

毎日使う道具は自分で選ぶ
2027年に創立100周年を迎える新渡戸文化学園は、子ども園から短期大学までの教育機関を運営しています。2020年から小中高で児童生徒1人1台のiPadを整備するなど、探究を重視したICT教育に取り組んでいます。
同学園では学びを支える教員が校務に使う端末を自分で選べる制度を2024年より導入しており、入職時にはWindowsかMacかの希望を聞いています。2026年現在、学園全体の教職員数は約150人で、小中高の教員約60人のうち45人がMacを選択しています。
同学園が以前に教職員に貸与していたのはWindows端末のみでしたが、児童生徒のiPad活用が進むにつれてMacを希望する教員が増え、学園側として校務端末を選択できる環境と制度を整えてきました。同学園の平岩国泰理事長は、その背景を次のように説明します。
「教員は仕事人である前に、一人の人であってほしいと考えています。まずそれぞれの人格や人柄、得意・不得意があって、その人が学園の仕事に取り組む。その人自身のあり方と学園でやりたいことが重なることで、よい仕事ができるのではないかと考えています」
教員は、自分の知識や経験を使って児童生徒と向き合う仕事です。だからこそ、日々の校務で使う道具も本人に合うものを選んでほしいという平岩理事長。校務端末の選択制を導入した背景には、そうした学園としての教育観が反映されています。
「毎日使うパソコンは、とても重要な道具です。WindowsでもMacでも、自分にとってよいものを選んでほしいと思っています」(平岩理事長)
校務Macを本格的に導入するきっかけとなったのは、2020年に始めた児童生徒の1人1台iPadです。児童生徒と同じアプリを使ったり、資料や提出物をやり取りしたりする場面で、教員がMacを使う利点が見えてきました。Macの利用経験がある教員が入職したことも、利用への関心を高めたといいます。
国語科の酒井雄大教諭も、この頃に私物のMacを校務で使い始めた一人です。のちに学校から貸与されたMacBook Airへ移行し、現在は主に連絡の発信や会議資料の作成、教材の準備などに使っています。
選択制の導入にあたっては、2023年度に希望者へのアンケートを行い、2024年に約25台から購入と配備を始めました。調達先には初期設定を依頼し、その後も必要に応じて追加購入や余剰機の再配備なども行っています。
ただし、Macを希望する教員が増えたからといって、すべてをMacへ統一したわけではありません。従来の操作に慣れていたり、授業で利用するアプリの必要性からWindowsを選ぶ教員もいます。学園が整えたのは、あくまでもそれぞれが使う道具を自ら選択できる環境です。

校務端末を選べるようにするには、学校側にも準備が必要でした。導入当初はプリンタへの接続など、Macでの利用環境が十分に整っていない部分がありました。運用視点では、2種類の環境に対応するのであればWindowsに統一したほうがよいという意見も出たといいます。
「互換性などを考えると、Windowsに統一したほうがよいという声もありました。それでも、児童生徒の端末との相性や先生方の使いやすさを考えて、なんとか選択できる方法を探してほしいと担当者にお願いしました」(平岩理事長)
端末の代金や運用管理に伴う費用も判断すべき点でしたが、平岩理事長は選択制に必要な費用として認めたと話します。この場面で優先したのは「教員にとっての使いやすさ」であり、混在による費用や対応の負担を学園が引き受ける判断をしました。
「選択制導入後の細かなトラブルや、コストの問題が完全になくなったわけではありません。それでも、教員の働きやすさとクリエイティビティのためにも維持していきたいと思っています」(平岩理事長)
同学園では時代に応じた新しい教育に挑戦してきましたが、新しいことを始めるのが得意な教員ばかりでは日々の校務は成り立ちません。教育現場では取り組みを定着させる人も含め、異なる得意分野を持つ教職員の多様性が必要といいます。
「挑戦する人ばかりで組織がうまく回るわけではありません。新しいものをつくることが得意な人もいれば、着実に定着させる人も必要です。人材の多様性を重視していますが、利他性は皆に持っていてほしいと思っています」(平岩理事長)

校務端末として「Macを選べる」ことは、教員が自分に合う方法で仕事を進めるための選択肢を増やしただけでなく、教員一人ひとりの個性の違いを認める姿勢が表れています。
「パソコンを選べることと一緒に、私たちがその人を尊重しているという気持ちも伝わってくれるとうれしいです」(平岩理事長)
では、教員が選んだMacは校務の中でどのように使われているのでしょうか。中編では、酒井教諭の実務と、それを支える管理・支援の仕組みを紹介します。
(中編に続く)

