2025年末に筆者が公開した記事、「メモリ価格が急騰中。 iPhoneやMacはどうなる?」を覚えておられるだろうか。
AI需要の急速な高まりによって市場におけるメモリの需給バランスが大きく崩れ、2025年の後半以降、急速にメモリチップの品不足と価格高騰が始まった。それから約半年が経過し、状況はさらに深刻になりつつある。
いよいよ見え始めたApple製品への影響
前回の記事では「Apple製品への当面の影響は限定的」だと述べた。それは、Appleのような大規模なボリュームでの長期購買契約ではメモリスポット価格の影響を受けにくいからだ。実際に一部の製品を除けば、MacをはじめとするApple製品には目立った価格改定の動きはまだ見えていなかった。
しかしメモリの供給不足が長期化しさらなる価格上昇局面となった今、Appleの製品ラインアップにも、その影響が出始めている。
まず、Macの製品ラインナップの中で一部のSKU(管理品目:Stock keeping Unit)の廃止が始まった。以下の表で「×」で示したSKUは、製品のリリース時点には存在していたにもかかわらず、その後ラインアップから消えたものだ。

これを見ると、デスクトップMacであるMac miniやMac Studioで大容量メモリのSKUが選択できなくなっていることがよくわかる。
特にハイエンドモデルであるMac Studioではその傾向が顕著で、リリース当初は7SKUだったのに対して、本稿執筆時点では搭載メモリ容量が少ない3SKUを残して全滅となっている。しかもその納期もかなり長い。

これは大容量メモリのSKUに搭載するためのメモリ(LPDDR5X SDRAM)が不足している影響だと考えられる。
2026年3月にM3 Ultra搭載Mac Studioの512GBオプションが廃止され、256GBオプションは18万円から30万円へと価格改定(値上げ)された。
しかしその256GBオプションも5月に廃止され、現在M3 Ultra搭載Mac Studioは96GBモデルしか選択できない。Mac miniも同様に、M4モデルの32GBオプションとM4 Proモデルの64GBオプションが選択できなくなっている。
ただしM5 Max搭載MacBook Proは、本稿執筆時点でも128GBオプションが選択でき、納期もそれほど極端に長くなっていない。これは、Appleが限られたメモリの割り当て先を意図的に調整しているためと推測される。
つまり、M5世代への更新を控えたMac miniやMac Studioへのメモリ割り当てを減らし、その分をM5世代に更新したばかりのMacBookシリーズや今後リリースする新製品に優先的に割り当てている可能性が考えられる。
しかし、従来ならモデルチェンジを控えた製品でも、現行モデルに対するこれほど極端なSKUの削減は見られなかった。Appleほどの市場規模を持つメーカーでも、昨今のメモリ供給不足の影響は避けられないことを窺い知ることができる。
気になる今後のメモリ市場動向は? MacやiPhoneの価格はどうなる?
残念ながら2026年に入ってからもメモリ価格の上昇基調は変わらず、市場におけるメモリ不足はまったく解消されていない。
米国でIT分野の調査などを行うIDG(International Data Group)のレポートによれば、2026年のメモリ価格は年間を通じて上昇局面にあり、すでにLPDDR5(LPDDR5Xを含む)は1年前の3倍に達する価格水準だ。さらに、この傾向は2027年まで継続するとしている。
一方で、DRAM価格の高騰を追う形でNANDフラッシュ価格も急速な上昇を見せており、こちらもAIサーバ需要による影響が大きい。メモリとSSDのいずれも必要とするApple製品では、その影響を完全に免れることはまず不可能だろう。

さらにAIデータセンターの建設ラッシュとこれにともなう半導体需要の急速な拡大は、半導体製造業のキャパをも、脅かしつつある。
TSMCの最先端半導体ラインやそのパッケージ工程もAI関連需要で逼迫状態とされており、その影響が今後Appleシリコンの生産にも及ぶことが心配される。最近では、AppleがIntelの半導体製造ラインを利用するのではないかという話すら聞こえてくるようになった。
今後登場する新製品は、価格転嫁が避けられない状況に
本稿執筆時点では、現行製品の価格改定を抑制しているApple。しかし長期契約やバンドル調達による原価抑制も、これほど大規模な価格上昇が長期化すれば遠からず限界を迎える。
このため今後リリースされる新製品では、メモリをはじめとする半導体価格の上昇分を製品価格に転嫁をせざるを得なくなるだろう。すでにライバルのスマートフォンメーカーやPCメーカーでは、製品値上げを実施するところが増えている。
現在起きている世界規模でのAI需要の急拡大は、「ジェボンズのパラドックス」を彷彿させる。それは「技術の進化によって資源の利用効率が向上しても、資源の消費量は減るどころか増加する」というものだ。石炭産業時代に提唱されたパラドックスだが、それは現在のAI需要にも当てはまる。
半導体技術の進化がAI利用のコストを下げる一方で、それが利用拡大を加速させる原動力となって消費の増大を招く。私たちはまさに今、その巨大な渦の中に巻き込まれているのかもしれない。

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