Macを狙う最新の脅威とは何か
Macは、AppleがハードウェアからOS、ソフトウェアまでを一貫して設計・開発していることに加え、ハードウェアベースの保護、安全な起動、アプリの実行制御、データの暗号化など、多層的なセキュリティ機能を標準で備えています。そのため企業で利用する端末としても高い安心感があり、近年では導入する企業も着実に増えています。
しかし、だからといってMacがサイバー攻撃の脅威とは無縁というわけではありません。これまで「Macはウイルスに感染しにくい」「Macは攻撃されない」といったイメージを持たれることもありましたが、シェア拡大に伴って、Macを標的としたマルウェアや攻撃手法も次々と登場しています。
では現在、Macを狙う攻撃にはどのようなものがあるのでしょうか。その動向を知るうえで参考になるのが、Jamf社が2026年4月に公開した2026年版の「セキュリティ360:最新トレンドレポート」です。

【URL】https://www.jamf.com/ja/resources/white-papers/security-360-annual-trends-report/
このレポートは、15万台以上のMacを対象に、2025年に確認されたマルウェアや脆弱性、攻撃手法などを分析したものです。Jamf社の製品を導入している企業のMacから収集した匿名化済みのテレメトリデータをもとに、企業環境におけるセキュリティリスクの実態を明らかにしています。
主な調査結果は、次のとおりです。
- 44%のMacで悪意のあるネットワーク通信が検出された
- Mac向けマルウェアでは、トロイの木馬が全体の50.32%を占め、もっとも多く確認された
- 26%の組織で、少なくとも1台のMacがクリプトジャッキングの影響を受けていた
- 41%のMacが、OSのバージョンが古く危険な状態にあった
- 58%の組織で、OSのバージョンが古く危険な状態にあるMacが少なくとも1台確認された
- 73%のMacで、脆弱性のあるアプリが少なくとも1つ確認された
これらの結果から、企業で利用されているMacが、マルウェアや悪意のあるネットワーク通信、古いOSや脆弱性のあるアプリなど、さまざまなセキュリティリスクにさらされている実態が見えてきます。
情報を盗んで終わらない攻撃へ
レポートで取り上げられている内容はいずれも重要ですが、中でも特に注目したいのは、攻撃の手口が変化していることです。
Mac向けマルウェアでは、2024年はインフォスティーラーとアドウェアがそれぞれ全体の約28%を占めて主流でしたが、2025年にはトロイの木馬が前年の16.61%から50.32%へと急増し、もっとも多く確認されたマルウェアとなっています(インフォスティーラーも33.52%まで増加しており、依然として主要な脅威です)。
この数字だけを見ると、「2024年はインフォスティーラー、2025年はトロイの木馬が主流になった」と理解してしまいがちです。しかし、今回のレポートで本当に注目すべきなのは、マルウェアの順位が入れ替わったことではありません。
レポートでは、多くのインフォスティーラーがトロイの木馬を利用してバックドアを設置し、攻撃者が再び侵入できる状態を維持していると説明されています。つまり、インフォスティーラーとトロイの木馬が、それぞれ独立したマルウェアとしてではなく、組み合わせて利用されるケースが増えているということです。
インフォスティーラーとは、ブラウザに保存された認証情報やCookie、セッショントークン、暗号資産ウォレットなどを盗み出すことを目的としたマルウェアです。従来は情報窃取が主な役割でしたが、現在ではその後の攻撃を可能にする「入口」としても利用されるようになっているのです。
なお、こうした傾向は、Macだけに見られるものではありません。MicrosoftやCrowdStrike、Mandiantなどの主要なセキュリティベンダーも、認証情報の悪用を起点とした攻撃の増加について報告しており、認証情報を狙う攻撃は現在のサイバー攻撃全体に共通する傾向となっています。

変化し続けるMacの脅威にどう備えるか
インフォスティーラーとトロイの木馬を組み合わせた攻撃に加え、レポートでは、Macを取り巻く脅威がさまざまな面で変化していることも明らかにされています。
たとえば、2023年と2024年にもっとも多く確認されていた「Genio」アドウェアは、2025年には7.19%まで減少して第4位となり、代わってブラウザを改ざんする「PuAgent」がもっとも多く確認されたと報告されています。
さらに、AIエージェントを悪用した新たな脅威についても警鐘を鳴らしています。AIエージェントは、シェルコマンドの実行やローカルファイルへのアクセス、外部サービスとの連携など、従来のAIチャットボットよりも強い権限を持つことから、プロンプトインジェクションによる不正操作や情報漏えいにつながる可能性があるとしています。
今回のレポートからわかるのは、Macを狙う脅威は固定化されたものではなく、年々変化しているということです。Jamf社では、こうした変化に対応するため、Apple製品向けのセキュリティソリューションを活用するとともに、「組織全体の脆弱性を把握すること」「リスクに応じたアクセス制御を実装すること」「OSやアプリを継続的に最新の状態へ維持すること」の3点を重要な対策として挙げています。
今後も、Macを狙う攻撃手法や利用されるマルウェア、狙われる対象は変化し続けると考えられます。そのため企業には、現在確認されている脅威への対処にとどまらず、新たな動向を継続的に把握し、自社の環境への影響を見極めながら、管理・運用やセキュリティ対策へ反映していくことが求められるでしょう。

【URL】https://www.jamf.com/ja/resources/white-papers/mobile-devices-security-360-annual-trends-report/

