MacはWinよりTCOに優れている。管理費用、故障対応、買い替えサイクル、リセールバリューほか、端末価格だけでは測れない本当のコスト【情シスに聞くApple運用/freee株式会社③】

2026.09.15 小平淳一 約5分
MacはWinよりTCOに優れている。管理費用、故障対応、買い替えサイクル、リセールバリューほか、端末価格だけでは測れない本当のコスト【情シスに聞くApple運用/freee株式会社③】

Appleデバイスは、導入して終わりではありません。本記事は、企業の情報システム担当者に、端末をどう選び、管理し、現場の課題に向き合っているのかを取材する連載企画です。

freee株式会社のApple運用に迫る全4回の連載。第3回となる今回のテーマは「Macのコスト」です。単なる本体の購入価格だけでなく、利用年数やバッテリの持ち、日々の保守にかかる手間までを含めた「TCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)」の視点について、Culture & IT Produce統括本部 IT Produce本部 本部長の常峰和生さんに伺いました。



購入価格だけではコストを判断できない

「MacはWindows PCよりも割高である」というイメージを持つ企業は少なくありません。しかしfreeeでは、現在標準端末として選定しているMacとWindows PCの価格帯について、そこまで大きな差はないと見ています。

「求められるメモリ容量が増加していることもあり、ベースとなる業務端末の単価は全体的に上がっています。現在の標準モデル同士で比較すると、MacとWindowsで価格にそれほどの差はない状態に落ち着いていると認識しています」(常峰さん)

また、業務端末環境にかかる費用は「本体価格」だけではありません。導入後の端末管理ツールの費用や、故障対応などの運用コストも発生します。同社では、こうした目に見えにくい運用コストまでを含めた「TCO」の観点で、Macを高く評価しているといいます。

「さまざまな側面があるため単純な比較は難しいのですが、現場の肌感覚と現在見えている数字でいえば、MacのほうがTCOに優れていると感じています」

Appleシリコンの搭載によって4年利用も視野に

これまで同社が定めていた業務端末の更新ペースは、Macの場合はエンジニアが2年、非エンジニア職が3年。Windows PCについては、使い続けるうちに動作が重くなる傾向を踏まえ、職種を問わず一律3年で交換していました。

しかし、MacのCPUが従来のIntel製から「Appleシリコン(Mチップ)」へと移行して以降、4年程度は問題なく現役で使える感触が得られたため、Macの更新周期を見直し始めたといいます。

「Appleシリコン搭載機になってからは、長期間使っても処理性能の低下やバッテリの劣化があまり感じられず、『これなら4年くらいは普通に使える』という確証を得ました。そこで、これまでのライフサイクルを見直し、今年度から運用ルールを変更しようと動いています」

端末の市場価格が高騰する中、交換サイクルを延ばすことができれば、1年あたりのランニングコストを抑えられます。MacへのAppleシリコンの搭載によって「長期利用」が見込めるようになったことは、Windows PCと比較した際のMacの優位性となっています。

freee株式会社 Culture & IT Produce統括本部 IT Produce本部 本部長の常峰和生さん。

バッテリと機種差が運用負荷を左右する

常峰さんがMacのTCOを高く評価するもう1つの理由が「バッテリ性能」です。Macの場合、会議室を移動しながら1日中仕事をするような日でも、充電残量をそれほど気にせず使い続けられるといいます。一方でWindows PCは、数時間稼働すると充電器が必要になり、夕方頃には会議室の電源タップが取り合いになる場面も珍しくないそうです。

業務端末の長期利用においては、バッテリの劣化も課題になります。同社ではWindows PCに対してバッテリ保証を含むプランで対策しているものの、実感としては「Macよりも早く劣化する傾向にある」と常峰さんは語ります。

さらに見逃せないのが、「メーカーやモデルによる機種差」です。Windows PCは選択肢が豊富な分、機種によっては「キートップが外れやすい」といったモデル固有のハードウェアトラブルが発生することがあります。対してMacは製品構成がシンプルに統一されているため、トラブルシューティングが容易です。

3500台もの端末を管理する情シスの現場において、機種ごとの不具合を調べ、個別に対応する「時間」もまた、見えないコストとしてのしかかってくるのです。

リースではなく、購入して使い切る

同社では、業務端末をリース契約ではなく「購入(買い取り)」で調達しています。決められたリース期間に合わせて強制的に返却するよりも、端末の状態を見極めながら長く使うほうが、結果的に運用しやすいというのがその理由です。

「長く使い続けるケースや、逆に途中で手放すケースのコストを総合的に考えると、自社で購入してきちんと使い切るほうが、運用上の小回りが利いて楽だと考えています」

退職者から返却された端末は、清掃・初期化を行ったうえで次の利用者へと渡ります。そして、社内で完全に利用を終えた端末も一律で廃棄するのではなく、中古市場で売却できるものは売却します。Macはリセールバリュー(再販価値)が高いため、売却によって回収できた金額が、結果として全体の保有コストをさらに引き下げる要素になります。

また、保守のあり方にも工夫を凝らしています。以前はApple純正の「AppleCare+」を利用していましたが、現在はより自社のニーズに合った販売代理店の保守サービスへと切り替えました。

端末を購入して長く使い、その時々の運用にもっとも適した保守プランを選ぶ。こうした柔軟な判断の積み重ねが、約3500台という大規模な端末環境のスマートなコスト管理につながっているのです。

次回は、クラウドサービスと生成AIの普及が、今後の業務端末の「選び方」をどう変えていくのかについて伺います。

写真●黒田彰

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