外付けストレージを使うワケは?
現在販売されているMacには、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、フュージョンドライブ(Fusion Drive)のいずれかのストレージが内蔵されています。このうち、もっとも多くの機種に使用されているのがSSDで、iMacとMacミニを除くすべての機種に標準で搭載されています。従来のHDDに比べ、データ転送の高速化、小型軽量化が図れる点がSSDへの移行の理由と考えられます。
ユーザ目線でも、高速化や軽量化はウェルカムです。ただ1点、これまで当たり前に使っていた大容量ストレージに対して、標準で載っているSSDの容量には一抹の不安がよぎります。最近では、ほとんどの機種で最低でも256GBはあるのでそれほど心配はいりませんが、MacBookエアのように128GBからという設定になると少々気になります。
そんな経緯もあり、筆者はSSD搭載以降のノート型Macでは、常時外付けストレージを接続して、音楽や写真、動画データはすべて外付けに逃がすという策をとっています。では内蔵ストレージが大容量なら事足りるかというと、そうもいかないのがバックアップ問題…。ベテランユーザでもストレージの選択には、少々迷ってしまうことがあるのではないでしょうか。そこで、Macで使える主な外付けストレージを用途別に見ていくことにしました。
ストレージの用途を明確にしよう
ストレージを選ぶには、まず使用目的をはっきりさせておくことが必要です。第一に考えられるのは、大切なデータを安全にキープするために欠かせない「バックアップ」でしょう。外付けストレージが必要になるもっとも身近なケースです。この用途には、大容量かつ低コストの外付けHDDが定番となります。
一方、ストレージを起動ディスクや頻繁なデータのやり取りに使う場合は、コストパフォーマンスよりスピード重視の外付けSSDも候補に入れたいところです。最近では1TB、2TBといった大容量のSSDも出回り始めたので、価格面で納得できれば容量不足はないといえます。なお、外付けSSDでスピードを最大限に発揮させたいなら、インターフェイスも忘れずにチェックしましょう。
次に、会社のマシンから自宅マシンへ、スマートフォンからパソコンへ、ちょっとしたデータの移動に便利なストレージといえば、USBメモリやSDカードです。32GBから128GB辺りまでの容量が主流となっており、手軽に使えるストレージとして広く利用されています。持ち歩き用に最適な小型ストレージですが、紛失しやすい点には注意が必要です。
最後に紹介するのは、NAS(Network Attached Storage)。ネットワークに接続して運用するストレージで、家庭内LANやSOHOなど複数のマシン間でファイルや周辺機器を共有できます。以上のように、それぞれのストレージには適材適所があります。それらを考慮して最適な1台を選びましょう。
容量やインターフェイス、そして使用している記憶装置の違いなど、外付けストレージにはさまざまな種類があります。特徴をきちんと把握して選びましょう。右の写真は容量が4TBのNAS、バッファロー製の「LS510DN0401B」です。
これだけは知っておきたいコトバ
[ストレージ]
「保管/収納スペース」を意味するstorageに由来し、コンピュータ用語では、データを保存する装置、記憶装置の意味で用いられます。
[HDD(ハード・ディスク・ドライブ)]
回転する円盤と磁気ヘッドを使ってデータを読み書きする装置。頭文字をとってHDDと略します。一般的な外付けHDDには、3.5インチの据置型と2.5インチのポータブル型があります。
[SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)]
フラッシュメモリを用いた記憶装置で、現行Macの内蔵ストレージとして使用されています。従来のHDDに比べて、処理速度が高く、静音、軽量な点などがメリットとされています。
[USB(ユニバーサル・シリアル・バス)]
コンピュータと周辺機器とを接続するためのバス規格の1つで、現在もっとも普及しているパソコンインターフェイスの規格といえます。2.0、3.0、3.1といったバージョンがあり、それぞれ転送速度などが異なります。
【基本1】インターフェイスにはどんなものがあるの?
インターフェイスと転送速度
ストレージとMacをつなぐ橋渡しとなるのがインターフェイスです。USBやサンダーボルト(Thunderbolt)が、その代表格となります。では、それぞれのインターフェイスの違いはどこにあるのでしょうか?
プラグやポートの形状も相違点の1つですが、もっとも大きな違いはデータの転送速度です。転送速度は「bps(bit per second)」で表され、数値が大きいほど高速になります。では、高速なインターフェイスのストレージを選べばいいのかというと、そうではありません。外付けストレージがUSB│C(USB 3.1)に対応していたとしても、Mac側にCタイプのポートがなければ、たとえアダプタを介して接続したとしてもUSB3.0として認識されます。つまり、ストレージとMacが同じインターフェイスに対応していることが、スピードを最大限に発揮する条件になります。
ここでは、ストレージ選びの参考として、主なインターフェイスの特徴と現行Macの対応状況を解説します。
USB
現在流通しているパソコンやストレージなどで、もっとも普及しているインターフェイス。一般的に「USB」と呼ばれている規格には2.0と3.0とがあり、プラグやポートの形状は同じですが、転送速度が異なります。
最大転送速度
USB 2.0:480Mbps
USB 3.0:5.12Gbps
USB Type-C
上下の区別なくどちらでも挿せるリバーシブルなコネクタの規格。主にUSB 3.1に対応していますが、Type-C自体はあくまでもコネクタの規格なので、転送速度は対応するUSBのバージョンに依存することになります。
最大転送速度
USB 3.1:10Gbps
Thunderbolt 3
高速データ転送を実現するインターフェイスで、コネクタにUSB Type-Cを採用。Thunderbolt 3対応の周辺機器はそれほど多くないものの、USB 3.1 Gen2対応の製品にも対応しているため、Thunderbolt 2に比べて選択肢は広くなったといえます。
最大転送速度
Thunderbolt 3:40Gbps
USB 3.1:10Gbps
Thunderbolt 2
Thunderbolt 2は、主にApple製品で使用されているインターフェイス。現在ではThunderbolt 3が主流となっていますが、Mac ProやMacBook AirなどThunderbolt 2の専用ポートを備えた機種も存在します。
最大転送速度
Thunderbolt 2:20Gbps
有線LAN(Ethernet)
世界中で普及しているコンピュータネットワークの規格。Mac ProやiMac、Mac miniなど、主にデスクトップ型のMacにポートがあります。ネットワークストレージの利用にもイーサネットが用いられます。
最大転送速度
ギガビット・イーサネット:1Gbps
【基本2】外付けストレージの種類を把握しておこう
特徴と違いを把握し最適なストレージを選択
一口に外付けストレージといっても、HDDやSSDにUSBメモリ、さらには各種SDメモリカードなど、たくさんの種類があります。ここでは、それぞれの特徴を確認し、どんな用途にマッチするのかを解説していきましょう。
まずは、バックアップや書類置き場として常時接続したいストレージといえば、その代表格はHDDです。HDDには3.5インチドライブを内蔵した据え置き型と2.5インチドライブのポータブル型があります。据え置き型のほうが転送速度や容量、さらにはコストパフォーマンスに優れているので、大容量のデータを保存しておくといった用途に向いています。種類も非常に豊富に用意されています。
一方ポータブル型にも大きなメリットがあります。それは、サイズがコンパクトでバスパワー駆動(パソコンからの電力供給で動作すること)ができる点です。外出や出張時などに手軽に持ち運べるわけですね。MacBookを携えて動き回るモバイルユーザなら、必然的にポータブルタイプが選択肢となるでしょう。
一方SSDは、2.5インチのHDDと同等あるいはそれ以下のポータブルサイズながら、処理速度はHDDを大きく上回ります。またフラッシュメモリを採用しているため、動作が比較的静かな点もメリットとして挙げられます。さらには単なるデータ置き場ではなく、OSをインストールして起動ディスクとして利用するといった使い方も可能。データの読み書きが高速なSSDならではの活用方法ですね。
ただしSSDは、現状では最大でも2TB程度と容量が少ないことと、以前に比べれば大分こなれてきたとはいえ、まだまだ高価であるというデメリットがあります。処理能力か価格か悩ましいところですが、どちらを選ぶかは、使用の目的を明確にすることで自ずと決まってくるでしょう。
外付けHDD(ポータブル型)
アイ・オー・データ機器「HDPX-UTS1S」
ポータブル型のHDDは、転送速度は据え置き型に劣るものの、ノートパソコンと一緒に持ち歩けるのが利点。コストパフォーマンスとモバイル性を重視する向きには最適な選択肢といえます。スタイリッシュなデザインのものが多く、カラーバリエーションが用意されていることもあります。
外付けHDD(据え置き型)
バッファローHD-GD6.0U3D
なんといっても大容量で低コストなのが魅力の据え置き型。最近では6TB、8TBクラスの大容量HDDが、3~4万円台といった価格で販売されています。インターフェイスはUSB3.0が主流。キャッシュを使って書き込みを高速化するといった機能を備えた製品もあります。
外付けSSD
バッファローSSD-PL960U3-BK
軽量コンパクトで処理速度も高速。惜しむらくは容量が少なく、HDDに比べて値段が高めなこと。ただし、今後さらに普及することで改善する可能性はありそうです。容量はそれほど大きくなくとも、サクサク動くストレージを探している人には有望な選択肢といえます。
HDDとSSDのスペック比較
3種類のストレージの基本スペックを比較した表。価格はHDDのほうが圧倒的に低いものの、読み書き速度はSSDのほうが3倍程度高速となっています。なお数字はメーカー公称値を基にしたもので、参考値となります。
ネットワーク上にストレージを設置
ストレージの中には、ネットワークに対応している製品もあります。たとえば家庭のネットワーク上に設置すれば、家族全員がそれぞれのパソコンやスマートフォンからアクセスしてファイルや周辺機器を共有できるようになります。このようにネットワークへの接続が可能なストレージのことを「NAS(Network Attached Storage)」と呼びます。
家庭やSOHOでNASを使用する場合、主な用途として考えられるのは、共有したいファイルを格納するファイルサーバです。増え続ける写真や音楽データを1箇所にまとめておけば、スマートフォンなどから必要なときにNASにアクセスして見たり聴いたりできるようになるため、端末側のストレージ容量の節約にもなるでしょう。
NAS(ネットワークストレージ)
アイ・オー・データHDL-AA6
アイ・オー・データHDL4-X8/TM3
NASには、一般的な据え置き型HDDと同じ感覚で使える1または2ドライブのタイプ(右)と、HDDを自分で追加するNASキット(下)があります。複数のHDDを組み合わせるのは容量の確保のほかに、RAIDによりデータを安全に保管するなどの目的があります。
一時的な保存に便利な小型ストレージ
デバイスに直接挿す、そのコンパクトさに見合わない容量が大きなストレージとして人気のUSBメモリ。パソコンユーザなら1つや2つは持っているのではないでしょうか。用途としては、デバイス間のデータの移行や、ソフトウェアのインストーラなどが挙げられます。気をつけたいのは、USBメモリに限らずフラッシュメモリは、その構造により書き込み回数が限られている点です。そのため、常時接続して定期的に情報を書き込むバックアップや、ストレージ内のファイルを直接編集するような使い方には向かないと考えたほうがいいでしょう。
また、デジカメやスマートフォンのストレージとして広く利用される各種SDメモリカードも同様に、データの移行や一時保管場所として利用できます。
SDメモリーカード
東芝SD-L032G4
デジカメやスマートフォンでおなじみのSDメモリーカード。このカードもストレージとして使用することができます。カードリーダを使って利用するほか、一部のMacでは本体にSDカードスロットが搭載されているので、直接データの出し入れが可能です。
USBメモリ
エレコムMF-PKU3128GBK
USBメモリは、USBポートに直接挿して使用します。コンパクトながら容量は意外と大きく、中にはテラバイトクラスの製品もあります。またUSBメモリはmacOSのインストーラディスクとして使用することも可能です。
Lightning対応USBメモリ
バッファローRUF3-AL064G-SV
Lightning対応プラグを持つUSBメモリは、専用アプリを使ってiOSデバイスのデータをバックアップする際などに利用できます。吸い上げたデータは、Macや外付けストレージなどに移行して保管しておきましょう。慢性的にiPhoneの容量不足に悩んでいる人におすすめです。
【BTO】
SSD搭載のMacでは、容量を増やしてオーダーすることも可能です。また、iMacなどの内蔵HDDをSSDに変更することもできます。こうしたオーダーをBTOといい、Apple公式サイトなどで利用できます。
【ギガビット】
データ伝送速度の単位。「1Gbps(1 giga bit per second)」は、データを1秒間に1ギガビット(=1000メガビット)伝送できることを表します。なお、1ギガバイト/秒は、8ギガビット/秒に相当します。
【耐用期間】
ハードディスクもフラッシュメモリも、永久にデータを保管できるものではありません。フラッシュメモリは、読み書きの回数に上限があるとされています。使用頻度や環境にもよりますが、いずれも数年を目処に運用するのが現実的でしょう。
【RAID】
複数のHDDを組み合わせ、1つの仮想ディスクとして運用する技術で、データを複数のHDDに分散して書き込むことにより、安全性や処理スピードの向上が期待できます。