Appleデバイスには、公式には語られていない秘密機能が搭載されている。たとえば、以前のiPhoneにはFMラジオの受信機能が載っていた。そして現行のMacBookには、「加速度センサ」の搭載が発見されている。しかも、MacBookで心拍数を測定する機能まであるようだ。
しかしなぜ? iPhoneやApple Watchのような小型のデバイスなら納得がいくが、MacBookに搭載する必要はあるのだろうか。謎が謎を呼んでいる。
電子機器に隠される秘密機能。MacBookの中には、まさかの「加速度センサ」が
Appleに限らず、電子機器には内蔵するものの公にされない機能がある。例えとしてわかりやすいのは、携帯ミニゲーム機。100種類内蔵が2000円、500種類内蔵が5000円というような場合だ。メーカーは、ROMを2つのラインで2種類製造するより、500種類だけを製造して、安いほうのメニューソフトを100種類に差し替えて出荷する。そのほうが製造コストが抑えられるからだ。しかしそうなると、100種類のほうを買って、メニューソフトを改造して500種類のゲームを遊ぶ強者が現れる。
家電製品でも同様の例がある。廉価版と高級版で基本機能は同じだが、対応できる調理法が異なる炊飯器などだ。これも高級版1種類を製造し、廉価版のメニューソフトを差し替えて「おかゆ」や「スポンジケーキ」といったメニュー項目を削ってしまう。
Appleも例外ではない。最近、MacBookに「加速度センサ」が内蔵されていることが有志の手によって発見された。これを利用すると、MacBookの現在のXYZ3軸の姿勢や動きが把握できる。
MacBookに内蔵されているセンサ類は、AppleによってAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)経由でアクセスできるはずだ。しかし、「加速度センサ」へのAPIは用意されておらず、Appleの開発者向けドキュメントにもその記述はない。
過去にはiPhoneにも「FMラジオの受信機能」が隠されていた
なぜ、MacBookに「加速度センサ」が内蔵されているのか、どうやってアクセスするのかはのちほどご紹介する。
このような隠し機能は、iPhoneにもかつて存在した。実は、iPhone 7まではFMラジオを受信する機能が存在していたのだ。ただし、FMラジオ用アンテナは非実装で、Appleもアンプソフトなどを開発しなかったため、実際にFMラジオを聴くことはできなかった。
では、なぜFMラジオを受信する機能を搭載していたのか。それは、iPhone 7以前が採用していたWi-Fi、Bluetoothなどに対応する通信チップが、FMラジオの受信機能も内蔵していたからだ。
ちなみにこの事実は、FCC(連邦通信委員会)がAppleに対し、FMラジオ機能を有効にするように要望を出したことで明らかになった。要望を出したのは2017年9月28日。この年、大型ハリケーンが次々と米国を襲い、通信機能が甚大な被害を受け、被災者が情報的孤立をするという問題が起きた。このような災害時にはラジオが有効であることから、FCCがiPhoneでもラジオが使えるように要望したわけだ。
この働きかけに、NBC(全米放送協会)も、災害時にはラジオが有効と同意する声明を出した。
iPhoneで利用できる、緊急時の便利機能。使い方を覚えておこう
しかしAppleは、iPhoneでラジオ受信ができることは想定してなかった。そのため、ラジオ機能をオンにするにはアンテナの内蔵とラジオアプリの開発が必要、として断っている。また、iPhone 8から通信チップが新しくなり、FMラジオ機能は搭載されなくなった。
ちなみに、その代わりとなる緊急通報機能が用意されている。日本で使えるのは以下の3つだ。
1)衛星経由の緊急SOS
携帯電話ネットワークがない場所であっても、衛星を使って110番、119番の通報ができる。家族などにはiMessage、SMSで連絡を取ることも可能だ。
「設定」アプリの[緊急SOS]には[デモを試す]が用意され、実際に緊急時の操作方法を体験できる。屋外で行う必要があるが、いざというときに慌てないために、一度試しておくことをおすすめする。
【リンク】「衛星経由の緊急SOSの使い方」は別記事でチェック!

2)JAPANローミング
2026年4月からは、JAPANローミングの仕組みが始まる。自分のキャリアがトラブル等で不通になっても、ほかのキャリアを使って、緊急通報や緊急速報を受信できる仕組みだ。
3)00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)
大規模災害時には、既存の公衆Wi-Fiサービスが「00000JAPAN」という名称で開放される。パスワードなしで誰でも利用できるというものだ。
このように、iPhoneにFMラジオ機能がなくても、災害時に情報を取ったり、緊急通報したりできる体制は整いつつある。
MacBookの隠された「加速度センサ」。「ターミナル」からアクセスできる
さて、話をMacBookの「加速度センサ」に戻そう。この情報は、GitHubのapple-silicon-accelerometerで詳しく紹介されている。
実際に試したい人は、ターミナルを起動して以下のコマンドを入力してみてほしい。
git clone https://github.com/olvvier/apple-silicon-accelerometer
cd apple-silicon-accelerometer
python3 -m venv .venv && source .venv/bin/activate
pip install -e .[demo]
sudo .venv/bin/python3 motion_live.py
入力するとMacBookのパスワードが求められるので、自分のパスワードを入力。すると、下図のような画面が表示されるはずだ。

「Axes X/Y/Z」というのが「加速度センサ」だ。試しにMacBookを手に持って、落とさないように注意しながら、上下左右に振ったり、回転させたりしてみていただきたい。グラフの形が変わるはずだ。
まさかの心拍測定にも対応。MacBookに手首を密着させるだけ
このプログラムでは、MacBookで心拍数を測定することまで可能だ。図の中心あたりにある、「Hearbeat BCG」という欄に心拍数が表示される。
心拍数を測定するには、手首の内側部分をトラックパッドの横あたりに接触させてみよう。そのままにしておくと、10秒ほどで心拍数が表示されるはずだ。
ちなみに、これは心拍数を測る目的の機能ではなく、本体への振動を読み取っている。当然、心拍数をこの方法で測っても医学的な意味はないので、正確な心拍数を知りたいならApple Watchを使おう。
なぜMacBookに「加速度センサ」が? 故障時の妥当性を図るためと噂
ところで、なぜMacBookに動きを把握する「加速度センサ」が搭載されているのだろうか。Appleは、もちろん何もコメントしていない。しかし、ネットではある噂が囁かれている。
買ってまだ数ヵ月しか経っていないMacBookが突然起動しなくなった。あなたはすぐにApple Storeに駆け込むだろう。そして、MacBookが使えない不満をぶつけるように、こう言う。「当然、保証修理してもらえますよね?」。
スタッフは冷静にこう尋ねる。「落下させたりということはありませんか?」。もちろん「そんなことあるわけないじゃないですか。少なくとも僕の記憶にはありません」と答えることだろう。
すると、スタッフは専用のiPhoneを接続して何かを調べ始める。「記録によりますと、◯月×日午後△時頃、1.5mの高さから落下していますね。ご記憶にありませんか? そのため有償修理となります」。
…というふうに使われるのではないか、ともっぱらの噂だ。Apple Storeでは、正直に話すことを心がけよう。

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著者プロフィール
牧野武文
フリーライター/ITジャーナリスト。ITビジネスやテクノロジーについて、消費者や生活者の視点からやさしく解説することに定評がある。IT関連書を中心に「玩具」「ゲーム」「文学」など、さまざまなジャンルの書籍を幅広く執筆。







