Appleが、教育市場において存在感を増している。2026年5月13日〜15日に東京ビッグサイトで開催された教育総合展「EDIX東京2026」では、初となる自社ブースを構え、iPadやMacを使った体験型セッションを通じて教育現場への活用をアピールした。
かねてよりAppleは、教育関係者向けに手に取りやすい価格でデバイスを販売するほか、「Apple Distinguished School」などのプログラムを通じて、学びそのものの変革を支援してきた。またMacBook Neoなど、教育現場で導入しやすい価格帯のモデルも拡充している。
そうした取り組みの先に見えてくるのは、テクノロジーが学びを“効率化”するだけでなく、子どもたちの創造性や主体性を引き出す存在へと変わりつつあるという姿だ。
その象徴とも言えるのが、東京都の聖徳学園中学・高等学校である。同校では2014年から2015年にかけてiPadを導入し、現在ではすべての教職員がApple Teacher資格を取得するなど、学校全体でAppleデバイスを活用した教育を推進している。

「インプット中心」から「アウトプット中心」へ。iPadが支えた聖徳学園の学びの転換
聖徳学園は、2014年に教員向けにiPadを導入。翌2015年には生徒にも展開し、Apple Pencilと組み合わせた「直感的で創造的な学び」の環境を整えている。
従来の学習は、知識を蓄える“インプット型”が中心だった。しかし現在は、アウトプットを前提とした学びへとシフト。「他者や社会に価値を届ける」ことをゴールに据えた教育へと変化している。これは「なぜ勉強するのか」という問いへの明確な回答でもある。

授業では、生徒はiPadやMacBookを駆使し、デジタルノートやプレゼン資料などを自在に作成。これにより「失敗を恐れず挑戦する姿勢」や「人前で伝える力」が自然と育まれているという。

Macが広げる“創造”の領域。聖徳学園・データサイエンス教育の現場
聖徳学園のもうひとつの柱が、データサイエンス教育だ。データサイエンスコースではMacBookとiPadを併用し、探究活動の深化とアウトプットの高度化を実現。生徒たちは、プログラミング、データ分析、プレゼンテーションなどを横断的に学び、学会発表やコンテストにも挑戦する。

同校が重視しているのは、「正解のない問いに挑む」姿勢の育成だ。知識の有無にとらわれるのではなく、未知の課題にも主体的に向き合い、自分なりの考えを組み立てていく。その思考を他者に伝え、社会へと接続していく力こそが、これからの学びの核になると位置づけられている。
こうした教育方針は、カリキュラム設計にも反映されている。文理融合型の学びを通じて、歴史や社会的テーマとデータ分析を結びつけるなど、現実社会の課題に即した探究活動が展開されている点も、聖徳学園の特徴だ。
取材では、実際の授業の見学のほか、生徒たちがAppleデバイスを活用して制作した多彩なアウトプットを披露していただいた。
生徒たちのアウトプットの例
聖徳学園中学校 3年生の石川蓮さんは、小学校の授業でiPad版「GarageBand」と出会い、楽曲制作の楽しさに目覚めた。以降、自主的に制作するようになり、やがて好きなアーティストの楽曲を参考にするなど、自分なりの表現へと発展させていったという。

高校2年生の武内龍義さんと豊山瑛太さんは、動画研究部に所属。「Premiere Pro」や「After Effects」を駆使し、映像作品の制作に熱中している。両者ともに、パナソニック・グループが主催する映像制作コンテストKWMで賞を獲得するなど、そのクオリティは非常に高い。

中学3年生の谷芹香さんは、得意のイラストを活かし「Keynote」でアニメーションを制作。自身の辛い花粉症体験をテーマとした、思わず笑みがこぼれるコミカルな作品を披露してくれた。

こうした創作活動は部活動や授業の枠を越え、「日常」として根付いている。
教えるから“伴走する”へ。教師の役割も変えたAppleデバイスとテクノロジー
Appleデバイスの導入は、聖徳学園の生徒だけでなく教師にも変化をもたらしている。たとえば、教材がデジタルで配布できるようになったことで、フルカラー、そして動画や画像も含めたリッチな情報をシェアすることが可能となった。
メインで使用されるツールは「MetaMoJi ClassRoom」。しかし、完全にデジタル化しているわけではない。
実際の教室では、iPadでノートを取る生徒と紙のノートを使う生徒が混在しており、その選択は教師ではなく生徒一人ひとりに委ねられている。
こうした柔軟な運用により、生徒は「どの方法が自分にとって理解しやすいか」を考えながら学ぶことになる。デジタルか紙かという手段の違いそのものではなく、自分に最適な学び方を選び取る力の育成が重視されている点が特徴的だ。

理解の個人差に応じた学習や、自分のペースでの復習も実現した。それにより、教師は「教える人」から「伴走する存在」へと役割を変えつつある。

意欲とクリエイティビティが先か、MacとiPadが先か
もとより学習意欲の高い生徒たちが集まる聖徳学園中学・高等学校において、MacとiPadの導入が学習の質を高め、クリエイティビティの発揮に活用されている、ということはいうまでもない。
注目したいのは、その逆の側面だ。つまり、日常的にMacやiPadに触れることが、新たな「やりたいこと」との出会いになるという点である。
やりたいことがあるからMacやiPadを使う、それはもちろんすばらしい。しかし取材を通じて、デバイスの存在が生徒の好奇心や興味を刺激し、新たな挑戦を引き出しているとも感じた。
学びたいという意志を持った生徒たちが、テクノロジーによってより自由に羽ばたく。そして同時に、テクノロジーとの出会いが、新たな可能性を生み出していく。聖徳学園中学・高等学校の現場には、そうした循環が芽生えていた。
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著者プロフィール
関口大起
『Mac Fan』副編集長。腕時計の卸売営業や電子コミック制作のお仕事を経て、雑誌編集の世界にやってきました。好きなApple Storeは丸の内。Xアカウント:@t_sekiguchi_








