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相次ぐ新型バッテリのリリース。さまざまな高性能充電池とその特性から、最適な用途を探る

著者: 今井隆

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相次ぐ新型バッテリのリリース。さまざまな高性能充電池とその特性から、最適な用途を探る

現在市場にあふれるモバイルデバイスやポータブルデバイスは、そのエネルギー源として充電による再利用が可能な二次電池(充電池)を採用しているものが多い。そしてそのほとんどに採用されているのが、高いエネルギー密度を持つ高性能バッテリ「リチウムイオン電池」である。

しかし近年は、このリチウムイオン電池をベースとした、あるいはそれとは異なる素材を用いた新しいタイプの高性能充電池が相次いで登場している。そこで今回は、この数年に登場したさまざまな高性能充電池とその特徴、そしてその使いどころを紹介したい。

多様化する高性能充電池。主要4種の特徴

リチウムイオン電池

リチウムイオン(Li-ion)電池は1990年代に登場した高性能充電池だ。それまでの代表的な充電池であるニッケル水素(NiMH)電池に代わる内蔵バッテリとして、MacやiPhoneなどのApple製品全般に採用されている。

さらにラミネートパッケージ型(外装にラミネートフィルムを用いて電解液をゲル状にしたもの)の「リチウムイオンポリマー電池」は、さまざまなモバイルデバイスに採用されている。従来の乾電池型のリチウムイオン電池に比べて形状の自由度が高く軽量で、薄型化や小型化に適しているのが特徴だ。

リチウムイオン電池の最大の特徴は、そのエネルギー密度の高さにある。軽量化と長時間駆動の両立が求められる現代のモバイルデバイスには欠かせない存在だ。一方で、高いエネルギー密度、有機触媒の可燃性、セパレータ損傷にともなう熱暴走といった安全性を脅かすリスクがあり、扱い方次第では破裂や発火の危険性がある。

近年ニュースなどでも、電池の発火や発煙事故の報告があとを絶たないのはご存じのとおりだ。またリチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)といった主原料の多くが重要鉱物であり、安全保障上の地政学的なリスク要因にもなっている。

リン酸鉄リチウムイオン電池

リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)電池はリチウムイオン電池の一種で、2010年代に開発が進み2020年代に入ってEVの車載バッテリとして急速に普及が進んだ。

最大の特徴は従来の三元系リチウムイオン電池(正極にニッケル、マンガン、コバルトの3種類の金属元素を組み合わせた材料を使用するタイプのリチウムイオン電池のこと)に比べて安全性と充放電サイクル寿命に優れている点。この特性がEVやポータブル電源、家庭用蓄電池などに適している。

さらに原料にコバルトやニッケル、マンガンなどが必須ではないため、重要鉱物への依存度がリチウムイオン電池よりも低い点が評価されている。また今後は普及にともなう量産効果によって、さらなる低コスト化が期待されている。

一方、エネルギー密度ではリチウムイオン電池より低く、同じ容量を実現するには大きく重くなるという点がデメリットだ。このためスマートフォンやパソコンなどへの採用はほとんど進んでいない。しかし、リチウムイオン電池に耐環境性と安全性で勝ることから、ポータブル電源や家庭用蓄電池などで普及が進みつつある。

ナトリウムイオン電池

ナトリウムイオン(Na-ion)電池は電解液にナトリウムを採用した充電池で、2020年以降急速に注目を浴びている。主原料であるナトリウムは自然界に豊富に存在するため、重要鉱物であるリチウムに依存しないことが最大の特徴だ。

使用できる温度範囲がリチウムイオン電池に比べて広いことや、熱安定性が高い(高温下で熱暴走しにくい)ことから安全性が高い。また、充電サイクル寿命もリチウムイオン電池より優れているとされており、新しい技術であることからまだまだ伸びしろが残されている。

ナトリウムイオン電池も、エネルギー密度ではリチウムイオン電池には及ばない。だが、すでにモバイルバッテリやポータブル電源などで製品化が始まっており、今後の進化が期待されている。

半固体電池

半固体(Semi Solid-State)電池は、この2〜3年で急に脚光を浴びた充電池だ。ここまで紹介してきた電池は主に原料の違いによるものだったのに対し、半固体電池は原料ではなく構造の違いによって分類される。

従来のイオン系電池はいずれもエネルギーを蓄積する電解質に液体(Liquid)を用いている。一方、半固体電池の電解質は液体と固体のハイブリッド(Hybrid Solid-Liquid)だ。

半固体電池は液体比率を抑えたゲル状の電解質を用いるものが多いが、具体的に「液体比率を何%以下に抑えたものを半固体電池と呼ぶか」は明確な定義や基準がない。そのため現状ではマーケティング用語としての意味合いが強い(ただし液体比率を明記した製品も存在する)。

現在流通しているモバイルバッテリタイプの半固体電池は、いずれもリチウムイオン電池をベースに半固体化したものだ。

電解質を半固体化することで、液体電解質を用いる従来の電池に比べて反応が抑制され、発熱や発火のリスクを抑える、ガスが出にくい(膨張しにくい)といった「安全性の高さ」を特徴とする。その代償として、エネルギー密度は液体電解質を採用する従来のリチウムイオン電池には一歩及ばない。

マクセルブランドの半固体電池採用モバイル充電バッテリ「MPC-CSSB10000PDBK」の販売ページでは、「従来のリチウムイオン電池と比較して電解液量を約50%削減」としている。また「半固体電池の採用により同社の従来のリチウムイオン電池搭載製品より長寿命」、「複数の保護機能を搭載し、安全性を向上」といった点も特徴だ。
画像:Amazon




充電池の性能比較

これらの高性能充電池はそれぞれ異なった特性を持つ。ここでは従来の充電池であるニッケル水素電池を含め、さまざまな高性能充電池の需要スペックとその特徴を一覧表にしてみた。

優れた(秀でた)特性を青とし、緑、黄、橙と性能低下やリスクの増大を示した。エネルギー密度(体積比および重量比)では現在普及しているリチウムイオン電池が優秀な一方で、それ以外の高性能充電池は異なるスペックで優位性を示す。

各高性能充電池はその性能や特性の違いから、それぞれ異なる用途への適性を持つ。次のページでは、それぞれの充電池を活かした用途と、同一用途製品における各特性の違いを詳しく見てみよう。

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