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iPhoneの“一番お得”な買い替えサイクルは? 1年ごと? それとも2年、3年ごと? 中古や整備済製品(リファービッシュ)も含めて考察する

著者: 牧野武文

iPhoneの“一番お得”な買い替えサイクルは? 1年ごと? それとも2年、3年ごと? 中古や整備済製品(リファービッシュ)も含めて考察する

円安の影響でAppleデバイスの日本価格が上がり続けている。iPhoneを2年ごとに買い替えていたのに、3年、4年使うことにした人も多いのではないだろうか。しかし、買い替え周期が延びれば下取り価格も下がっていく。いったいiPhoneは何年周期で買うのがお得なのか検証してみた。

本来は値下がりしているiPhone。しかし円安の影響で日本では…。

私たちAppleユーザの共通の悩みは、Apple製品が高くなったことだ。最新のiPhone 16は12万4800円から。10万円越えとなると、さすがにためらってしまう方も多いだろう。すべては円安のせいだ。

2014年発売のiPhone 6(128GB)は、米国価格で849ドル。一方、今年(2024年)発売されたiPhone 16(128GB)は799ドルと、Appleは企業努力をしている。そんなiPhone 6の日本での価格は、9万6000円程度(購入先のキャリアによって多少異なる)だった。しかし、iPhone 16は12万4800円(Apple Storeの販売価格)と30%も上がっている。

こうなると、「SEを買う」「中古を買う」「同じiPhoneを長く使いづける」とさまざまな対策を考える方もいらっしゃるだろう。しかし、どの対策でも何かを我慢しなければならない。そこで、なんとかiPhoneを安く購入する戦略はないものかを考えてみよう、というのがこの記事の趣旨だ。

重要なのは下取りの有効活用。その価格推移から、最適な買い替え戦略を探っていこう

iPhoneをできるだけ安く手に入れるにあたって、重要なのが下取りだ。10万円で購入したiPhoneを2年後に6万円で下取り売却できれば、実質的な負担額は4万円になる。自動車販売でよく見られる残価設定ローンのような状況をつくり出すことで、実質負担額を減らすのだ。iPhoneの場合、購入価格を下げるのはかなり難しいので、下取り価格をどれだけ高くできるかが勝負になる。

そこで、iPhoneの下取り価格をまとめている「iPhone買取価格推移」の数値を使い、最適な買い替え戦略を探っていこうと思う。ただし、あくまで多くの仮定に基づく計算なので、結果は保証できないということをご承知おきいただきたい。

参考にした「iPhone買取価格推移」は、各iPhoneの下取り価格の平均値を表示してくれるありがたいサイト。図は発売から3年が経つiPhone 13の直近2年間の下取り価格の推移。一般的に発売後2年までは徐々に下がっていくが、3年以降になると急激に下がるようだ。

下取り価格はさまざまな条件によって大きく変わる。買取業者によっても変わる。時期によっても変わる。また、Apple公式の下取り「Apple Trade In」の価格と、民間の下取り業者の価格は異なることも多い。

この記事の結果だけを見て、「この方法がベスト」と鵜呑みにするのではなく、買い替えタイミング時期状況に合わせて、最適な買い方を探る参考にしていただければ幸いだ。

もっともお得なiPhoneの買い替えサイクルは、1年? 2年? それとも3年?

例年、iPhoneの新モデルが発表される9月を軸に、ここ3年のiPhone 13の下取り価格を調べた。iPhone 13は2021年の発売から」3年が経過しており、その間の中古価格の推移が追えるからだ。iPhoneはどのモデルでもiPhone 13の中古価格と同様に推移していくという仮定で、最適戦略を探っていく。

まず、検証したいのが「1年ごとに買い替え」「2年ごとに買い替え」「3年ごとに買い替え」のどれが実質負担が小さくなるかという問題だ。直感的には、大事に長く使う3年周期がもっとも実質負担が少ないように思える。

しかし、累積金額を計算してみると、1年周期が高負担になるのは当然としても、2年周期と3年周期ではあまり大きな違いがない。これはよく考えればわかることだ。発売から3年も経てば下取り価格は下がっていく。そのため、購入時の負担を減らす「新機種代金ー下取り価格」の差が大きくなってしまうのだ。

iPhoneを1年、2年、3年の周期で買い替え、それを9年間続けた場合の実質負担額の差。購入、下取り価格はiPhone 13を基準にしている。2年周期と3年周期で負担額はあまり変わらない。長く使うよりも2年で買い替えていく戦略が正解のようだ。

自分が中古iPhoneを購入する立場になって考えても納得できる。2年落ちであれば、価格によっては買ってもいいと思う人は多いはずだ。つまり、需要があるため買取価格は高くなる。

一方3年落ちとなると、それをさらに3年使うと6年落ちになってしまう。しかも高確率でバッテリが劣化しており、バッテリ交換のコストも考えなくてはならない。3年落ちの中古iPhoneは、業者の方で「バッテリ交換済み」でなければあまりおすすめできない。つまり、需要が低いから下取り価格は下がる。一般に、下取り価格は発売後2年以内はゆっくり下がっていくが、発売後3年を過ぎると急激に下がるようだ。

頻繁に買い替えても環境への悪影響は限りなく少ない! そう、iPhoneならね

iPhoneをできるだけ長く、大切に使うことは素晴らしいことだ。しかし、実質負担のことを考えると2年周期で買い替えて行ったほうが、財布に優しく、最新のiPhoneを使い続けることができる。

「頻繁にiPhoneを買い替えるのは環境に悪影響だ」と考える方もいるだろう。しかし、Appleは「2030年までに全製品のカーボンニュートラルを実現する」と宣言している。この宣言は、部品を提供するサプライヤーの製造工程でもCO2を排出せず、輸送で排出されるCO2も減らしたり、オフセットしたりしてゼロにするという内容だ。さらに、私たちユーザが使う電力によって排出されるCO2に関しても、再生可能エネルギー発電などに投資してオフセットするという徹底ぶりである。

Apple 2030の特設サイトでは、毎年、全体の進捗状況、各製品の進捗状況の報告書が読めるにようになっている。このApple 2030が実現すると、極端なことをいえば、毎日iPhoneを新機種に変えても環境にインパクトを与えることはない。

Apple 2030の特設サイト。環境へのさまざまな取り組みがまとめられている。

これはAppleの素晴らしい挑戦だと思う。私たちは、今までどおりの利便性を享受しながら、これ以上、地球の資源を簒奪せずにすむのだ。従来のエコ意識である「大切に長く使って地球資源を節約する」という考え方からも解放される。1年ごと、2年ごとという短期間で機種交換をしても、環境に悪影響を与えない。つまり、短いサイクルで機種交換をしても問題ない。

そして、iPhoneの買い替えが活発になるとAppleの売上は増え、企業として成長する。結果、私たちは最先端の機能とテクノロジーによる利便性を享受できる。我慢して地球を守るのではなく、我慢せずに地球を守れるのだ。

中古iPhoneに買い替える場合。最新モデルを買うより、どれくらいお得?

さまざまな条件を考えると、iPhoneは2年周期で機種交換していくのがベストであり、Appleはそうなるように価格やリセールバリューなどを設計しているのではないかと思う。

もうひとつ、負担を減らす方法として考えられるのが、中古から中古へ買い替えていく方法だ。新モデルを買わず、1年落ちの中古iPhoneを購入し、2年ほど経ったら、再び1年落ちの中古iPhoneに買い替える。

これも2年周期で、新機種のiPhoneと1年落ちのiPhoneでどちらの負担が大きくなるか検証してみよう。いずれも先ほどのiPhone 13の下取り価格を利用し、中古購入価格は下取り価格と同じだと仮定する。

これはさすがに、中古で回していくほうがかなり安くなる。中古の場合、時期によっては格安になっている掘り出し物と出会うこともあり、さらに実質負担を減らすことも可能だ。ただし、その差は10年で約2万円、年間で2000円程度。逆にいえば、年間2000円多く出すことで新モデルのiPhoneが使えることになる。その事実を知ると、やはり新モデルで…と思う人が多いはずだ。

新モデルのiPhoneと1年落ち中古モデルのiPhoneを、2年周期で変えると仮定し、9年間で生まれる差額を示すグラフ。購入および売却金額はiPhone 13を基準にした。中古の方が負担は小さくなる。しかし、その差は年間で2000円程度。意外に節約にならない。

Appleの認定整備済製品もアリ! ただし在庫は奪い合い

また、Appleの認定整備済製品を購入するという方法もある。認定整備済製品とは、保証修理などで回収したiPhoneを、Appleが検査したうえで新品同様にメンテナンスした製品だ。指が触れる外装部品は新品が使われるほか、新品購入時と同じく1年間のAppleの公式保証がつく。新製品の発売後、半年後くらいから認定整備済製品の販売がApple Storeでスタートする。ただ数量は多くないため、すぐに完売してしまうことがほとんどだ。

2024年11月現在では、iPhone 13 Pro Maxが豊富に揃っていた。

最近は、BackMarketなどに代表されるリファービッシュ業者も存在するので、そこから購入する方法もある。ただしこちらは、Appleではない業者が整備と検査、洗浄を行った状態の、厳密には中古品だ。

いずれも、常に在庫があるわけではないので、頻繁なチェックが必要になる。それが煩わしいと感じる人には向かない方法だ。一方、ショップを巡って、良品に出会うことが楽しいと感じるなら向いているだろう。

購入時にはPaidyの活用がおすすめ。Apple専用のあと払いプランがあるぞ!

なお、一括購入の負担が大きいという方は、Paidyの「あと払いプランApple専用」を利用する手もある。Paidyは分割ローンと似ているが、世界中で利用者が増えているBNPL(Buy Now Pay Later)のひとつだ。分割ローンとは異なり審査がないため、誰でも確実に利用できる。また、分割ローンやクレジットカードの場合、うっかりであっても支払い事故を起こすと、一定期間ブラックリストに掲載され、他社のローン審査、カード審査に落ちることになる。

審査を待つ必要がないので、Apple Storeの店舗で購入する際も買い物体験は非常にスムース。

しかし、BNPLはそのような仕組みがないため、万が一、支払い事故を起こしても信用情報に影響しないという利点もある。また、通常の分割ローンのような分割手数料もかからない。そのため、学生や若い世代に多く使われている。

「ペイディあと払いプランApple専用」を利用するには、18歳以上で、日本の携帯電話番号を持ち、日本在住で、日本の運転免許証あるいはマイナンバーカードを持っていることが条件になる。支払いは銀行口座引き落としであれば無料、コンビニ払いの場合は1回ごとに390円の手数料が必要だ。

なお、iPhoneの「ペイディあと払いプランApple専用」は原則36カ月払い。ただし、24カ月目、25カ月目に新モデルに乗り換えることが可能だ。このとき手元のiPhoneを下取りに出すと、残りの12カ月分の支払いに充当される。下取り額が余る場合は新モデルの代金から減額され、残りを36回払いすることとなる。このような仕組みのため、総支払額は「一括払い、2年周期」と原則的に同じだ。

Paidyのメリット。手数料分おトクで、Appleとの連係もバッチリ!

Paidyには、クレジットカードの分割払いやそのほかの分割ローンを利用するより手数料分安いというメリットがある。また、AppleとPaidyはうまく連係が取れているため、購入プロセスがスムースになるのも利点だ。

AppleのWebサイトから下取り査定をすると自動的に支払額が算出され、そのまま新しいiPhoneを購入できる。新しいiPhoneにデータ移行を済ませると、古いiPhoneの返送キットが送られてくる。あとは梱包して返送するだけ。もっとも手間のかからない購入方法といえるだろう。

一度Paidyを設定しておけば、MacBookなどのほかのAppleデバイスやアクセサリ類もあと払い購入できるため、まとまったお金を用意しなくてもよくなる。筆者はPaidyを使い始めてから、Appleデバイスを購入するというより、Appleデバイスのサブスクリプションサービスに加入しているような感覚になってきた。

しばらくは以前のような円高に戻る可能性は少なく、Appleデバイスが割高に感じる時期が長く続きそうだ。本記事を参考にしながら購入方法をいろいろと比較し、ベストの買い方を見つけていただきたい。

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著者プロフィール

牧野武文

牧野武文

フリーライター/ITジャーナリスト。ITビジネスやテクノロジーについて、消費者や生活者の視点からやさしく解説することに定評がある。IT関連書を中心に「玩具」「ゲーム」「文学」など、さまざまなジャンルの書籍を幅広く執筆。

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