クラウドサービスの普及で高まるMacの業務互換性
Windows中心の企業にMacを導入する際は、既存の業務システムやアプリケーションとの互換性が気になるところですが、現在は多くの製品やサービスがMacにも対応しています。たとえば、Microsoft 365やGoogle Workspace、SAP、Salesforce、Zoom、Box、Slack、DocuSign、Adobeなど、企業で広く利用されている製品やサービスはMacでも利用でき、専用のデスクトップアプリケーションが用意されているものも少なくありません。
また、Macは一般的な企業ネットワークにも対応しており、社内で利用しているメールやビジネスチャット、ファイル共有などのサービスにも安全にアクセスできます。さらに、Macには文書作成や表計算、プレゼンテーションなどビジネスにも活用できるアプリが標準搭載されているほか、App Storeに200万種類近くそろっているビジネス向けアプリを追加できます。
特に近年は、Webブラウザで利用できるクラウドサービスの普及によってOSの違いによる業務上の制約が少なくなり、従来の業務環境を大きく変えずにMacを導入しやすくなりました。社内で使用しているシステムやアプリケーションを確認してみると、Macでも対応できる業務が想像以上に多いことに気づくでしょう。

Windows専用の業務システムやアプリケーションには注意
ただし、Windows環境を前提に開発された業務システムやアプリケーションを利用している場合は注意が必要です。たとえば、販売管理や生産管理、会計、人事などの基幹システムや、独自に開発した社内システムなどはMacで利用できない場合があります。CADなどの設計ソフトウェアをはじめ、データ分析ツールやIT管理ツール、計測機器と連携する専用ソフトウェア、システム開発用のツールなども、製品によってはWindows環境が必要になります。
また、取引先指定の受発注システムや金融機関の法人向けインターネットバンキング、官公庁の電子申請システムなども、Windowsでの利用を前提としている場合があります。さらに、Microsoft ExcelのようにMac版とWindows版で一部の機能やアドインが異なる製品や、Microsoft AccessやPower BI DesktopのようにMac版が提供されていないアプリケーションも存在します。そのため、Mac導入にあたっては、まず社内外で利用しているシステムやアプリケーションを洗い出すことが最初のステップとして欠かせません。
Excelのマクロやファイルの互換性はどうか
WindowsとMacの間ではファイルの互換性も気になるところです。しかし、現在はファイル形式の共通化が進んでおり、PDFや画像、動画などの一般的なファイル形式は両OSで問題なく扱えます。WordやExcel、PowerPointに関しても、基本的にはWindows PCとMacの間でファイルをやりとりし、編集できます。
ただし、同じファイルでも表示や動作が完全に一致するとは限りません。たとえば、Windowsで作成したWordやPowerPointのファイルをMacで開く際、使用されているフォントがなければ別のフォントに置き換えられ、文字の折り返しや行間が変わってレイアウトが崩れることがあります。
こうした問題は、WindowsとMacの両方で利用できるフォントを使用したり、社内で使用するフォントを統一したりすることで、ある程度防げます。ただし、複雑な図形やアニメーションを使用した資料などは、実際に両OSで表示や動作を確認しておくとよいでしょう。
また、Excelで特に注意したいのが、VBAを使ったマクロです。Mac版ExcelもVBAに対応していますが、Windows版で作成したすべてのマクロが動作するわけではありません。たとえば、ActiveXコントロールやWindows固有の機能、ライブラリに依存するマクロなどは、Mac版では正常に動作しない場合があります。さらに、社内システムとのデータ連携や帳票作成などにWindows専用のアドインを使用している場合も注意が必要です。こうした業務では、実際のExcelファイルを使って動作を確認し、問題があればマクロの修正やWindows環境の併用などを検討する必要が出てくるでしょう。

プリンタや複合機などの周辺機器は使える?
業務システムやアプリケーションと同様に、既存の周辺機器をMacでも利用できるか確認しておく必要があります。
現在はプリンタや複合機、スキャナ、Webカメラ、外部ディスプレイなど、多くの周辺機器がWindowsとMacの両方に対応しています。たとえば、Appleの「AirPrint」に対応したプリンタであれば、Macに専用ドライバをインストールせずに印刷できます。また、複合機の高度な印刷設定やスキャン機能などについても、メーカーがMac向けのドライバやソフトウェアを提供しているケースが多くあります。
一方、注意したいのが、ICカードリーダーやバーコードリーダー、ラベルプリンタ、計測機器など、特定の業務で使用する周辺機器です。こうした機器にはWindows環境を前提に開発された製品も多く、たとえMacに接続できても正常に動作しない場合があります。そのため、メーカーが公開している対応情報を確認するだけでなく、実際の業務で必要な機能を利用できるかテストしておくことが大切です。
既存の業務環境を見直し、段階的にMacを導入する
では、既存の業務システムやアプリケーション、周辺機器にMacとの互換性の問題がある場合は、どう対処すればよいのでしょうか。
まず検討したいのが、既存の業務環境の見直しです。Macの導入は、社内で使用しているシステムやアプリケーション、周辺機器を精査する好機です。利用状況を確認して必要性の低いものを廃止・統合したり、古いシステムをMacにも対応したクラウドサービスなどに移行したりすることで、互換性の問題を減らすだけでなく、レガシー環境からの脱却や業務システム全体のモダナイゼーションにもつなげられます。
もっとも、業務上の事情などから、すべてをすぐに置き換えられるとは限りません。そうした場合にも、次の3つの方法を活用することで、Windows環境を維持しながらMacを導入できます。
- ①VDI(仮想デスクトップ基盤)やWindows 365の活用:Macからサーバやクラウド上のWindows環境に接続し、Windows専用の業務システムやアプリケーションを利用します。また、アプリケーション仮想化によって、Windowsのデスクトップ全体ではなく、必要なアプリケーションだけを遠隔利用する方法もあります。
- ②Parallels Desktopの活用:Mac上でWindowsを動かし、Windows専用のアプリケーションや一部の周辺機器を利用します。
- ③Windows PCの継続利用:Macでは利用できないシステムや周辺機器がある場合は、それらを使用する業務に限ってWindows PCを継続利用します。
それぞれの方法にはメリットや注意点があるため、どの方法が適しているかは、業務内容や利用するシステム、導入コスト、運用負荷などによって異なります。また、必ずしも1つに絞る必要はなく、たとえば、Windows専用のアプリケーションはVDIで利用し、特殊な周辺機器が必要な業務では既存のWindows PCを使い続けるなど、複数の方法を組み合わせることも可能です。
このようにWindows中心の企業でも、既存の業務システムやアプリケーション、周辺機器との互換性を見極め、適切な方法で対処すれば、Macを導入することは十分に可能です。さらに、導入にあたって忘れてはならないのは、最初からすべてをMacに置き換える必要はないこと。まずはMacで業務を行える部署や従業員を対象にパイロット導入を実施し、実際の業務に支障がないかを確かめながら、少しずつ導入範囲を広げていくとよいでしょう。

