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深夜、iPhoneが勝手に電話をするという「ゴーストダイアリング現象」が、2025年ごろから起きている。これに対しApple中国は、iOSのバグによるものであることを認め、iOS 26.3で解決したことを公式に公開した。
ただし、ゴーストダイアリング現象はiOSのバグに起因するものだけではないようだ。意外な原因と、対策を解説しよう。
中国、米国、日本でも。iPhoneが勝手に電話をかける怪奇現象が発生
2025年の後半から、深夜にiPhoneが勝手に電話をかける、という投稿がSNSで目立つようになった。米国のSNSだけでなく、日本のXや中国の小紅書(Rednote)などにも投稿があがっているため、世界的な現象のようだ。
特に中国ではその声が多く、ベビーベッド用のモニタカメラの映像がSNSで拡散されている。ベビーベッドに置きっぱなしにしたiPhoneが突然Face ID認証を始め、認証を通過し、電話をかける様子が写っていたのだ。

この原因について、さまざまな説があがっていた。もっともわかりやすいのがiOSの何らかのバグだが、ハッキング説や超常現象説、幽霊説などさまざまなことが言われ、この現象はGhost Dialing(ゴーストダイアリング)と呼ばれるようになった。
Apple中国が発表した、ゴーストダイアリングの原因と対処
iPhoneが勝手に電話をかける「ゴーストダイアリング」に対して、Apple中国は公式コメントを公開した。このエントリーは、中国のApple公式サイトにのみ存在し、米国や日本の公式サイトには存在しない。この怪奇現象が特に中国で多かったことがうかがわれる。
Appleは、この問題をiOS 26.3のアップデート時にフィックスした。リリースノート「iOS 26.3およびiPadOS 26.3のセキュリティコンテンツについて」に言及がある。
脆弱性ID「CVE-2026-20645」に対する修正だ。「ロックされているデバイスに物理的にアクセスできる攻撃者がユーザの機微情報を見ることができる」という脆弱性に対し、「ステート管理を改善し、ユーザインターフェイス不一致の脆弱性に対処しました」とされている。
これはiOSの状態管理に不備があり、ロックされている状態であってもUIのレイヤーの重なりが乱れ、通知の詳細やバックグラウンドのアプリ画面が見えてしまうというものだった。
「LINE」アプリを例にするとわかりやすい。iPhoneの「設定」アプリで、「LINE」→[プレビューを表示]→[ロックされていないときのみ]としておくと、LINEのメッセージが来た場合も、iPhoneのロック画面では内容が表示されない。しかし、Face IDなどでロックを解除すると、本文の一部が表示される。というのが本来の挙動だが、この脆弱性により、ロック画面で本文の一部が見えてしまうことがあった。さらに、アプリスイッチャでバックグラウンドに回したアプリ画面が、ロック解除しなくても見えてしまうことが起きていたという。
原因はデュアルSIM? 中国本土と香港で通信キャリアが異なるという背景
これは深刻な脆弱性になる可能性があった。なぜなら、第三者がiPhoneのロック画面を盗み見るだけで、メッセージの内容やアプリの通知内容を把握できるからだ。そのメッセージの内容が二要素認証によるセキュリティコードだったり、バックグラウンドに回したアプリが銀行アプリだったりすれば、大きな事故につながる。
もちろん、意図的にこの現象を起こせるわけではないので、過剰な心配は必要ない。しかも、iOS 26.3のアップデートでAppleはこの脆弱性を修正している。
現在では、iPhoneが勝手に電話をかける現象も、この脆弱性が関係していたと考えられている。Appleのリリースによると、eSIM×物理SIMまたはeSIM×eSIMでデュアルSIM運用をしている人に起こる現象だという。
デュアルSIMであれば、仕事用と個人用、あるいは国内用と海外用など2つの電話番号を同時に利用できる。また、国内では通話用とデータ用でデュアルSIM運用をしている人もいる。それぞれ格安の回線を契約することで、総支払額を節約できるからだ。
中国では、本土と香港などで通信キャリアが異なるため、デュアルSIM運用をしている人が多い。そのため、中国でこの現象が起きることが多く、Appleは中国でのみ先ほどのリリースを公開したのだと思われる。
このようなデュアルSIM運用をしている場合、電話をかけるときにどちらのSIMを使うかを選べるようになる。ところがこの回線選択の状態で、何かの都合で「電話」アプリをバックグラウンドに回して放置すると、iPhoneがロックされていても、放置された「電話」アプリがフォアグラウンドに出てきて、勝手に電話をかけてしまうようなのだ。
iPhoneの電話トラブル、その原因と5つの解決策
この「iPhoneが勝手に電話をかける」という問題はかなり前から存在していた。その多くは、設定や使い方の習慣を変えることで解消できる。
誤タップによる操作/iPhoneが勝手に電話をかける原因①
その原因の一つは、意識せずに電話ボタンに触れているケースだ。「連絡先」や「電話」のアプリを使ったあと、カバンやポケットにiPhoneをしまおうとしたとき、指が発信ボタンに触れてしまうことがある。電話だけでなく、カバンの中で動画や音楽が再生されたり、フラッシュライトがついたままになっていた、という経験は多くの人がしているのではないだろうか。
これを防ぐには、カバンやポケットにしまう前に、iPhoneを確実にスリープさせる習慣をつけることだ。ただし、iPhoneのロック画面にフラッシュライトのショートカットを設定している場合、誤操作で点灯してしまう可能性はある。
寝落ちによる誤操作/iPhoneが勝手に電話をかける原因②
もう一つ注意したいのが、寝落ちだ。ベッドでiPhoneを使っていて寝てしまい、顔の前にiPhoneが来る状態になっていると、顔を認識してFace IDが解除されてしまうかもしれない。その際、運悪く指が触れると動作が実行される。しかも、Face IDは赤外線を使っているため、真っ暗な中でも認証が行われる。
寝落ち問題を避けるには、「設定」アプリの[Face IDとパスコード]で、[Face IDを使用するには注視が必要]をオンにしておくことだ。目を開けて顔を向けないとFace IDをパスできないようになる。

ゴーストタッチ/iPhoneが勝手に電話をかける原因③
また、ゴーストタッチによる発信も指摘されている。ゴーストタッチは、指が触れていないのに、iPhoneがタップを誤認識する現象だ。ディスプレイの故障の可能性もあるが、ディスプレイに貼った保護フィルムが劣化し、気泡が入っていると発生しやすくなる。
ショートカットの誤作動/iPhoneが勝手に電話をかける原因④
ショートカットの誤作動による誤発信もあるようだ。たとえば、「最寄り駅に5時以降に到着した」をトリガーにして、家族に「これから帰ります」というiMessageを送り、家族に電話をかけるというショートカットを作り、オートメーション化。トリガーの条件が満たされると、自動的に実行される。
駅から自宅までの道中、家族と電話で話しながら帰れるというわけだ。
非常に便利だが、位置情報のズレなどによって誤作動することも考えられる。それを避けるには、トリガーとなる時間帯の微調整が必要だ。
Siriの誤作動/iPhoneが勝手に電話をかける原因⑤
Siriの誤作動によるものもあるのではないかと指摘されている。iPhoneがロックされていても「Hey Siri!」と声をかければSiriが起動する。そのため、寝言や外部の雑音などで偶然Siriが起動し、電話をかける可能性は否定できない。夢の内容によっては、寝言で「Hey Siri! 警察に電話しろ!」などと言ってしまう可能性もあるだろう。
これを防ぐには、「設定」アプリの[ロック中にSiriを許可]をオフにしておくことだ。こうすると、SiriはiPhoneのロック解除をしないと反応しない。ただし、手が離せないときにSiriを使うことはできなくなる。お湯を注ぎながら「Hey Siri!3分のタイマーをセットして」ができないのは不便、と感じる人もいるだろう。
覚えておきたいのは、ディスプレイを下にしてiPhoneを置くと、「ロック中にSiriを許可」がオンでもSiriは反応しなくなること。Siriを使いたいとき、たとえばデスクで仕事をする際はiPhoneのディスプレイを上に向けて置くと、「Hey Siri!」で呼び出せる。一方、Siriを使う必要がないときは、ディスプレイを下に向けて置けばいい。就寝時などに役立つだろう。

そこでおすすめしたいのが、MagSafe対応の充電器だ。一般的なワイヤレス充電器では、iPhoneのディスプレイを上に向けて充電器の上に置くことになる。つまり、Siriが応答可能な状態で、誤作動につながるかもしれない。一方、MagSafe充電器であればディスプレイを下にしてiPhoneを置いておくことができる。Siriは反応しなくなり、安心して眠りにつけるはずだ。
令和の怪異との向き合い方。お札やお祓いの前に、設定の見直しを
人は、寝ているときに意外と多くの寝言を言っている。iPhone向けのアプリに、寝言やいびきを録音してくれるものもあるため、一度確かめてみるといいかもしれない。まったく意味のわからない寝言を呟いていることが多く、妙な気分になるはずだ。
さて、ゴーストダイアリングという一見奇妙な現象にも必ず原因がある。寝ているあなたのそばに何者かがやってきて、Face IDを突破して電話をかけているわけではない。また、超常的な存在が勝手にiPhoneを操作しているわけでもない。現代の怪異は、システムの脆弱性や設定の不備などで起きている。お札を貼ったり、お祓いをする前に、設定を一度見直してみよう。

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著者プロフィール
牧野武文
フリーライター/ITジャーナリスト。ITビジネスやテクノロジーについて、消費者や生活者の視点からやさしく解説することに定評がある。IT関連書を中心に「玩具」「ゲーム」「文学」など、さまざまなジャンルの書籍を幅広く執筆。








