目次
- 折りたたみiPhoneのリークが加熱中。ただしリークはリーク。真実かはわからない
- ユーザが求めるのは「折り広げてミニタブレットになるiPhone」。果たして実現するか?
- 折りたたみiPhoneを作るため? Appleは200件以上の関連特許を申請している
- 折るのではなく、巻く。ディスプレイに負担を与えないヒンジ構造の特許
- ヒンジ内の三日月型スロットが巧妙。折りたたみiPhoneのしなやかさに貢献する?
- 折りたたみiPhoneの実現には必須。極薄、柔軟で曲げられるフレキシブルガラス
- Apple Pencilや指での操作を滑らかに。掘った溝には樹脂素材を埋め込み
- 自己修復機能を備えた樹脂素材を採用? ちょっとの傷なら熱や光で元どおりに
折りたたみiPhoneへの期待が高まっている。Appleはこのために、200件を超す特許を出願しているようだ。その中には、巧妙なヒンジ機構や折り曲げに強いフレキシブルガラスの工夫などのほかに、ちょっとした傷がついても自己修復するディスプレイなどもある。
これらの特許が実際に折りたたみiPhoneに使われるかどうかはわからないが、出願内容を見ていくと期待感は非常に高い。画期的な製品が登場しそうだ。
折りたたみiPhoneのリークが加熱中。ただしリークはリーク。真実かはわからない
各種メディアから、折りたたみiPhoneの話題が発信されている。その一部では、すでに「iPhone Fold」という名称が確定しているかのような語られ方だ。
このような情報の発信元には、リーカーと呼ばれる人たちがいる。彼らはAppleのサプライヤー企業など、さまざまな情報源を持つ。たとえば、あるサプライヤー企業にAppleから「折りたたみディスプレイの試作発注があった」という情報を聞きつけ、その仕様などから製品を想像してリークする。
私たちAppleファンは未発表の情報をいち早く知る一方、注意しなければならないのは、それが商品化されるとは限らないということだ。Appleに限らず、どのメーカーも新製品を検討するときは、さまざまなアイデアの製品を試作発注する。そして、実際に使って商品化を検討していく。折りたたみiPhoneに関しても、Appleは今、さまざまなデザインのものを試作発注しているところだろう。
ユーザが求めるのは「折り広げてミニタブレットになるiPhone」。果たして実現するか?
このようなリーク情報を伝える記事では、折りたたみiPhoneが横開き(ブックレット)なのか縦開き(フリップ)なのか、サイズはどうなるのかというところに話が集中しがちだ。
しかし、おそらくAppleは、そのようなことよりも先に、ユーザの利用シーンが想定できるかどうかを先に議論しているだろう。ユーザが使っている姿を想像できなければ、商品として出す意味がない。
多くの読者が同意してくれるだろうと思うが、「折りたたんで小さくなるiPhone」だったらあまり魅力を感じない。しかし、「折り広げてミニタブレットになるiPhone」だったら魅力を感じる。移動中や立っているときはiPhoneとして使い、椅子に座れる環境ではiPad miniとして使える。そんなデバイスであれば、折りたたみiPhoneの利用シーンは多いのではないだろうか。
折りたたみiPhoneを作るため? Appleは200件以上の関連特許を申請している
もうひとつ、確実にAppleが気にしているのが、ディスプレイの折り曲げ箇所に跡がつくことだ。最近の折りたたみデバイスはだいぶよくなってきたが、少し前の機種になると、やはり折り曲げ箇所に跡がついてしまう。ひどいものになると、ディスプレイの折り曲げ箇所のドット表示がおかしくなる。
さらにはディスプレイに微妙な凹凸がついてしまい、正面から見るのであればいいが、斜めから見ると、ディスプレイが歪んでいることがわかる。ましてやAppleの場合、折りたたみiPhoneを開いたときにはApple Pencilが使えることが望ましいのだから、折り曲げ部分の凹凸にペン先が引っかかることになる。このような悪いユーザ体験は、Appleデバイスにはあってはならないことで、Appleはこの問題をクリアできるのかどうか、さまざまな試行錯誤をしているはずだ。
その試行錯誤は特許出願に表れている。米国特許商標庁(USPTO)の公開データベースをAIに調査させたところ、2021年3月から2026年3月までの間に、Appleは200件以上もの折りたたみ関連特許を申請していることがわかった。
その中には、折りたたみを想定したUI(ユーザインターフェイス)に関するものや、タッチセンサなどの構造に関するものも含まれていた。以降は、その中から折り曲げメカニズムに関するものを紹介していこう。その特許技術の内容を見れば、折りたたみiPhoneに折り曲げ跡がつくかつかないか、予想できるかもしれない。
折るのではなく、巻く。ディスプレイに負担を与えないヒンジ構造の特許
まずはヒンジのメカニカルな構造に関する特許「Hinges for Folding Display Devices」(US12164344B2)だ。

重要なことは、紙に折り目をつけるように急角度で曲げてしまえば、ディスプレイは耐えられず破損してしまうという事実である。折り目をつけてはならない重要書類は折るのではなく、巻く感じにするはずだ。これを実現するために、5つの部品を組み合わせてヒンジを構成している。こうすることで、折り曲げ部分が緩やかになり、ディスプレイに負担を与えない。

ヒンジ部品は4つの歯車で連結されている。下図で、右のヒンジ部品が上に動くと、その動きが歯車を通じて伝わり、左のヒンジ部品も同じだけ上に動くことになる。

ヒンジ内の三日月型スロットが巧妙。折りたたみiPhoneのしなやかさに貢献する?
さらに巧妙なのが三日月型スロットだ。ヒンジ部品は三日月型のスロットを持った部品により接続され、ヒンジ部品とはピンで接続されている。
下図で右のヒンジ部品が上に動くと、先ほどの歯車の仕組みにより、同じ分だけ左のヒンジ部品も上に動く。このとき、ただ上に動くだけでなく、三日月型スロットを弧としてみた時の円の中心を回るようにヒンジ部品が動くことになる。これにより、この図では上側にあるディスプレイがしなやかに曲げられるわけだ。

もし、この三日月型スロットがなく、ヒンジ部品が動くだけだったら、ディスプレイの曲がり方は予測がつかない。たとえばちょっとした摩擦で特定の箇所に大きな力がかかり、ディスプレイが破損したり、跡がついてしまったりするだろう。
また、このヒンジには摩擦クラッチが組み込まれている。これは摩擦力を利用してヒンジの開いた角度を保持するためのものだ。両手の指を交互に組み合わせると摩擦で固定される。この原理を利用して、開いた角度を調節。閉じるか、開くかの二択ではなく、適切な角度で開いて止めて、二画面的にも使えるようにする。

折りたたみiPhoneの実現には必須。極薄、柔軟で曲げられるフレキシブルガラス
ディスプレイ側にも工夫がある。「Foldable Cover and Display for an Electronic Device」(US12174671B2)だ。
ガラスというのは、私たちの生活感覚だと、曲げると割れる脆いものに思える。しかし、ガラスを極限まで薄くしていくと、曲げても割れない柔軟性が生まれる。これがフレキシブルガラスだ。
厚みのあるガラスを曲げようとすると、外側は伸び、内側は縮む。すると、ガラス構造にひずみが生じて割れてしまうのだ。ところが、これを薄くすると、外側と内側にかかる力の差が小さくなり、破壊限界に達することなく曲げられるようになる。このような薄く折り曲げられるガラスはUFG(Ultra Thin Flexible Glass)と呼ばれる。
AppleはこのUFGをもう一歩先に進めた。折り曲がる部分にあらかじめ溝を掘っておくのだ。この溝が内側にあるため、さらに折り曲げやすくなる。しかし、この溝は線として目に見えてしまう。その部分にペンを走らせると、ザラザラとした違和感を感じることになる。

Apple Pencilや指での操作を滑らかに。掘った溝には樹脂素材を埋め込み
そこで、この溝に樹脂素材を埋めこむ。この樹脂素材は屈折率がガラスと同じになるように調整されているため、目には1枚のガラスにしか見えない。表面は平面となるので、滑らかにペンを走らせることができる。
しかも、このディスプレイ構造は折り曲げた状態で製造されるのがポイントだ。こうすると、折り曲げた状態が、ガラスに余計な力がかからず安定した状態となる。平面で製造して折りたたむと180度近く曲げられるため、大きな力がかかってしまう。しかし、折り曲げた状態で製造すると、折りたたんでも90度程度、広げても90度程度の曲げになるため、ガラスにかかる力を抑えられるのだ。

自己修復機能を備えた樹脂素材を採用? ちょっとの傷なら熱や光で元どおりに
さらに別の特許「Electronic Device with Flexible Display Cover Layers」(US11991901B2)では、この溝を掘る方式をさらに発展させている。折り曲げ部分のガラスに溝を掘り、折り曲げやすくするところまでは同じ。この溝にガラスと屈折率が同じ樹脂素材を入れる。しかし、樹脂素材は柔らかいため傷がつきやすい。だが、この樹脂素材は自己修復機能を持っている。ちょっとした傷であれば自分で修復するのだ。

樹脂素材は、分子が長く連なった鎖状のポリマー構造をしており、この鎖が複雑に絡まって固体となっている。ところが、熱や特定波長の光、電流などを加えると、この鎖の絡まりが緩み、自由に動けるようになる。これによりちょっとした傷などは埋めて、元どおりの形に戻るのだ。
時間はかかるが、室温下でもゆっくり修復は行われる。大きな傷であれば熱をかけたり、特定波長の光をあてたり、電流をかけることで修復が行われる。特許文書では、加熱層を組み込んで、充電時に定期的に熱をかけ、ディスプレイの平滑さを保つというアイデアにも言及されていた。

つまり、Appleは折りたたみデバイスのために、滑らかに曲がるヒンジ構造を開発し、超薄型フレキシブルガラスに溝を掘り曲げやすくする加工方法を開発し、さらには自己修復機能を持たせようとしている。
このような特許技術が200件以上もあるのだ。Appleはすっかり電子デバイスのブランドになってしまい、「最先端技術を試してみた」的なとがったデバイスを販売することはできなくなっている。
Appleが販売するからには、求められるのは最高水準の品質だ。折りたたみiPhoneの発売時期には諸説あるが、登場すれば折りたたみデバイスの決定版になることは間違いない。どんなスタイルのデバイスが登場するのか、楽しみにして待とう。

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著者プロフィール
牧野武文
フリーライター/ITジャーナリスト。ITビジネスやテクノロジーについて、消費者や生活者の視点からやさしく解説することに定評がある。IT関連書を中心に「玩具」「ゲーム」「文学」など、さまざまなジャンルの書籍を幅広く執筆。








