Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日: 更新日:

本当にお得なiPhoneの買い方は? 通信キャリアの半額免除/残価設定プランを、一括購入やペイディの分割払いと比較してみた

著者: 牧野武文

本当にお得なiPhoneの買い方は? 通信キャリアの半額免除/残価設定プランを、一括購入やペイディの分割払いと比較してみた

写真●黒田彰

円安の影響もあり、日本での販売価格が上昇し続けるiPhone。そんな中、通信キャリア各社が打ち出している“お得な購入プラン”が魅力的に映る。これらは、いわゆる半額免除型や残価設定型のプランだ。

果たして、Apple Storeでも利用できる「ペイディあと払いプランApple専用」とどちらがお得なのだろうか。本記事では、半額免除型であるソフトバンク「新トクするサポート」を例に、支払い総額を計算。そのお得度を比較してみる。

なお、中古価格は推定なので、時期によって変動することはご承知おきいただきたい。あくまで目安の情報である。

iPhoneのもっともお得な買い替えサイクルは、「2年ごとに新機種購入」

iPhoneは何年ごとに機種交換するのが一番お得なのか。検証記事「iPhoneの“一番お得”な買い替えサイクルは? 1年ごと? それとも2年、3年ごと? 中古や整備済製品(リファービッシュ)も含めて考察する」は、大変多くの方に読んでいただいた。やはり、「新しいiPhoneは欲しいけど値段がね…」という人が増えているのだと思う。

この記事でお伝えしたのは、次の2点だ。
・2年周期と3年周期では、実質的な負担額はほとんど変わらない。年間1000円+α程度。
・1年落ちの中古を2年周期で機種交換しても、新機種を2年周期で買い替えるのと比べて年間2000円程度しか節約できない。

その結果から、「2年周期で新機種に交換していく買い方」がもっともバランスが取れているのではないか、と提案した。

「ペイディあと払いプランApple専用」を利用し、下取りをしながら「1年ごと」、「2年ごと」、「3年ごと」に新モデルのiPhoneに買い替えていった場合の10年間の支払い総額の試算。2年周期と3年周期では、支払い総額に大きな差がつかなかった。年間1000円程度の違いしかない。

しかし、この記事は“完璧”とは言えなかった。なぜなら、街を歩いていると「今だけiPhoneが1円」「今だけ実質24円」など、駄菓子屋価格でiPhoneが販売されていることがあるからだ。もちろん、旧モデル限定、回線契約必須、要返却などさまざまな条件があり、そう上手い話はないのだが、それでも実質負担額を計算すると圧倒的に安い。

ただし、旧モデルの在庫処分を主目的としているため、常時この方法で販売されているわけではない。もし、いいタイミングで遭遇した場合は検討する価値はあると思う。

果たして、半額免除/残価設定プランは本当にお得なのか? ソフトバンクの「新トクするサポート」を例に検証する

もうひとつが、各種キャリアが常時行っている「半額免除」あるいは「残価設定」のプラン。一般的には、48回分割払いで25カ月目に新機種に交換すると、残りの残債が消えるというものだ。

つまり、半額でiPhoneを購入できる。さらに、楽天やソフトバンクが力を入れている“経済圏”を利用すればするほど、割引されたりポイントが付与されたりしてお得度が増す仕組みだ。

そこで、本記事では「ペイディあと払いプラン Apple専用」の実質負担額と、ソフトバンクの「新トクするサポート」プランを比較して、どちらがどのくらいお得になるのかを検証してみたい。

ソフトバンクが提供する「新トクするサポート」プラン。画像●ソフトバンク

ちなみに、各社のこういったプロブラムは、実質的にリースに近い仕組みだ。25カ月目以降、新機種を購入すれば残債がクリアされるが、そのときに使っていたiPhoneを返却しなければならない。キャリア側は返却されたiPhoneを中古として再販することで、大幅な割引が可能となる。

各社の半額免除/残価設定プラン

楽天モバイル「買い替え超トクプログラム:48回払い、25カ月目以降に返却で最大24回分の支払い不要。
ドコモ「いつでもカエドキプログラム」:1〜46カ月目に返却可能、12カ月での返却も可能なプラス版あり。
au「スマホトクするプログラム」:13〜25カ月目に返却で残りの支払い不要。
ソフトバンク「新トクするサポート:25カ月目~48カ月目に返却で残りの支払い不要。
Apple「ペイディあと払いプランApple専用」:25カ月目に新機種購入特典あり。

“iPhone本体の支払い価格”だけで比較。Appleで一括購入とソフトバンクの「新トクサポート」、どっちが安い?

iPhone買取価格推移」の中古価格を参考に、「一括購入+下取り」とソフトバンク「新トクするサポート」のどちらがどのくらいお得なのかを試算していこう。

Appleの公式価格とキャリアの販売価格が異なるのが少々やっかいだ。iPhone 16(128G)は、Apple公式価格では12万4800円。一方、ソフトバンクの一括購入では14万5440円と、2万円以上も高い。

そこで、まずはiPhone本体の支払い価格だけを比較してみた。1年ごとに買い換えることを前提とした計算だ。
(1)Appleで一括購入+Apple Trade Inで下取り。
(2)ソフトバンクで「新トクするサポートプレミアム」で購入。

試算には、2年後の中古価格が明らかなiPhone 14(128GB)のデータを利用した。また(2)では、ソフトバンクがiPhone 14の発売時に設定していた価格14万400円を用いる。

すると、(1)では毎年の負担額が4万2467円。(2)では3万5100円となり、「新トクするサポート」のほうがかなりお得に見える結果となった。

iPhoneを1年ごとに買い替える場合。「新トクするサポート」はオプション料金が足枷に

しかし、ここからが問題だ。まず、「新トクするサポート」で1年ごとに機種交換するには、「プレミアム」プランに加入し、1万9800円の「早トクオプション」を利用する必要がある。また、毎月1682円の「あんしん保証パック」(AppleCareに相当)への加入も必須だ。

この料金を加味して、1年ごとに機種交換する場合のグラフをつくってみた。すると、年に2万5000円ほどの差がでた。つまり毎年新機種を使いたいという人は、iPhoneはAppleで一括購入し、その都度旧モデルをApple Trade Inなどで売却していくほうが圧倒的にお得ということになる。

毎年一括購入+下取りをした場合と、「新トクするサポート」の「早トクオプション」を使って、1年ごとに新機種にした場合の総支払額。かなりの差となるため、毎年iPhoneを新しくしたいという人は一括購入+下取りを利用するのがおすすめだ。

「ペイディあと払い」と「新トクするサポート」を比較。まずは仕組みを理解しよう

では、2年ごとに機種を交換する場合はどうだろうか。

ここで考えなければならないのは、回線契約の問題だ。現在、キャリアで販売されている端末もSIMフリーなので、「新トクするサポート」を利用してiPhoneを購入し、回線契約はMVNOで、という選択肢も用意されている。

しかし、MVNOはオンライン申し込みが基本だ。iPhoneをキャリアで購入するなら、回線契約もキャリアにしたほうが面倒がないと考える方もいるだろう。

そこで、まずは次のケースを比較した。
(1)ペイディあと払いプランApple専用+Apple Trade In下取り+MVNO回線契約
(2)ソフトバンク「新トクするサポート」+ソフトバンク回線契約

「ペイディあと払い」は、iPhoneを36回払いで購入するが、25カ月目に新機種に交換できる。残債はこの時点でクリアされるが、単純に残債が消えるというわけではない。

新機種に交換すると手持ちのiPhoneの下取り査定が行われ、その下取り金額で残債分の支払いが行われる。往々にして下取り価格は残債分よりも高いため、残債分をクリアしても、まだ余る。この余った分が新機種の代金から割引され、割引後の機種代金を36分割したものが、次回以降の支払い金額となるわけだ。

新トクするサポートは、2年ごとに機種交換をすれば機種代金は半分の負担になる。わかりやすい仕組みだ。
一方のペイディあと払い。3分2の機種代金を負担すると下取り査定が行われ、残りの代金の清算と次の機種の割引にあてられる。

iPhoneを2年ごとに買い替える場合。キャリアの通信量はやはり高い…

ソフトバンクの通信プラン「ミニフィットPLAN+」は基本料金が980円で、3GBまでのデータ利用料が4000円。合計で月4980円+通話料での運用となる。

MVNOでは、たとえばau系の「povo」は基本料金が0円で、30日間3GBまで利用できるトッピングが990円で購入可能だ。つまり、月990円+通話料で運用できる。

iPhone本体にかかる費用と毎月の通信料の合計を比較してみると、やはりキャリアの通信料は高いことが影響して、差は大きく開いた。2年ごとに新機種にする場合では、年に4万円前後もの差が出る。

2年周期で機種交換した場合の「ペイディあと払い」(+MVNO月額990円)と、「新トクするサポート」(+月額4980円)の総合支払額。大きな差がついた。キャリアは通信料金の高さがネックだ。

MVNOを利用すれば「新トクするサポート」もかなりお手頃に。「ペイディあと払い」とほぼイーブン

では、新トクするサポートでiPhoneを購入し、MVNOの通信プランを契約するとどうなるだろうか。
(1)Apple公式ペイディあと払い+Apple Trade In下取り+MVNO回線契約
(2)ソフトバンク「新トクするサポート」+MVNO回線契約

「ペイディあと払い」と「新トクするサポート」で、2年ごとに新機種に交換をした場合。回線契約はどちらもMVNOで同じ金額だ。すると、非常に僅差となった

この試算は過去の下取り価格に基づいているため、実際の下取り価格によって変動する点には注意したい。ただ、違いは僅差であり、どちらがお得とも言い難い結果となった。

つまり、キャリアでiPhoneを購入するのであれば、回線契約はせずにMVNOを使うのが“正解”のようだ。

iPhoneをお得に購入する3つの選択肢。“得”と“楽”を踏まえて検討しよう

結論として、おすすめしたいのは次のような戦略である。

(1)Apple Store/Apple Storeオンラインでペイディあと払いによりiPhoneを購入し、MVNOと回線契約する
(2)キャリアの半額免除/残価設定プランでiPhoneを購入し、MVNOと回線契約する
(3)キャリアの半額免除/残価設定プランでiPhoneを購入し、回線も契約。そのキャリア経済圏の特典を余すところなく利用する

特にイチオシなのは(1)。ただし、回線に関しては、自分で適切なMVNOを探す必要がある。

(2)もいい。各社、Appleのペイディあと払いを研究して、対抗できるだけのお得感を出してきている。また、キャリアで購入すると店舗でサポートを受けられるのも大きい。

支払い総額は高いが、(3)も決して悪くない。なぜなら、キャリアと回線契約することでさまざまな特典を利用できるからだ。ソフトバンクの場合、自宅のネット回線もソフトバンクにすると「おうち割」といった割引も受けられる。

また、各キャリアが運営するコード決済(PayPay、楽天ペイなど)のポイント還元率の優遇は大きい。キャリアの経済圏にどっぷり浸るのもひとつの方法だろう。家族全員で契約すると、お得度はより上がる。

「ペイディあと払い」と「新トクするサポート」のメリット/デメリット

ペイディあと払いと新トクするサポートのメリットとデメリット。Apple Storeが近くにない場合、キャリアの店舗でサポートを受けられるメリットは大きい。

最新プランなら「新トクするサポート」が圧倒的にお得。MVNOの動向にも注目したい

最新の「新トクするサポート」は、24カ月までの支払額を小さくし、25カ月以降に多く払う仕組みを採用した。iPhone 16の場合、機種代金は12万9792円だが、2年間は月額652円。つまり総額1万5648円を支払った段階で機種変更ができる。全体のわずか12%程度の支払いで済むのだ。2年ごとに機種変更すると決めているなら、もっとも支払い総額が少なくなるだろう。

ただし、2年後もソフトバンクが同じようなプランを提供しているとは限らない。またソフトバンク以外で新機種を買おうとすると、ソフトバンクに対し、48カ月間かけて機種代金の全額を支払うことになる。ここには注意したい。

先述のように、キャリアのiPhoneの販売価格は、Appleよりも2万円以上高い。分割払いの期間中にキャリアから離脱すると、その高い機種代を払う必要がある。つまり、キャリアは長く使い続けてくれる人にはたくさんの特典を与え、離脱する人には高い費用が発生する設計をしているのだ。

なお、ソフトバンク系のMVNO「ワイモバイル」でも「新トクするサポート」の提供が始まった。これであれば、iPhoneの購入と回線契約がまとめて行えて便利だ。しかも、ソフトバンク経済圏のさまざまな特典の一部を利用できる。キャリアで購入+キャリア傘下のMVNOで回線契約という方法が今後、有望になってくるかもしれない。

また、ほかのMVNOが「半額免除/残価設定プラン」を提供する可能性にも注目だ。

おすすめの記事

著者プロフィール

牧野武文

牧野武文

フリーライター/ITジャーナリスト。ITビジネスやテクノロジーについて、消費者や生活者の視点からやさしく解説することに定評がある。IT関連書を中心に「玩具」「ゲーム」「文学」など、さまざまなジャンルの書籍を幅広く執筆。

この著者の記事一覧