末をChromebookに変更。学校のICT環境の中心であるGoogleの管理機能を利用して、一元管理する体制へ移行していました。
「もともと1人1台のデバイスはWindowsの2in1タイプのものだったのですが、特にこうしたデバイスに初めて触れる中学生にとっては機能が多すぎて難しいのかなという課題がありました。のちにChromebookに変更したのですが、これはGoogleが純正のMDM(モバイルデバイス管理ツール)を提供していたことも背中を押してくれたという経緯があります」

1人1台デバイスにMacBook Airを選んだ理由
1人1台デバイス環境を実現していた昭和中学校・高等学校ですが、生徒のICTへの関心が高まるにつれて、プログラミングや動画編集など生徒一人ひとりが取り組みたいことが増えていき、Chromebookではそれに対応するのが難しいというケースも散見されるようになってきました。
「動画編集など、デバイスでできることや機能の充実度を比べたときに、Macのほうができることが多くて、Chromebookでしかできないことはあまりないということに気付いたんです。もちろんそのぶんMacの価格は高いのですが、最近はMacとそのほかのプラットフォームのデバイスとで価格差がずいぶん縮まってきたことも大きかったです」
意外なことに、デバイスの総合的な管理という面でも、Macプラットフォームにアドバンテージがあったといいます。この場合の「総合的」という言葉には、Appleデバイス向けのMDMの使いやすさや管理負荷の少なさに加え、故障などのトラブル発生率の低さも含まれます。
「以前は予備機としてのデバイスを常に20台ほど用意していたのですが、年度によってはその全部が修理中の生徒への貸出で出払ってしまうこともありました。今は予備機もMacで、予算の都合上用意できる台数は半分以下になりましたが、それでも余裕を持って回すことができています。このあたりは、さすがMacのハードウェア、ソフトウェアの信頼性は高いと感じます」
また、MacのラインアップからMacBook Airを選んだ主な理由は、必要な性能と価格のバランスでした。中学校の入学段階ではエントリーモデルでも性能的に十分であり、データ保存にはGoogleドライブやiCloudなどのクラウドストレージが利用できるという判断もありました。

実際に導入してみて見えてきたこと、生徒や保護者の反応は?
このような経緯で、中学校の新入生に1人1台デバイスとして導入されたMacBook Airですが、生徒たちからの評判は上々なようです。
「Macを手にしたとき、やっぱり生徒がすごく嬉しそうにするんですよね。ワクワクしながら使っているというか。そんなMacを使っていろいろなことに挑戦して、『つくる』ことを突き詰めていってもらえたらいいなあと思いますね」
その一方で、保護者の中には普段Windowsなど別のプラットフォームをメインに仕事をしている人も多く、からは「なぜWindowsではなくMacなのか」「Macでなければならない理由は何か」といった疑問や、費用面を懸念する声もあったといいます。
こうした疑問に向き合ううえで学校側が判断材料としていたのが、端末価格だけではなく学習でできることや管理負荷、故障時の対応まで含めて比較するという考え方でした。Chromebook自体の価格が上昇してMacBook Airとの価格差が以前より縮まっていたことに加え、プログラミングや動画編集など生徒の用途が広がっていたこと、MDMによる管理のしやすさなどを総合的に検討した結果として選定されたのがMacBook Airだったのです。
また、既存の生徒が一斉にMacへ切り替えるのではなく、中学校の新入生から学年進行で導入しているのも今回の導入プロセスの特徴です。4月の第1週付近に行われた端末の受け渡し時には、販売事業者によるMacの入門研修を設け、基本操作から学べるようにするなど新しいプラットフォームへの移行を支える体制も用意しました。
なお、端末管理には「Jamf Pro」を利用していますが、これは校内に前任校でJamfを使った経験のある教員がおり、ノウハウを共有しやすかったことが選定理由の1つでした。また、生徒に配布する学校用アカウントは、管理対象Apple Accountを利用しています。
「Google ClassroomやPages、Keynoteなど全員が授業で使う必須アプリはJamfから直接配信し、Xcodeなど任意のアプリはSelf Serviceから生徒自身がインストールできるようにしています。また、定期的に変更される校内のWi-Fiパスワードの配布にも利用しています」
MDMによる機能制限はApple Payなど最低限の縛りを課すくらいで、AirDropなどは自由に使えるなど必要最小限にとどめている点も印象的です。こうした縛りの少なさや自由度の高さからは、プログラミングやデータサイエンス学習などICT教育の充実はもちろん、生徒の自主性を尊重した教育方針がうかがえます。
| 文●小原裕太、編集●栗原亮(Arkhē) |

