エルキャピタンにアップグレードしたらMacの体感速度はアップするの?
エルキャピタンでは「パフォーマンス」が大きく改善され、動作がよりキビキビとしたものになると、アップルはいいます。具体的には、「ソフトウェアの起動は最大40%、ソフトウェアの切り替えは最大2倍、最初のEメールメッセージの表示は最大2倍、プレビューでPDFを開くときは最大4倍」にも上るそうです。
また、グラフィックス処理にメタルを利用するため、エネルギー消費量を減らしながら、グラフィックスを多様するソフトウェアやゲームの動きが高速化するとしています。さらに、OS Xのグラフィックスを語るうえで欠かせない「コア・アニメーション(Core Animation)」や「コア・グラフィックス(Core Graphics)」もメタルによって向上し、WEBページのレンダリングは最大40%、PDFのレンダリングは最大50%も向上しているとのこと。
実際に、iMac21.5インチ2.9GHzコアi5(Late 2012)を使って、エルキャピタンへのアップグレード前後を比較してみた結果が下のグラフです。
OS自体の起動時間に関してはさほど差はありませんでしたが、プレビューでPDFを開く時間を比べてみたところ、ヨセミテに比べて、2倍速いという結果が出ました。アップルが公式にアナウンスしているとおりの結果が出ましたが、これはメタルがPDFのレンダリングを高速化しているからだと思われます。また、サファリの描画速度および、写真ソフトでのRAW現像の速度の比較においても、エルキャピタンが勝るという結果になりました。
そして、サファリにおいてHTML5キャンバス(Canvas)とWebGLの評価を行うことができる「BMark」の結果はエルキャピタンのほうが高い数値が出ており、新しいサファリのレンダリングエンジンの向上がうかがえます。
総合的に判断すると、ソフトによってはパフォーマンスの改善を体験できるようです。ただ、意識しなければ気がつかないレベルの高速化も多いのが事実。たとえば起動時にドックアイコンがバウンドする回数が5回から4回に減ったといったことなど、細かなレベルの高速化は、なかなか体感することが難しいかもしれません。
比較的新しいモデルのMacでは全体的な挙動がヨセミテよりも改善されているのがわかりましたが、一方、古いMacでエルキャピタンは快適に動作するのでしょうか。その問いに対しては、実際に2011年モデルのMacBookエアに入れて試した限り、重くて動かないといったことはありませんでした。むしろ、そのMac自体がエルキャピタンのインストールをサポートしていれば日常作業には問題なく使えるでしょう。
ただし、インターネットなどでユーザの声を聞くと、中にはアップデート後に遅くなった!という人がいるのも確かです。この現象は筆者も経験済みで、しばらく放置していたMac
Bookエア(2012年モデル)がソフトを複数起動していたわけでもないのに突然冷却ファンが回り出し、動作も緩慢となってレインボーカーソルも出ました。
「アクティビティモニタ」を確認するとネットワークのトラフィックが増えていたため、これはおそらくアイクラウドとの初回同期が行われていたのではないかと思われます。数日経過すればアップデート直後のように速度は回復しました。
ちなみに、統合型のGPUを搭載したMacでは、OS Xをエルキャピタンへアップデートするとビデオメモリ(VRAM)への割り当てが増え、性能が向上することがあります。2011年以前のモデルではその変化はありませんが、2012年以降の一部のモデルでは(確認できたのはMacBookエア/インテルHDグラフィックス4000搭載)ではヨセミテのアップデート時に1024MBから1536MBへビデオメモリの割り当てが増えました。
? アップルのエルキャピタンではスペックではなく、具体的な操作における体感速度の向上が大きく謳われています。
? エルキャピタン動作要件のギリギリの世代である2008年モデルのMacBook13インチ(コア2デュオ2GHz、メモリ8GB)にインストールしたところ日常的な作業であれば問題なく、スペック上も2011年のMacBookエア同等の結果が得られました。一方、2012年モデルのMacBookエアでは快適そのもの。全体的に動作がキビキビし、ファインダウインドウのカバーフロー表示のサムネイルもヨセミテより高速に描画される印象です。
? アップデート後に速度が低下したと感じられる要因の1つと考えられるのがスポットライトの索引の構築とアイクラウドとの各種データ同期です。これは同期しているデータの量によって数時間から数日かかりますが、しばらくすると速度が戻ってきます。
? 「写真」アプリで数万枚、数十ギガバイトといった大量の写真をフォトライブラリで同期していると作業中の動作は緩慢になります。筆者の環境でも3日程度は遅かった印象です。
OS起動時間比較
OSの起動時間比較は、起動音が鳴ってから何秒でデスクトップが出るかを計測しました。その結果、差はごくわずかですが、ヨセミテのほうが速いということがわかりました。しかし、体感ではわからないレベルなので、ほぼ差は感じられないでしょう。
Safariの描画速度比較
サファリを起動して、ホームページ(アップルの公式WEBサイト)が表示されるまでの時間を計測しました。WEBレンダリング速度の向上がわかります。
写真ソフトでのRAW現像
「写真」を使って、200枚のRAWデータをJPEGに現像しました。GPUの性能を上手く引き出せたのか、エルキャピタンの環境では1分速く現像が終了しました。
プレビューでPDFを開く時間
プレビューでPDF80枚(合計306MB)をすべて開いたときの秒数を計測しました(あらかじめ、設定で「すべてのファイルを個別のウインドウで開く」をチェックしておくこと。プレビューは未起動時から)。大差をつけてエルキャピタンが速いという結果に。メタルがPDFのレンダリングを高速化していると見られます。
BMark
HTML5 Canvas(2Dグラフィックス)とWebGL(2Dおよび3D)の評価を行える「BMark」でサファリのテストを行いました。スコアは合計値ですが、Canvas値(2Dグラフィックス)の性能向上が大きくなっています。これは新しいサファリのレンダリングエンジンの性能向上が大きいと考えられます。
グラフィックス性能を引き出す
グラフィックスメモリ(VRAM)が288MBであった2011年モデルのMacBookエアは、エルキャピタンにしても変化ありませんが、2012年モデルでは1536MB(1.5GB)です。後者はメインメモリが倍であったこともありますが、エルキャピタンでは2012年以降モデルのグラフィックス性能を有効に引き出しています。
Macのソフトを強制終了するには?
ソフトの動作が何らかの原因で止まった場合、ドックのアイコンを長押しして「~が応答しません」と表示されたら、ハングアップ(異常停止)した証拠です。こうなるとソフトを強制終了して起動し直すしかなく、作成中のデータは前回保存時に戻ってしまいます。幸いシステム全体が固まるようなことがなければ、強制終了が働かないことはまずありません。
同じソフトが何度もハングアップする場合は、ソフトの初期設定ファイルなどが壊れているか、最新のシステムに対応していないバージョンのソフトを使い続けている可能性があります。システムのアップデート前に、最新版のソフトをチェックしておきましょう。
アップルメニューの[強制終了]を選び、終了させたいアプリを選んで[強制終了]ボタンをクリックしましょう。
OSアップデート後、ソフトが正常に起動しない?
エルキャピタンに限らず、OSのアップデート時には、なにかとトラブルがつきものです。直前まで起動できていたのに、アップデート後に特定のソフトだけが起動しなくなってしまった場合は、いくつかの原因が考えられます。
まず「ユーザとグループ」パネルで新規にユーザを作成し、そのユーザでログインして、問題のソフトを起動してみましょう。ソフトが起動するなら、元のユーザの「ライブラリ」に保存されている初期設定ファイルなどが壊れているので、それを削除してみると解決するかもしれません。
新規ユーザでも起動しない場合は、ソフトが壊れている可能性があります。ソフトのアイコンをゴミ箱に捨てて再度インストールし直しましょう。ただし、初期設定ファイルやライブラリ内に作成するファイル/フォルダなどはソフトのアイコンだけ捨てても処分されないので、「アップクリーナー(App Cleaner)」などのユーティリティを使って、関連ファイルごと捨てたほうが安全です。
大抵はここまでやれば直りますが、ソフトを再インストールしてもダメな場合、案外見落とされがちなのがフォントです。これは「マイクロソフト・オフィス(Microsoft Office)」やアドビ製品に多いのですが、ソフトが独自のフォントメニューを持っている場合、フォントそのものや、フォントキャッシュが壊れていると、フォントを読み込もうとして止まってしまうのです。
そんなときは、OS X標準ソフトの「フォントブック(Font Book)」を使って、一度システム標準のフォントだけの状態に戻し、除外したサードパーティ製フォントが壊れていないか検証してみるのがオススメです。
フォントキャッシュについては、Macを「セーフモード」で起動すると、自動的に削除されます。起動方法は簡単で、[シフト]キーを押しながら起動するだけです。このセーフモードにはほとんどリスクがないので、ソフトの起動問題が起きた場合、「まず最初にセーフモードで起動」を覚えておくといいかもしれません。
? 「システム環境設定」→[ユーザとグループ]パネル左下の[+]をクリックし、ユーザを追加します。一度ログアウトし、新しく作ったユーザでログインして、ソフトが起動するか試します。
? 「アップクリーナー」はソフトのアイコンをドラッグ&ドロップすると、初期設定など関連ファイルをまとめて探し出し、ゴミ箱に捨ててくれます。【URL】http://www.freemacsoft.net/appcleaner/
? 「フォントブック」の[ファイル]メニューから[標準フォントを復元]を選び、システム標準フォントのみの状態にして確認します。
? 除外されたフォントはハードディスク直下の[ライブラリ]→[Fonts(Removed)]に移動されます。
? フォントブックの[ファイル]メニューから[ファイルを検証]を選び、[Fonts(Removed)]を選択すると、フォントファイルが壊れていないかチェックできます。
? [シフト]キーを押しながら起動すると「セーフモード」になり、ユーザ選択画面右上に「セーフブート」と赤字で表示されます。このときフォントキャッシュも削除され、再度作成されます。
アドビCSなどJavaの必要なソフトが起動しない?
現在、アップルはOS XにJavaを同梱していませんが、「Java for OS X 2015−001」というファイルを配布しています。動作条件にJavaが必要なソフトを使うなら、アップルのサポートページからこのファイルをインストールしておきましょう。
これはJavaの少し古いバージョン「Java SE 6」(現在の最新バージョンはJava SE 8)の実行環境で、これより新しいバージョンは、開発元であるオラクル社から直接入手することになります。原則として、OS X 10・9以降ではJava SE 7以降のみ利用可能なのですが、前述したようなソフトのうち、古いJava SE 6に合わせて作ったソフトのために、アップルが特別に配布しているのです。ただし、動作するのはエルキャピタンまで。次のOS Xからは動作しないとのことですので、ソフト側のバージョンアップも検討しておきましょう。
? アップルのサポートページから「Java for OS X 2015-001」を検索し、ダウンロードしましょう。
? ダウンロードした「javaforosx.dmg」ファイルをダブルクリックし、ディスクイメージをマウントします。中にインストーラがあるので起動します。
? インストーラを使ってJava SE 6をインストールしましょう。次のOS Xからは動作しないので、注意が必要です。
サファリのショートカットキーが変わった!?
エルキャピタンでは、新機能が追加される一方で、いくつかのソフトでショートカットが変わっていたり、その機能自体が廃止されたりしています。サファリのショートカットキーもその1つで、以前は「お気に入り」バーのブックマークに、上から順に数字を割り振って[コマンド]キー+[数字]キーを押すと、直接WEBサイトに移動できるようになっていました。しかし、エルキャピタンのサファリ9.0では、タブに左から順に数字を割り当てる仕様に変更されています。
慣れたショートカットが変更されると格段に作業効率が落ちてしまいます。幸い、これはサファリの環境設定から設定を解除できます。元に戻した場合も、タブは[コマンド]キー+[シフト]キー+[[]または[]]キーのショートカットで、左右に切り替えることが可能です。
? サファリ8.xまでの感覚でブックマークを開こうと[コマンド]キー+[数字]キーを押すと、数字と同じ順番のタブに移動してしまいます。
? サファリの環境設定で、「タブ]タブを開き、[command+1からcommand+9でタブを切り替える]のチェックを外します。
? [コマンド]キー+[数字]キーで、「お気に入り」バーの9番目まで(フォルダを除く)を直接指定できるようになります。
ゴミ箱に「完全に削除」がなくなった?
エルキャピタンでは、「ゴミ箱を完全に削除する」項目がなくなりました。もともとこれは、ターミナルの「srv」コマンドと同じ効果を持つものだったので、どうしても完全に削除したければ、コマンドラインから実行できます。ただし、これで削除したファイルはバックアップがなければ絶対に復活できないので、むやみに使わないほうがいいでしょう。
代わりに、ファイルをゴミ箱に捨てることなく直接削除する、「すぐに削除」の項目ができました。ゴミ箱を空にするのと効果は同じですが、誰かにゴミ箱の中を覗かれては困る、というようなファイルを削除したいときに便利です。
削除したいファイルを選択して、[オプション]キーを押しながら[ファイル]メニューを開くと[すぐに削除]が現れます。