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M5 Pro/M5 Maxのシリコン設計から見えてきたM5 Ultra登場の可能性と、世界的なAI需要がもたらす暗雲

著者: 今井隆

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M5 Pro/M5 Maxのシリコン設計から見えてきたM5 Ultra登場の可能性と、世界的なAI需要がもたらす暗雲

画像⚫︎Apple

Appleシリコンは今、大きな転換点を迎えようとしている。これまで半導体の進化を牽引してきた「微細化」の失速と半導体製造コストの上昇を踏まえ、Appleが選択したのが先進的なパッケージング技術の導入だ。

マルチダイ採用で変わる、Appleシリコンのアーキティクチャ

2026年3月に発表されたMacBook Proシリーズが搭載する「M5 Pro/M5 Max」では、従来のモノリシックダイ設計を覆すマルチダイ技術「WMCM(Wafer-Level Multi-Chip Module)」が採用された。

さらに、WMCMで課題となるダイ分割点もその詳細が見えてきた。UMA(ユニファイドメモリ アーキティクチャ)を最大の特徴とするAppleシリコンでは、中核となるメモリシステムを分割した2つのダイのどちらに置くか、が極めて重要だ。ダイを分割すれば、メモリシステムを持たない側のダイからのアクセスには多かれ少なかれ影響が出るからだ。

M5 Pro/M5 Maxでは、メモリコントローラがGPUダイ側に搭載されていることがわかった。そしてCPUやNeural Engine、さまざまなインターフェイスはもう片方のダイに集約されていた。処理並列度の高いGPUは、CPUなどのほかのコアに比べてメモリ帯域への依存度が極めて高く、これを離すことは大幅な性能低下を導くからだ。一方で処理並列性が比較的低く、メモリレイテンシを直下に置いたキャッシュメモリでカバーしやすいCPUは、メモリアクセスレイテンシ(遅延)に対する耐性が高い。

M5 Pro(左)およびM5 Max(右)のダイデザイン予想。M5 ProとM5 MaxのCPUダイは共通で、M5 ProのGPUはM5 Maxの下半分を切り落としたような構造になっている。これはM1 MaxやM2 Maxと共通する特徴だ。

そして何よりこの分割点の最大のメリットは、CPUダイをM5 ProとM5 Maxで共用できることだ。一方でGPUダイはM5 Proのダイをミラー反転して一体化することで、GPUコアとメモリコントローラを2倍備えたM5 Maxが作られた。

M3 Pro/M3 MaxとM4 Pro/M4 Maxは、これとはまったく異なるアプローチで作られていた。これらはProとMaxがまったく異なるダイ設計となっていたのに対して、M5 Pro/M5 MaxはWMCMの採用によって従来(M1/M2世代)の設計思想に回帰したことになる。そこから言えるのは、M5 ProとM5 Maxでは(無効化コアを除くと)CPUコア数が変わらない、ということだ。つまりCPU中心の処理がメインの人にとって、M5 ProとM5 Maxのどちらを選んでもほとんど性能差がない。一方でGPUコア数は(無効化コアを除くと)M5 ProとM5 Maxでは2倍の差があり、メモリ帯域も倍増している。GGPUを酷使する用途、たとえば3Dゲーム、イメージ処理や動画処理、ローカルAI処理などの用途では、M5 ProとM5 Maxの性能差は大きい。つまり用途次第でM5 Proで充分なケース(M5 Maxを選んでもあまりメリットがない)がある、という点に注意が必要だ。

M1シリーズからM5シリーズまでのCPUコア/GPUコアを比較した。(ただし無効化コアは除く)。M5シリーズはM1シリーズやM2シリーズ同様、ProとMaxのCPUコア数が変わらず、GPUコア数のみスケールする。M3シリーズとM4シリーズはダイがProとMaxで別設計なので、CPUコア数が異なる。ちなみに「新しい高性能コア」の性能は、従来の「高効率コア」の約2倍、「高性能コア(スーパーコア)」の約半分ということもあり、M5 Pro/Maxではスーパーコアの数が減っている。
M1シリーズの4種類のシリコンデザインを見ると、興味深いことがわかる。M1 Proのシリコンを180度回転させると、M1 Maxの下部約60%と合致する。つまりM1 ProはM1 MaxからGPUとメモリコントローラの半分を切り落とした構造だった。ちなみにM1 UltraはM1 Maxを2つ結合したものである。 画像⚫︎Apple
しかしM3シリーズで様相が一変する。M3 ProとM3 Maxではシリコンの設計そのものが異なり、M3、M3 Pro、M3 Maxはすべて独自設計のシリコンとなった。ちなみにM4シリーズも同様だ。これはProとMaxの設計戦略が従来とは変更されたことを意味していた。 画像⚫︎Apple

M5 Pro/M5 Maxのダイデザインから見えてきた、M5 Ultra誕生の可能性

M5 ProのGPUダイの一面には、CPUダイと結合するためのFusionインターコネクトが備わっている。だとすれば、ProのGPUダイを上下反転して2倍としたM5 MaxのGPUダイは、上下に2つのFusionインターコネクトを持つ可能性が高い。

このことは、M5 MaxのGPUダイを2つ接続するためのFusionインターコネクトを「生まれながらにして備えている」ことを意味している。つまりM5 MaxのGPUダイには、M5 Ultraを作る上で欠かせないFusionインターコネクトが最初から用意されているわけだ。

M5 ProやM5 Maxで採用されたWMCM技術「Fusionアーキティクチャ」は、次世代のMac用Appleシリコンに採用されるTSMCの2nmプロセス「N2」の導入に先駆けて採用された。N2では次世代のトランジスタ構造「GAA-FET」や、EUV(極端紫外線)露光技術の多用やダブルパターニングといった新しい設計と製造プロセスが複数導入される。これらはシリコンの製造コストの大幅な上昇要因となるため、歩留まりの向上のためにはWMCMの導入は欠かせない状況だった。そこで新技術のリスク分散のために、3nmプロセス(N3P)のM5 ProとM5 MaxにWMCMを先行して導入した可能性がある。

M5 MaxはM5 ProのGPUダイを上下反転して2個結合した構造になっている。したがって上下両方にFusionインターコネクトを備えている可能性が高い。だとすれば2個のM5 Max同士をFusionインターコネクトで結合すれば、M5 Ultraを創ることができるはずだ。

Appleシリコンの未来に影を落とす、世界的なAI需要の急拡大と半導体価格の高騰

しかしそんなAppleシリコンの将来に、世界的な「AIブーム」に伴う先端半導体の争奪戦という壁が立ちはだかった。Appleが次世代シリコンに採用しようとしているTSMCの先端半導体は、NVIDIAなどのデータセンター用AI GPUと共通の半導体製造施設で量産されている。AIブームまっただ中の今、メモリ(DRAM)やストレージ(NAND)だけでなく、Macの心臓部であるAppleシリコンにも製造コストの大幅上昇や製造キャパの不足といった強い逆風が押し寄せてきている。

M5は2025年10月、M5 ProとM5 Maxは2026年3月にリリースされたが、これらを採用した製品はiPad Pro、MacBook Air、MacBook Proなどのモバイルモデルのみで、iMacやMac mini、Mac Studioなどのデスクトップモデルは未だにM4世代に据え置かれている。これはAI需要によるさまざまな電子部品の流通逼迫と、決して無関係ではないだろう。この異常ともいえる状況の中で、それでもAppleがどんな夢をユーザに見せ続けてくれるのか、その手腕に期待したいところだ。

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