

教員自身も学び方を変えていく
現在、Macを校務に使い、iPadを授業や部活動で活用する酒井雄大教諭も、最初からApple製品に詳しかったわけではありません。2020年に児童生徒1人1台のiPadが導入されたことをきっかけに、Macを使う理由を自分の言葉で説明できるようになりたいと考えたといいます。
その後、AppleからADE(Apple Distinguished Educator)に認定。現在は、Apple製品を活用した授業実践に加え、その経験を同僚や校外の教育関係者へ伝えています。現在、新渡戸文化中学校・高等学校には酒井教諭を含めて4名のADEが在籍していますが、平岩国泰理事長は、初めて会った頃の酒井教諭はMacのことをほとんど知らなかったと振り返ります。
「いろいろな刺激を受け、とても勉強された先生です。以前からMacを使っていたのではないのですが、新渡戸にいる間に学ばれたことにも意味があると思っています」(平岩理事長)
酒井教諭は今、Apple製品の使い方や教育への応用を同僚に伝える立場にもなりました。ただ、平岩理事長の考えと同様に、全員に同じ道具を勧めたいとは考えていないといいます。
「私自身は全員がMacでなくてもよいと思っています。使いたい、興味があるという人がいたら、私に伝えられることを伝えます。自分が知らないことをしている先生がいたら、私も聞きに行きます」(酒井教諭)

新渡戸文化中学校・高等学校は、2025年にADS(Apple Distinguished School)に認定されました。酒井教諭は、学校の外に学び合う相手を持つことを大切にしており、Appleの教育者コミュニティもそのひとつに位置付けています。
公開授業などを通じて外部の教育関係者を受け入れることも、認定を目指した理由でした。自分たちの授業の実践を見てもらう機会を設け、教員同士で教育活動を考えることにつなげたいと考えています。
「ADSをひとつの軸に、創造的な授業や教育活動を皆で考えたいと思いました。そうしたことに取り組む機会をつくり、新渡戸らしい教育の質を高めていきたいです」(酒井教諭)
たとえば、公開授業で伝えたいのは、特定の製品の使い方だけではありません。地域に出向くスタディツアーや児童生徒が自分の探究を進めるクロスカリキュラムなどを通じて、学園としてどのような教育を目指しているかを実際に見てもらいたいと考えています。

こうした教育活動の根底にあるのが、同学園が教育のシンボルとして掲げる「Happiness Creator」です。平岩理事長は、その意味を他者との関わりから説明します。
「Happiness Creatorは、幸せをつくる人です。誰かの幸せをつくり、それを通じて自分も幸せになっていくということだと思います。誰かの幸せを願う人が育つ学校であってほしいです」(平岩理事長)
平岩理事長によれば、同学園では学んだことを自分の中にとどめず、行動に移し、社会や周囲の人に働きかけることを大切にしています。その際には、自分の考えを相手に伝える表現も必要になります。MacやiPadで資料や作品をつくる活動も、こうした教育の中に位置付けられています。
教員が自分で道具を選び、学校の内外で学ぶ。その先に平岩理事長が目指しているのは、教員の働き方の多様性です。学園にはすでに、大学で教える仕事を兼ねる教員や、副業として学園に関わる教員もいます。
「仕事の80%は新渡戸の先生で、20%は別のことをしている。逆に、新渡戸が20%でもよいと思います。そういう多様性のある集団に、もう一段進めたいです」(平岩理事長)
ただし、その自由は個人の都合だけで成り立つものではありません。平岩理事長は、組織で働く以上、チームに対して何ができるかを考え、最低限のルールを守ることが前提になると話します。信頼が損なわれれば、全員に厳しい制限を設けざるを得ず、端末の選択制も維持しにくくなるためです。

児童生徒一人ひとりが異なる問いに向き合うように、教員にも自ら学び、児童生徒と一緒に考えたり悩んだりする姿勢が求められます。平岩理事長が望むのは、そうした仕事の実践から教職の魅力が伝わり、多様な人材が教員を目指す未来です。
「理想を下げてしまったら終わりだ、という思いがあります。現実には難しいことも多いですが、可能な限り理想を追い求めて取り組んでいきます」(平岩理事長)
校務端末を選べることも、理想の働き方をつくるための一つの取り組みです。自分に合う道具を選ぶ余地と、互いに教え合い、困ったときに支援を受けられる環境をどう保つか。新渡戸文化学園は、日々の運用を通じて、教員が創造性を発揮できる働き方を模索し続けています。

