基調講演で発表された、この秋登場の「iOS 11」プレビュー。その具体的なアップデート内容を見ていこう。
ビジネスの「プロ」にも最適
これまで新iOSの発表は、いわば「iPhoneの使い方がこれだけ進化する」といった紹介の仕方が多かった。iPad上の新機能もあるが、iOS全体で見ると少なく、ユーザの大半もiPadを「大画面のiPhone」として認識していたように筆者は思う。
しかし、2015年にiPadプロとアップルペンシルが登場し、iPadが「コンテンツを楽しむデバイス」から、「クリエイターが仕事に使うツール」として評価されるようになった。生産性の向上が叫ばれる時代の流れにもフィットし、特に映画業界やデザイン業界では、iPadプロとアップルペンシルの導入が進みつつある。
そんな中、今年はiPad版iOSが、ビジネス用途に適した仕様に変化した。クリエイターだけでなく、ビジネスの「プロ」たちも巻き込んで、いよいよiPadが全ビジネスシーンで使えるようになりそうだ。
基調講演では、ソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏が、いつものようにiPhone版iOSを紹介。続けて、ワールドワイドマーケティング担当上級副社長のフィル・シラー氏が新iPadプロを発表した。
そして、静かな期待感が会場を包む中、フェデリギ氏が再登場。iPad版iOS 11は「ネクストレベル」の進化であり、iPad史上最大のiOSアップデートであると宣言すると、会場のボルテージは一気に上昇した。iPad版iOS 11の新機能が紹介されるたびに、大きな拍手と歓声が沸き起こる。基調講演の締めに登壇したCEOのティム・クック氏は、「iOS 11はiPadをまったく新しいレベルにする」と断言し、iPadが今回の基調講演における主要なトピックであることを改めて強調した。たしかに、同じiOSでもiPhoneとiPadでまるで別物に仕上がった印象だ。iOSとmacOSをうまくマリアージュしており、幅広い「プロ」がビジネス用途として十分使える仕様に仕上がっている。
購入計画は慎重に
iOS 11は、iPhone 5s以降のデバイスをサポートする。つまり、次の「iOS 12(仮)」がリリースされるまでは、iPhone 5sもギリギリ現役選手として使えることがほぼ確定したのである。日本では2016年からワイモバイルとUQモバイルがiPhone 5sを「現行機種」として取り扱っている。格安プランで利用するユーザ(とiPhone 5sを取り扱う企業)にとっては、一安心といったところだろう。しかし、次のアップデートでiPhone 5sがサポートから外れた場合、来年秋にはアップデートできなくなる可能性がある。OSのアップデートは、不具合の修正やセキュリティの向上といった重要な役割も果たすため、常に最新の状態にしておくのがベスト。古いiOSのせいでデバイスが危険な状態にさらされるのは得策ではない。
つまり、価格の安さだけでiPhone 5sを今から新規購入するのはあまり推奨できない。親や子ども用に手頃なiPhoneが欲しい場合は、サポート期間にも余裕があるiPhone SEをおすすめする。
このように、新OSが発表された際は、対応デバイスを確認して今後の購入計画を立てておくと安心だ。
対応デバイス
●iPhone
iPhone 7/iPhone 7 Plus/iPhone 6s/iPhone 6s Plus/iPhone 6/iPhone 6 Plus/iPhone SE/iPhone 5s
●iPad
12.9インチiPad Pro(第2世代)/12.9インチiPad Pro(第1世代)/10.5インチiPad Pro/9.7インチiPad Pro/iPad Air 2/iPad Air/iPad(第5世代/iPad mini 4/iPad mini 3/iPad mini 2
●iPod
iPod touch(第6世代)
[カメラ]写真はより軽く、より楽しく
iPhoneが世界でもっとも使われるカメラとなった今の時代、ユーザが撮影する写真は、なんと年間1兆枚に及ぶ。フォトライブラリにある大量の写真が、本体容量を圧迫している人も少なくない。
そんな状況を改善する変更が、基調講演で発表された。現在、iPhoneで撮影した写真は「JPEG」、ビデオは「H.264」形式となっているが、iOS 11では新フォーマットの「HEIF」および「HEVC」(「H.265」)を採用する。
どちらのフォーマットも従来に比べて圧縮効率がよく、約半分のファイルサイズで同程度のクオリティを保つ撮影が可能。この変更はiPhone 7とiPhone 7 Plus以降のデバイスに対応し、大量の写真およびビデオでも、容量を削減して保存できるようになる。互換性も考慮されており、これらのファイル形式に未対応のSNSにアップする場合は、従来の形式に変換して投稿されるようだ。
シャッターを切った前後1.5秒を撮影する「Live Photos」には、キャッチーなエフェクトが登場する。ビデオを繰り返す「ループ」や、再生と逆再生を繰り返す「バウンス」、長時間露光に加工する機能を追加。より細かな編集が可能になり、Live Photosの自由度が増した。また、iPhone 7 Plusのポートレートモードも強化され、撮影性能が向上するほか、光学式手ぶれ補正、True Toneフラッシュ、HDRが使えるようになる。
地味にうれしい新機能が、標準カメラのQRコード対応だ。カメラを起動してQRコードにかざすと、スキャンされ、読み取ったデータに最適なアプリが提案される。WEBサイトのURLや連絡先、マップなど、さまざまな情報をカメラから一発で表示できるようになる。
カメラ周りは全体的に、既存の機能をブラッシュアップした新機能が多い印象だ。
新たに採用するフォーマット「HEIF」と「HEVC」(H.265)は、WWDC 17のセッションで詳細が紹介された。HEIFは従来の約半分のファイルサイズで同程度のクオリティを保つ撮影が可能。
短い動画が人気となるSNSの影響を受けてか、Live Photosにクリエイティブなエフェクトの「ループ」「バウンス」「長時間露光」を追加する。自分で画像を選ぶだけでなく、たとえばループ向きのLive Photosがある場合は、写真アプリ側が加工を提案することもあるようだ。
長時間露光は、実際に長時間の露光撮影ができるわけではなく、Live Photosで撮ったメインとなる画像と、前後計3秒の動画を合成し、長時間露光写真風にエフェクトをかけられる機能だ。花火や滝、観覧車など、動きのある被写体の軌跡を再現できる。
[写真]機械学習を活用した賢い写真整理が可能に
「写真」アプリのアップデートで注目すべきは、機械学習(マシンラーニング)を用いた新機能だ。Appleは以前の写真アプリから、顔認識機能などで機械学習を取り入れていたが、iOS 11ではさらにわかりやすい形でこの技術を体感できる。
たとえば、フォトライブラリの写真やビデオを自動でピックアップして、コレクションにまとめる「メモリー」では、メモリームービーが横画面、縦画面両方に最適化され、再生中でも自動で縦横の切り替えに対応する。また、機械学習を用いた写真の分類技術により、「ペット」などさらに多くのメモリーが自動生成されるようになる。iPhone 7 Plusのメモリーでは、ポートレート写真から動画を作成する「ポートレートムービー」機能も追加する。
ほかにもLive Photosの編集機能が強化されたり、フィルタがプロ品質の新しいものへ変更もしくは追加されるようだ。iOS 11以降、思い出の整理整頓は、写真アプリに完全におまかせになるかもしれない。
iOS 10のメモリームービーは横向きのみだが、新たに縦画面と横画面の切り替えに対応。横画面で再生中に縦画面にすると、自動的に映像が最適化され、画面の向きに合ったムービーに変化する。
Live Photosは、シーンのトリミングや音声のミュートといった細かい編集も可能になる。Live Photosはキーとなる写真があり、その前後を動きのあるビデオとして撮っているが、そのキーフォトもあとからセレクトできようになる。
[Siri]賢くなったSiriがユーザの行動を先読み
Siriは36カ国、21言語に対応し、毎月3億7500万台以上の端末で使用されている、世界でもっとも有名な音声パーソナルアシスタントとなった。iOS 11では、人工知能と機械学習における最先端の技術によって、さらに自然な音声で表現力豊かに会話できるようになる。英語のデモでは、文脈を理解してイントネーションを変化させており、ピッチや間の作り方も違和感がなく、まるで人間のようだった。日本語版でもどれだけ反映されるのか楽しみだ。
また、ベータ版ではあるものの、翻訳機能が登場。Siriに英語で尋ねれば、中国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語に翻訳できる。
注目すべきは「Siri Inteligence」=「Siriの知性」によって、よりパーソナルな先読み提案ができるようになる点だ。デバイス上の学習機能を使い、ユーザの関心、デバイスの使い方、そしてユーザが次に何をしたいかを理解する。
Safari、「News」アプリ、メール、メッセージなどでは、Siriが個人の使い方に基づいたさまざまな操作を提案する機能が加わる。Safariでアイスランドについてブラウズしたら、次に開いたメールやメッセージの入力中に、アイスランドに関連する入力候補が表示される、といった具合だ。
もはやSiriは音声に限ったアシスタントではなく、iOSのあらゆる場面で、ユーザの行動を先読みしてサポートするアシスタントに進化しつつあるといえる。
ベータ版の翻訳機能では5カ国語に対応。Siriに英語で話しかけることで、特定の言語へ変換できる。翻訳されたフレーズは音声でも再生できるので、発音がわからない言語でも安心だ。なお、日本語への対応は、基調講演終了時点では発表されていない。
Safariでブラウズしたあとに「News」アプリ(※現時点で日本版未対応)を開くと、その内容に関連した関連のトピックスが表示される。Safariでホテルを予約したら、その日時をカレンダーに登録するよう通知が届く機能もあるようだ。
キーボードの変換候補にも、Siri Intelligenceは使われる。たとえば、iMessageで相手から「20ドル」など金額を含むメッセージが送られてきたとき、予測変換候補にApple Payのロゴが表示される。それをタップすると、素早くApple Payの個人決済画面を呼び出せるようになる。
[iMessage]アプリの呼び出しがよりスムースに
iMessageでは入力バーの下部にAppパネルが加わり、左右にスワイプすることで、ステッカーおよび各アプリをスムースに呼び出せるようになった。またiCloudでの同期に対応するため、複数デバイス間でiMessageの内容を自動的に反映する。
さらにApple Payに個人間決済機能が加わったことで(詳細はApple Payの項目を参照)、メッセージアプリ内で安全かつ簡単に、相手とお金のやりとりが可能になる。方法はとてもシンプルで、AppパネルからApple Payを選択し、金額を入力。Walletアプリに登録した中から決済するカードを選択し、Touch IDで指紋を認証させれば送金完了だ。
さまざまな拡張機能により、少ないタップ数でアクセスできるように再設計されたiMessage。ステッカーで感情を表現したり、コンテンツを共有したりするプライベートな使い道から、タスクやスケジュール管理、送金までアプリ内で完結するようになる。まさに「ハブ」のような役割を果たすアプリに大きく進化したのだ。
画面下部にAppパネルが追加。iOS 11では、パネルを左右にスワイプするだけで、お目当てのアプリを起動できるようになる。
iMessageがiCloudで管理されるため、複数のデバイスで常に最新の状態へ同期されるようになる。メッセージ上で共有した画像をiPhoneで削除すると、自動的にiPadのメッセージ画面でも削除される、といった具合だ。
[Apple Music]自分の音楽体験を友だちと共有
昨秋リニューアルしたApple Musicは、メンバーシップ登録が2700万を突破し、世界有数の定額制音楽配信サービスの1つとなった。
Apple Musicでは、現在4000万曲もの膨大な音楽にアクセスできるが、利用するにつれて、いつも同じ曲なりプレイリストなりに偏ってしまう場合が少なくない。そこでiOS 11では、「For You」などのキュレーション機能に加えて、音楽SNSのようなサービスを提供し、新たな音楽との出会いを促進する。
具体的には、一人一人のユーザが自分のプロフィールを持ち、プレイリストを公開したり、友だちをフォローしたりできるようになる。友だちがシェアしたプレイリストや、よく聴くアルバムもしくはステーションをチェックすることも可能だ。
おすすめの曲を表示する「For You」ページには、新たに「友だちが聴いている曲」カテゴリが作られ、フォローした人がよく聴くアルバムが一覧表示される。どんな曲が周りで流行っているのか、ひと目でわかる楽しさがありそうだ。
また、Siriとの連係もさらに進化する。音楽をかけるように頼むと、ユーザの好きな曲や、好みに基づいたおすすめの曲を流すという。さらに、「この曲のドラマーは誰?」などといった音楽の雑学についても答えてくれる。音楽を聴くだけでなく、知識まで身について、より深く音楽を楽しめるようになりそうだ。
iOS 11では、フォローした友だちが何を聴いているか、リアルタイムで知ることが可能だ。プロフィールページには、公開プレイリストやよく聴くアルバムが表示され、自分の音楽センスを全世界に発信できる。
「For You」タブに「友だちが聴いている曲」カテゴリが登場。複数の友だちが同じ曲をよく聴いている場合は、友だちのアイコンがアルバム上に複数重なって表示され、人気の音楽がひと目でチェックできる。友だちがきっかけで、新たな音楽を見つけられるかもしれない。
SiriはユーザのパーソナルDJにもなる。「私が好きそうな曲をかけて」と頼むことで、ユーザの好みに適した曲を流してくれる。HomePodが発表されたこともあり、今後さらにSiriとApple Musicの連係は強化していく可能性が高い。
[Apple Pay]現金需要のキモ「割り勘」にメスを入れる
基調講演では「モバイルデバイスでもっとも使用される非接触決済方法」として紹介されたApple Pay。現在は店舗での決済もしくは、アプリおよびWEBブラウザ経由での決済が可能だが、今秋からは米国で新たに個人間決済に対応する。送金はiMessageのメッセージ画面から行う。Walletに紐づくデビッドカードもしくはクレジットカードを利用し、Touch IDで指紋を読み取ることで、安全かつスピーディに決済できる。
受け取りに使うのは、「Apple Pay Cash」なるAppleの銀行口座のような仕組みだ。Apple Pay Cashのアカウントに貯まったお金はすぐに利用できるため、他の人への送金や、Apple Payでの買い物にも使えるとのこと。銀行口座に振り替えて、現金化することも可能となる。個人間決済とApple Pay Cashは今秋から米国内でスタートする予定だ。
手数料の金額や競合との差別化、国内の対応など、不明点はいまだ多いものの、今後もしiPhoneユーザの多い日本で実装されれば、新たな個人間決済の手段として今後じわじわ浸透していくものと予想される。
個人間決済は、通常のApple Payと同じく、Walletに登録したデビットカードまたはクレジットカードを使って送金する。
iOS 11では、Siriを使ったApple Payの個人間決済も可能となる。指での操作が不自由な人にとっては便利な新機能だろう。
Apple Payの利用シーンを増やすことで、Appleのエコシステムはさらに拡大し、より強固なものとなる。日本でも導入されるか注目しておこう。
[App Store]
新しいApp Storeでは、専門エディターによるキュレーションを全面的に押し出し、日々コンテンツを更新する。開発者とアプリ、ゲームの背景を取り上げるその情報量は、「アプリ専門メディア」と言っても過言ではない充実ぶりだ。タブは「Today」「ゲーム」などの5項目に一新される。「Today」では、アプリの最新情報や専門エディターによるニュースのほか、世界初公開の情報から舞台裏のエピソードまで紹介する「デイリーストーリー」、アプリのハウツー記事「ヒントとコツ」、テーマ別にエディターがアプリを選別した「リスト」、「今日のゲーム」「今日のApp」と多彩なコンテンツを提供する。検索結果には、アプリだけでなくこれらのコンテンツも表示するので、多くの情報を簡単にピックアップできるようになる。
タブは「App」をホーム(中心)とし、アプリに関連する多様なコンテンツを提供する。「Today」では、アプリの最新情報や、App Storeエディターによるニュースを、「ゲーム」では熟練のゲーマーがキュレーションしたアプリを取り上げる。
アプリページも見やすく再設計される。表示されるビデオの数は3倍になり、ランキング表示に対応。レビューは機械学習によって評価システムが一段と効率化するほか、開発者からの回答が可能になる。
[ARKit]
iOS 11の開発者向けの機能として、複数の開発キットが発表された。開発者にとって大きなニュースだったのは、AppleがAR(拡張現実)に本格的に参入したことだ。10億人以上のデバイスユーザを抱えるiOSは、世界最大のARプラットフォームになる。
基調講演では、ARをアプリに簡単に組み込めるツール「ARKit」が発表され、ARKitを使って開発したゲームアプリ「Wingnut AR」のデモが行われた。テーブル上に街が現れ、人々が歩いたりする中、上空から敵が攻撃が始まる。机上での戦闘が繰り広げられ、テーブルの縁を走って落下する人物もいた。ARKitの登場により、今後はARを使ったアプリが増え、既存のARアプリのクオリティも上がることだろう。
基調講演で発表されたARKitは、ARをアプリに簡単に組み込めるツールだ。また、その場ではARKitを使って開発された「Wingnut AR」のデモも行われた。本ツールを使うことで、今後はより一層クオリティの高いARアプリが増えていくと予想される。
[自動セットアップ]
機種変更で新しいiPhoneやiPadを購入した際、最初にアクティベーションしてあらゆる設定を完了させる必要がある。個人設定や環境設定を毎回行うのは時間と手間がかかる作業だ。
そこでiOS 11では、これまで使っていたiOSデバイスに、新規購入したiPhoneやiPadを近づけるだけで、さまざまな設定を自動でセットアップできるようになる。個人設定や環境設定だけでなく、iCloudキーチェーンに保存した個人情報も、素早く安全に読み込まれるという。
「iCloudキーチェーン」とは、Safariで閲覧したWebサイトのユーザ名とパスワード、クレジットカード情報、Wi-Fiネットワーク情報を保存し、同じiCloudを登録しているすべてのデバイス間で、自動的に最新の状態に同期する機能のこと。自動セットアップにより、重要な個人情報を保護した状態で、簡単かつ安全に次の新しいデバイスへコピーできる。
[ロック画面の通知 ]
ロック画面にも細かな変更が追加された。現在は最近の通知と見逃した通知は別画面に表示されるが、iOS 11では、両方の通知が一箇所にまとめて表示される。
具体的には、ロック解除後の画面で、画面上部から下にスワイプすると、最近の通知が表示される。その状態で少し画面を上にスワイプすると、今度は従来の通知センターが現れ、これまでの見逃した通知が一覧で表示される。
最近はTouch IDの高速化により、ロック画面の通知を見逃してしまうユーザも多かったのではないだろうか。iOS 11では最近の通知と見逃した通知を、一箇所でまとめて確認できるので、通知を見逃すことは少なくなりそうだ。
[コントロールセンター]
地味な改変ながら、大きな驚きが起きそうなのが、コントロールセンターのデザインだ。これまでメジャーアップデートのたびに、幾度となくデザインが変更されてきているが、iOS 11では2画面から1画面に収まった。
さらにコントロールボタンは多様なカスタマイズが可能になっており、ボイスメモやホームなど、よく使う機能の設定を追加できるようになる。
また、3D Touchによる操作性が向上し、ボタンをプレスすることで、各設定での細かな調整が可能になった。1画面になったことで、特にミュージック操作画面が小さくなってしまったが、それも3D Touchによってボタンを拡大し、ジャケットなどを確認できるように工夫されている。
カスタマイズ性が上がり、これまで追加できなかった機能にも対応する。すぐにアイデアを残したいときはボイスメモを、ダイニングの照明をワンタップでオン/オフしたいときは、ホームのコントロールボタンを追加するなど、ユーザの使い方に合わせたコントロールセンターが作成できそうだ。
[運転モード]
睡眠を妨げる通知音をオフにする「おやすみモード」に続き、新たに「運転モード」を採用する。移動スピードをデバイスのセンサが感知し、ユーザーが車を運転している可能性があると、運転モードが有効になる。このモードでは自動的に通知が無音になり、画面もオフになるので、ながら運転を防ぐことができる。
おやすみモードがオンになった状態で、「よく使う項目」に登録した連絡先の相手がメッセージを送った場合、運転中であることが自動返信される。重要な用件であれば、そのメッセージに対し「緊急」と返信すると、重要な内容だけが通知されユーザに届く機能も搭載している。
運転モードでは、電話、テキストメッセージ、通知がオフになり、画面が暗くなる。なお助手席やバスでの移動により、運転中でないにもかかわらず、誤って運転モードがオンになった場合、通知をプレスして運転モードをオフにすることも可能だ。
[マップ]
駅構内の案内に続き、iOS 11では世界中の主要空港やショッピングセンターのフロアマップを追加する。世界30箇所以上の空港を含む、数百の商業施設で内部の詳しい案内を見ることができる。運転中における制限速度の通知や、車線案内のサポート機能といった、スムースかつ安全な運転をサポートする機能も追加する。曲がるべき交差点や、降りるべき出口を見逃さないよう、適切な車線を知らせてくれるほか、走行中の道路の制限速度もわかるようになるという。
空港のセキュリティを通過したあとに食事できるレストランの場所や、巨大ショッピングモールの3階に入っているブランドショップの名前などが、マップアプリ上で簡単に調べられる。海外旅行でも重宝しそうな機能だ。
[QuickType]
キーボードに片手操作用モードが追加され、移動中のiPhone入力がさらに簡単になった。地球儀アイコンから片手入力を選ぶことで、キーボード全体が瞬時に親指側に移動し、片手でも入力しやすくなるという。
また、機械学習によるSiriの知性はキーボード入力にも活かされる。ユーザーがSafariで閲覧したトピックや場所に基づいて、QuickTypeキーボードでの入力中に、関連する入力候補を先読みして表示する。入力のスピードが加速度的にアップすることになる。
現在キーボード左下の地球儀アイコンを長押しすると、入力言語が選択できるようになっているが、その中に新たに「片手入力」モードが加わる。iPhoneプラスシリーズの場合、この左下にある地球儀アイコンを、右手親指でタップすること自体がまず苦労しそうそうだが、操作性はいかに。