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実は7代目のAppleロゴ。世界中で知られるブランドは、なぜその“看板”を変更してきたのか。そして、次のリニューアルはいつ?

著者: 牧野武文

実は7代目のAppleロゴ。世界中で知られるブランドは、なぜその“看板”を変更してきたのか。そして、次のリニューアルはいつ?

※この記事は『Mac Fan 2018年8月号』に掲載されたものです。

Appleのロゴといえば、かじり跡のあるリンゴマークでおなじみだ。しかし、実は創業以来、6回ものデザイン変更が行われてきた。つまり、全部で7種類のロゴが存在していることになる。

なぜAppleは、これほど頻繁にロゴを変更するのだろうか。これが今回の疑問だ。

Appleのロゴには、社名が入っていない

Appleのロゴの珍しい特徴は、社名を表すテキストがどこにも入っていないことだ。いろいろな企業のロゴを見てもらえればわかるが、その多くがシンボルマークと社名テキストの組み合わせとなっている。

たとえば自動車メーカーの場合、車体に付けるエンブレムはマーク単体であることが多いものの、公式ロゴとして使われるのはマークと社名の組み合わせである場合がほとんど。かじり跡があるとはいえ、Appleのように単純なマークのみで世界中の人が社名を認識できるというのは、とてもすごいことなのだ。

だが、実はAppleは現在のロゴになるまでに、6回ものデザイン変更を行ってきている。なぜそれほど頻繁にロゴをアップデートするのか。その背景には、Appleが展開する製品との深い関連性がある

かじり跡のあるリンゴマークをデザインしたロブ・ジャノフのWebページには、Appleのロゴの簡単な歴史が載っている。

革新性を強調した6色のレインボーロゴ

1976年、Appleはスティーブ・ウォズニアックが設計したワンボードマイコンApple Iを発売した。このとき、Appleの最初のロゴが制作されている。現在のデザインとはまったく異なり、「ニュートンのリンゴ」をモチーフにした古めかしいもので、「APPLE COMPUTER CO.」という社名が描かれていた。しかし、このロゴは約1年という短期間で変更されることになる。

1976年に登場したAppleの初代ロゴ。お馴染みのリンゴマークとはまったく異なり、「ニュートンのリンゴ」をモチーフにした複雑なデザインだ。

1977年、Appleはいよいよ本格的なパーソナルコンピュータ・Apple Ⅱを発売する。このときにデザイナーのロブ・ジャノフが提案したのが、かじり跡のある6色のリンゴマークだ。これは当時、かなり掟破りのデザインだった。

まず、6色も使うのが当時ではあり得ないことだ。広告、パッケージのみならず、社用の封筒、便箋、あらゆるものがカラー印刷となり、コストがいちいち高くついてしまう。また、色が隣り合っているのも印刷職人泣かせだ。色の位置がほんの少しずれただけでもみっともないことになるため、色ずれが起こらないよう注意を払わなければならない。

では、なぜこのロゴは6色になったのか。それは、Apple Ⅱの最大のセールスポイントが「6色のカラー表示ができる」点だったからだ。Apple Ⅱの競合製品は、ほぼ同時期に発売されたタンディ社のTRS80とコモドール社のPET 2001で、いずれもモノクロ表示しかできなかった。6色表示というとあまりに低スペックに聞こえるかもしれないが、当時としては非常に革新的だったのだ。

虹のようにカラフルな2代目のロゴは、ヒット商品・Apple Ⅱの6色カラー表示をアピールするものだった。

このカラー表示によって、Apple Ⅱは当初ゲーム機としてよく売れ、やがてビジネスツールとしても広く使われるようになる。Appleにとって6色のロゴは、自社製品を世に強くアピールするものであり、当時から「最先端テクノロジー」を売りにしていたといえるのである。

レインボーロゴ時代はなんと約21年! 初代iMacの登場が転換期となる

6色のレインボーロゴは、その後約21年間に渡り継続して使用された。そして1998年、ついに刷新された新しいロゴは、透明感のある青色が特徴のデザインだった。1998年といえば、Appleに復帰したスティーブ・ジョブズが、半透明デザインの初代iMacを発表して話題になった年である。

この初代iMac、中身はそれまでのMacとさほど変わっていない。しかし、外観デザインが劇的に鮮やかになり、さらに当時はまだ広く使われていたフロッピーディスクドライブを廃止するなど、未来を感じさせるものだった。口の悪い人はそれを「キャンディの包み紙を変えただけ」とよく言ったものだ。

その批判はともかく、初代iMacのアピールポイントがその半透明の外観デザインにあったことは間違いない。そこで、ロゴもそのデザインに合わせたものに変更されたのだ。

ところが、このロゴはすぐに廃止され、黒1色のモノクローム版に変更される。当初、iMacはボンダイブルー色のみが発売されていたが、すぐに「キャンディカラー」と呼ばれる多色展開が行われた。そのため、ロゴがボンダイブルー色というのは体裁が悪いという判断があったのではないだろうか。鮮やかなキャンディカラーの中にロゴを置くのであれば、黒1色のシンプルなデザインが好ましい。そういう考えだったのではと思う。

青色が特徴的な3代目のロゴは、初代iMacのデザインイメージを表している。その後、iMacが多色展開するにあたり、ロゴは黒1色のモノクロ調に変更された。

Mac OS Xのビジュアルテーマ、そしてMacBookの登場に合わせて、ロゴの変更は続く

2001年、AppleはMac OS Xを発表する。Mac OS Xは、それまでとは一線を画す「AQUA」と呼ばれるビジュアルテーマが使用されていた。ウインドウは金属フレームのようで、またボタンなどのパーツは透明感があり、カーソル選択すると水が満たされたかのように青くなる。「水滴」をイメージしたビジュアルだ。このアクアデザインに合わせて、4度目のロゴ変更が行われた。

2001年に発表されたMac OS Xは、水滴をイメージしたビジュアルだった。これに合わせて登場したのが、透明感のある5代目のロゴだ。

そして2008年、再びロゴが変更され、今度はシルバーのメタリック調のものになった。この年に発表されたのは新型のMacBookだ。初期のMacBookは白いポリカーボネートボディだったが、この年からアルミニウムユニボディに一新された。これもまた、当時としては驚くべき技術であり、アルミを削り出すというのは高級腕時計の製造ぐらいにしか使われないものだと大きな話題となった。

2008年に初登場したアルミニウムユニボディのMacBook。これを模したシルバーのメタリック調のロゴは記憶に新しい。

iOS 7のフラットデザインを機に登場した、現在のグレー単色ロゴ

現在のグレー単色ロゴになったのは2013年。この年、Appleはフラットデザインを採用したiOS 7を発表している。これも、Appleにとって重大な転換であった。

それまでボタンは立体的で、押せば反応するということが直感的に理解できるものだったが、フラットデザインではボタンも平面的に一新された。押したくなるような工夫が必要になるため、UI/UXを再定義しなくてはならなくなる。Appleはこの統一感のあるフラットデザイン導入を機に、iOSとmacOSの連係をさらに推し進め、それは現在も進行中だ。

2013年発表のiOS 7で初採用されたフラットデザイン。ロゴもシンプルな単色のものになり、現在まで継続して使われている。

Appleは、製品コンセプトに大きな変革をするときにロゴを変えることで、そのことを広く知らしめてきた。現在のロゴは、もう長く続けて使われている。Appleは創業からの42年間で7つのロゴを使ってきているので、計算すると1つ平均6年間。もしかすると、再びロゴを変更するタイミングは近いのかもしれない。

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著者プロフィール

牧野武文

牧野武文

フリーライター/ITジャーナリスト。ITビジネスやテクノロジーについて、消費者や生活者の視点からやさしく解説することに定評がある。IT関連書を中心に「玩具」「ゲーム」「文学」など、さまざまなジャンルの書籍を幅広く執筆。

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