Mac版Officeで今も表示崩れは起きるのか
「MacでOfficeファイルを開くとレイアウトが崩れる」。ビジネスでMacの導入を検討する際、こうした不安を感じる方もいるでしょう。特に、Windows PCを使う社内のメンバーや取引先から受け取った書類を、Macでも同じように表示・印刷できるかどうかは、気になるところです。
そこで今回は、官公庁のWebサイトで公開されているWord、PowerPoint、Excel形式のファイルを、それぞれ10点ずつ選定。各ファイルをWindows版OfficeとMac版Officeのデスクトップアプリで開き、Windows版での表示を基準に、文字の折り返しや図表の配置、印刷時のページ数などにどのような違いが生じるかを比較しました。
その結果、Windows版と比べて折り返しや文字の配置に明確な違いが見られたのはWordとPowerPointで、それぞれ10点中1点という結果に。一方、Excelでは、画面上の文字の収まりに目立った違いが見られたものが2点、印刷時のページの収まり方がWindows版と異なったものが3点ありました。今回確認した範囲では、WordやPowerPointよりも、Excelのほうが画面表示と印刷設定の両面で確認すべき項目が多い結果となりました。
もちろん、各10点という限られた検証だけで、Officeファイル全般の互換性を判断することはできません。また、結果は今回使用したOS、Officeアプリ、フォントおよび印刷環境に基づくもので、異なる環境では結果が変わる可能性があります。本記事では画面表示と印刷時のレイアウトを対象としており、マクロや関数、外部データ接続などの機能互換性は検証していません。それでも、どのような箇所で違いが生じやすいかを知る手掛かりにはなるでしょう。
ここからは、今回確認できた現象をアプリごとに詳しく見ていきます。
Wordは太字の見出しで折り返しに違いが発生
Mac版のWordで確認できた違いは、太字の見出しの折り返しです。今回の文書では、Windows版で1行に収まっていた見出しが、Mac版では2行に折り返されました。今回の環境では、太字指定時に生じる文字幅のわずかな差が、この折り返しの違いにつながったと考えられます。
今回使用したフォントと検証環境では、Wordで太字を指定すると、文字列が占める横幅がわずかに広がりました。また、太字指定後の文字列は、Windows版よりもMac版のほうがわずかに長く表示されました。元の見出しが1行の幅いっぱいに配置されていたため、この差によってMac版では改行が発生したと考えられます。Mac版で太字を解除すると、見出しは1行に収まりました。

【出典】[「ハラスメント対策 就業規則例(千葉労働局版)」(厚生労働省)]
なお、これはMac版とWindows版で文字送りや行送りが大きく異なるという意味ではありません。今回、独自に検証用ファイルを作成し文字送りを比較したところ、通常の文字では行末に収まる文字数に違いはなく、改行位置も一致しました。

フォント以外の表現については、今回調べた文書内で目立った問題は見られませんでした。表組みが使われている文書も複数ありましたが、いずれもWindows版の表示と同じ体裁が再現されました。さらに、写真に加えた効果や、アイコン、図形、グラフの挿入に関しても別途試しましたが、確認した範囲では互換性の問題はありませんでした。
今回確認した10点では、Wordのレイアウトはおおむね維持されていました。一方、太字の見出しなど、文字列を行幅いっぱいに配置した箇所では、Mac版とWindows版の文字幅のわずかな差によって、折り返し位置が変わる場合があることも確認できました。

PowerPointは使用フォントの有無に注意
PowerPointで確認された表示の違いも、フォントに関係するものでした。ただし、Wordの例とは状況が異なります。このファイルで指定されていたフォントが検証用のMacにインストールされていなかったため、別のフォントに置き換えて表示されていました。
ファイルで指定されたフォントが端末にない場合、PowerPointでは利用可能な別のフォントに置き換えて表示されることがあります。代替フォントは元のフォントと文字幅や行の高さが異なるため、改行位置が変わったり、テキストボックス内に文字が収まらなくなったりする場合があるのです。この現象は、Officeアプリに限らず、作成時と閲覧時で利用できるフォントが異なる環境で起こり得ます。

【出典】[「介護予防・日常生活支援総合事業の推進に向けて」(厚生労働省)]
ただし、PowerPointでは、見出しや説明文などがそれぞれ独立したテキストボックスとして配置されていることが多くなります。代替フォントによって文字の収まりが変わっても、その影響は基本的に該当するテキストボックス内にとどまります。そのため、今回のような問題であれば、修正が必要な箇所も特定しやすいでしょう。
また、Wordと同様に、独自に文書を作成し文字送りを比較検証してみましたが、Mac版とWindows版で目立った違いはありませんでした。図形や画像、画面切り替え効果についても別途検証を行いましたが、表示上の問題は確認されませんでした。

Excelは文字の収まりと印刷設定に違いが出る
Excelは、WordやPowerPointとは少し事情が異なりました。今回確認できた表示や印刷の違いを整理すると、主に3つのポイントが浮かび上がります。
1つ目は、セル内の文字幅や折り返し位置の違いです。たとえば、Mac版ではセル内に3行で収まっていた文章が、Windows版では4行に折り返されるケースがありました。
今回確認したファイルと検証環境では、Mac版のほうが文字間が詰まる傾向が見られました。ただし、文字の収まり方は、使用するフォントや文字サイズ、Officeアプリのバージョンなどによっても変わる可能性があります。ファイルを異なる環境でやりとりする場合は、どちらの方向でも、文字切れや折り返し位置を確認するのが安全です。

2つ目は、印刷時に「何ページで収めるか」という設定です。Excelでは、印刷する幅や高さを「ページレイアウト」タブで指定できます。横幅を1ページに収めるよう設定すれば、はみ出さないようにシートが自動的に拡大・縮小されます。
今回、印刷時のページ構成に違いが生じたファイルを調べたところ、Windows版では印刷する幅が「1ページ」に設定されていたのに対し、Mac版で開くと「自動」と表示される例がありました。その結果、表の一部が横方向に分割され、Windows版と同じページ構成では印刷できない状態になっていました。設定の表示が変わった原因については、今回の検証では特定できていません。

【出典】[「測量業者登録申請書」(国土交通省)]
3つ目は、列幅や行の高さを数値で指定した場合の違いです。Mac版Excelで新規作成したファイルの列幅を「4cm」に設定して保存し、そのファイルをWindows版Excelで開いたところ、設定画面には「4.07cm」と表示されました。また、幅を4cmに設定した図形と並べて確認すると、列幅と図形の端の位置にも差が見られました。

このように、Excelでは文字の収まりに加えて、印刷時の拡大・縮小、セルの寸法など複数の要素が影響し合います。そのため、「画面で表が正しく見えること」と「意図したとおりに印刷できること」を分けて確認することが重要です。
自分で書類を作るときはフォントと余裕を意識する
こうした検証結果を踏まえ、書類を作成する側はどのような点に気をつければよいのでしょうか。
1つ目は、Mac版とWindows版の両方で利用できるフォントを選ぶことです。ファイルで指定したフォントが相手の端末にない場合は、別のフォントに置き換えて表示されることがあり、改行位置や文字の収まり方が変化します。Officeアプリの標準テーマに用意されたフォントを使用することは、環境による違いを減らす方法の一つです。ただし、利用できるフォントは、Officeアプリのバージョンや端末のインストール状況によって異なります。ファイルを共有する前に、送信側と受信側の両方で使用できるフォントか確認しましょう。

2つ目は、文字を配置するスペースに余裕を持たせることです。Wordの見出しを行幅いっぱいに配置すると、文字幅にわずかな違いが生じただけでも、別の環境では2行に折り返される可能性があります。見出しの右側に余白を残す、文字数を抑える、テキストボックスを少し広げるなど、折り返し位置が多少変わってもレイアウトが崩れないように設計しましょう。
特にExcelでは、セル内の文字がMac版でぎりぎり収まっていても、Windows版では折り返し位置が変わり、行数が増える場合があります。文章が数文字増えても収まる列幅を確保し、折り返しによって行数が増えても文字が隠れないように行の高さを設定しましょう。
Windowsの書類はMacで印刷前に確認する
受け取った書類をMacで扱う場合は、自身で作成するときとは異なる注意が求められます。社内で長年使われている申請書や官公庁の指定様式など、ユーザが勝手に変更できない文書も多いでしょう。
Excelの書類をMacで開いた場合は、編集や印刷を始める前に、次の点を確認しましょう。
- 1.印刷プレビューで用紙サイズと印刷方向を確認する
- 2.Windows版で想定されたページ数と大きく異なっていないか確認する
- 3.表が途中で横方向や縦方向に分割されていないか確認する
- 4.セル内の文字が欠けたり、隠れたりしていないか確認する
- 5.必要に応じて、印刷する幅が「1ページ」に設定されているか確認する
たとえば、A4用紙の横幅に収める想定の表が横方向に分割されている場合は、印刷する幅の設定が「自動」になっていないかを確認します。
ただし、A4用紙を使用する書類が、必ず縦横とも1ページに収まるとは限りません。元のページ構成が不明な場合は、可能であれば作成者や配布元に確認しましょう。確認が難しい場合は、用紙サイズ、ページ数、改ページ位置、表の見出しなどを手掛かりに、印刷プレビューで不自然な分割がないかを確認します。
印刷設定を確認したら、続いてセル内の文字が欠けたり隠れたりしていないかを確認します。Excelには、文字列が入りきらない状態を警告する機能は備わっていません。トラブルを避けるためには、目視でしっかりと確認する必要があります。
文字が隠れているセルを発見した際、収まらないからといって安易にセル幅を広げると、表全体の横幅や改ページ位置に影響が及んでしまいます。様式の変更が認められる範囲内で、該当する文字のサイズをわずかに小さくするなど、周囲への影響を最小限に抑えられる方法を検討しましょう。
書類の種類と用途に応じた確認を
今回確認した各10点のファイルでは、WordとPowerPointの大きな表示差は限定的でした。一方、Excelでは、セル内の文字の収まり方だけでなく、ページ設定や印刷時のページ構成にも違いが見られました。Macの導入を検討する際は、Officeファイルを一律に評価するのではなく、業務で使用するファイル形式、印刷の有無、使用フォント、指定様式の有無に応じて確認することが重要です。
Officeアプリの表示や印刷時の挙動は、今後のアップデートによって変化する可能性があります。また、同じファイルでも、OSやOfficeアプリのバージョン、使用フォント、印刷環境によって結果が異なる場合があります。
他者が作成したExcelの申請書など、決められた体裁で印刷する必要がある書類では、用紙サイズやページ構成を印刷プレビューで確認することが重要です。元の設定がわからない場合は、可能であれば作成者や配布元に確認しましょう。

