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“美意識の原点”は日本に? スティーブ・ジョブズが愛した新版画と焼き物。「スティーブ・ジョブズ1.0の真実」出版イベントレポ

著者: 中臺さや香

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“美意識の原点”は日本に? スティーブ・ジョブズが愛した新版画と焼き物。「スティーブ・ジョブズ1.0の真実」出版イベントレポ

なぜ、Appleのプロダクトは美しいのか。なぜ、触れていて心地いいのか。

その答えを「日本の美」に見出したのが、書籍『スティーブ・ジョブズ1.0の真実(作:佐伯健太郎さん)』です。

本書は、スティーブ・ジョブズが愛した新版画や焼き物を起点に、彼の美意識の原点に迫る一冊。

その出版を記念したトークイベントでは、取材の過程で明らかになった、ジョブズの知られざるエピソードが語られました。

著:佐伯健太郎
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ジョブズが惹かれた日本の芸術。新版画とは?

トークイベント冒頭で語られたのは、佐伯さんがこのテーマに取り組むきっかけでした。

佐伯さんが本書の着想を得たのは、1984年に開催された、Macintoshのデビューを飾ったプレゼンテーション。その映像で、数秒だけMacintoshのスクリーンに新版画の絵が映し出されました。そこで興味を持ち、調べていくうちに「スティーブ・ジョブズは新版画を銀座の画廊で買い集めていた」という情報に接したのです。

そこから取材は8年に及びました。画廊で接客した元店員のもとへ通い、ジョブズが画廊で買い集めていた作品を一枚ずつ確認。その中には、関東大震災(1923年)以前に制作された、現在では希少な作品も含まれていました。

新版画は、絵師、彫師、摺師の共同作業で、絵師が作品の意図を彫師と摺師に指示を出して、高い芸術性を目指すもの。佐伯さんは、「ジョブズは、一人の絵師がすべての工程に関わる新版画の自己表現という制作プロセスに深く共感していた」と語っていました。

川瀬巴水展の図録。光や空気の表現がとても美しいです。




ジョブズと新版画の出会い。13歳頃に友人宅で

佐伯さんの取材によると、ジョブズが新版画に出会ったのは13歳頃。親友のビル・フェルナンデスの家のリビングに飾られていた新版画が、その原体験だったということです。

特徴的なのは、その飾り方です。広い壁に新版画が3枚。作品同士の間隔は大きく取られ、壁を埋め尽くさない。日本人にとっては違和感のないこの配置も、欧米人の感覚では「少し寂しい」と映るそうです。

しかも、ビルの家族は作品についての解説をジョブズにほとんどしなかったと言います。ただ壁に掛かっているその絵を、少年時代のジョブズは何度も眺めていたとか。

のちにジョブズは新版画の収集をはじめます。はじめて銀座の画廊に足を運んだときには、名刺を差し出し「これから新版画を集めたいので、いろいろと教えてほしい」と言ったそう。その際「しんはんが」と日本語で口にしていた、というエピソードが印象的でした。

知りたいのは美が生まれる過程。日本の焼き物への関心

ジョブズは新版画だけでなく、日本の焼き物にも強い関心を示していました。越中瀬戸焼の陶芸家・釋永(しゃくなが)由紀夫さんが京都で開いた個展に、ジョブズ夫妻がプライベートで訪れたときのこと。

「この土はどこで採れるのか」
「どうやって、その土を見つけるのか」
と、ジョブズが同業者のような質問をしてきたと言います。

釋永さんが使っていたのは、富山県立山町の里山で自ら掘り出した白い粘土。作品ごとに土を作り分け、薪選びや焼成によって“景色”を生み出していく。その職人技に、ジョブズは強い関心を示したのです。

「ジョブズが見ていたのは、焼き物そのものより、美が生まれる過程だったのではないでしょうか。装飾やブランドではなく、素材の出どころと成り立ちを知ろうとする姿勢が、ジョブズらしいですよね」と佐伯さん。

「スティーブ・ジョブズ1.0の真実」出版トークイベントで展示されていた、釋永由紀夫さんの作品。ジョブズは釋永さんの個展に3日続けて足を運び、初日は開店前から並んでいたそうです。




焼き物とAppleデバイス。共通する曲線美

焼き物の話題で、もう一つ印象的だったのが“丸み”です。ジョブズは東京で個人収集家の家に案内された際、人がうずくまったような信楽焼の「蹲(うずくまる)」を手にとって、曲線を確かめるようにしながら触れていたと言います。

トークイベント会場には、iBookやiMac G3といった、ジョブズがかかわったApple製品が焼き物とともに展示されていました。このエピソードを聞いたあとに目を向けると、その見え方が変わってきます。

Appleデバイスと焼き物に共通する丸みを帯びたデザイン。そこにジョブズの一貫した美意識を感じます。手に取ったとき、ユーザが得る感覚までデザインする、その感覚は工芸品でも、デジタルデバイスでも同じなのでしょう。

ジョブズは日本の焼き物に触れる中で、インスピレーションを得て学び、ディテールにこだわる職人技の重要性を再確認していたのではないでしょうか。

「スティーブ・ジョブズ1.0の真実」出版トークイベントの会場には、多くのAppleファンが集まっていました。「iBookのキャッチコピーはなんでしょう?」という司会者からの問いかけに、会場からは「iMac to go!!」と即返答があるなど、その熱を感じる場面も。
こちらも曲線が美しいiMac G3も展示されていました。

日本の芸術を知ることで、Apple製品の美しさが見えてくる

川瀬巴水の新版画と、それが飾られた壁、その余白。トークイベントで語られたのは、抽象的な美学ではなく、ジョブズが実際に見て、触れてきた具体的な風景でした。

本記事で触れたのはジョブズの美意識のいったんにすぎません。『スティーブ・ジョブズ1.0の真実』では、佐伯さんが熱量をもって取材した一次情報に基づき、ジョブズと日本文化との密接な結び付きを解き明かす数々の資料や証言が掲載されています。気になる方はぜひ、書籍を手にとってみてはいかがでしょうか。

著:佐伯健太郎
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著者プロフィール

中臺さや香

中臺さや香

Mac Fan編集部所属。英日翻訳職を経て、編集部へジョインしました。趣味はピアノを弾くこと、乗馬、最新のガジェットを触ること。家中まるっとスマートホーム化するのが夢です!

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