
小川 諒大(おがわ・よしひろ)
昭和女子大学附属昭和中学校・昭和高等学校 教諭。大学および大学院では情報科学と教育工学を専攻、研究。IT企業でのシステムエンジニア職を経て、2020年から現職。今年度は主に高等学校の情報の授業で教鞭を執る。
知的好奇心、クリエイティビティを刺激するのはやはりMac?
昭和中学校・昭和高等学校(以下、昭和中学校・高等学校)では、学習管理ツールとして「Google Classroom」を利用しているため、文書作成や表計算、プレゼンテーションにはGoogleのアプリを標準的に利用しています。
中高一貫校の昭和中学校・高等学校では、2021年度からChromebookを中学校の推奨端末、高校ではBYODの形で導入してきました。そのため、現在はMacBook AirとChromebookが混在しているのですが、OSの違いで授業に支障をきたすようなことはほとんどないそうです。多くのWebアプリは、どのプラットフォームでも問題なく使えるためです。
こうしてデバイス活用が日常化する中、動画編集や画像制作など、クリエイティブ系ツールはどのように活用されているのでしょうか。
「ちょうど今日、クリエイティブ系の特別授業がありました。Mac導入を支援してくれたベンダーさんにお願いして、外部講師の方を派遣してもらいました。Adobeの『Premiere Pro』や『Photoshop』などの実践的な使い方を学ぶことができると好評で、興味を持った生徒が多く参加してくれています」
通常の授業でもクリエイティブ系アプリを使うケースが増えているといいます。たとえば、英語のスピーチを動画化して簡易的に編集するといった利用も行われており、そういったケースではAdobeの統合型コンテンツ制作アプリの「Adobe Express」が使われることもあります。
「動画や画像を制作する活動に関心を持つ生徒は多いと思います。見ていると、授業もすごく楽しんで取り組んでいるように見えますね」

「つくる」がしたい生徒たちによるユニークな取り組み、「つくらぼ」とは?
昭和中学校・高等学校では、文部科学省が推進する「DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)」制度による支援を受けて、3Dプリンタやレーザーカッターといった機材を導入しています。これらの機材を使って「つくる」ことを目的に、生徒有志が2024年度に始めた活動が「つくらぼ」です。
もともと物置として使われていた部屋を生徒が整理・装飾し、制作スペースへと変えていく中で生まれました。現在のメンバーは40名ほどで、中学1年生から高校2年生まで各学年から幅広く参加し、日々さまざまな制作活動に取り組んでいます。
「生徒たちは当たり前のように3Dプリンタなどの機材を使いこなしています。こうしたデジタル系機材は、設置されたiMacから対応アプリを使って制御したり、成果物を出力したりします」
先生はそう言いながら、レーザーカッターで作った木製のオリジナルコースターや、3Dプリンタとレーザーカッターを併用して制作したスタンプ、直近で導入したUVプリンタによるアクスタなど、生徒たちによるさまざまな成果物を見せてくださいました。こうしたものづくり体験は、生徒たちにとってつくらぼに参加する醍醐味となっているのではないでしょうか。

生徒に続き教職員にもMacを。今後の活用と課題は?
MacBook Airへの移行によって新たに見えてきた課題もあります。たとえば、学校側で端末を管理しているため、生徒自身でプリンタドライバを追加することができず、一部のプリンタでは印刷に支障が生じるケースがありました。また、Chromebookでは端末へのログインとGoogleサービスで同じ認証情報を利用できましたが、Macでは端末とGoogleの認証情報が分かれます。そのため、中学1年生ではパスワードを忘れるケースもあったといいます。
さらに今後の展望について、教職員へのMacの定着やデバイスの強みを活かす環境整備などを小川先生は挙げます。
「最近になって教室にApple TVを導入しました。プロジェクタにつなげばMacの画面をワイヤレスで出力できるなど、Macの優位性を高めることにつながると思うので、活用していきたいですね」
この目標を掲げた背景には、教職員へのMacの浸透が道半ばという状況もありそうです。徐々にMacを使う教職員は増えつつあるものの、操作への心理的なハードルを感じる教職員もいるといいます。とはいえ、生徒のほうがMacに関して先行している現状を課題として捉えており、教職員側の活用力も高めていきたいと小川先生は話します。教職員のMacへの理解が進み、使いこなせるようになれば、その知見を生徒にも還元できるようになることが期待できるためです。現状では教科の先生ごとにMacの使いこなしに「ムラ」がある点を解消したいとも。
小川先生が強調するのは、「ICTは生徒が向き合うさまざまな問題を解決し、やりたいことを成し遂げるための『道具』である」ということ。同校の事例からは、その道具として現時点でもっとも相応しいと評価されたのがMacというプラットフォームであること、生徒たちからも好意的に受け入れられていることが見えてきました。
| 文●小原裕太、編集●栗原亮(Arkhē) |

