広告プラットフォームとしてのグーグル
グーグルのメインビジネスは何かを考えたことはあるだろうか? 同社は検索エンジンサービスとして有名になり、今ではスマートスピーカの販売から自動運転車の開発まで手がけているが、その実態は、世界最大のオンライン広告企業なのだ。
グーグルは、さまざまなサービスやデバイスを無償、あるいは低価格で提供しているが、その狙いは、可能な限り多くの人々が簡単にネットアクセスできる環境を作り出し、多様なビッグデータを収集することにある。それらのデータは、災害時に通行可能なルートを示したり、社会的な問題解決に役立てられたりもするが、グーグルもビジネスである以上、個人にマッチした広告表示を行ううえで、直接/間接的に利用して、そこから収益をあげている。
もちろん、それ自体は悪いことではない。たとえば、民放のテレビ番組の無料視聴が、放送局による広告枠の販売によって成り立っているようなものだ(近年はそのビジネスモデルも揺らぎつつあるが…)。
同様に、便利なサービスが受けられるならば、自分の嗜好や行動に関わる情報を匿名で提供したり、画面に広告表示が行われることを容認しても良いと考える人がいても不思議ではない。そして、現実に多くの人々が、その状態を(意識しているかどうかは別として)受け入れている。
プライバシーをめぐるスタンスの違い
しかし、一方では、その状態を良しとせず、特に教育現場がそのようなデータ収集の場として使われることに懸念を抱く組織もある。
デジタル社会における言論の自由についての啓蒙や法律面からの保護を行うことを目的とする電子フロンティア財団(EFF)も、その1つで、米連邦公正取引員会(FTC)に対して、クロームブックが同委員会が策定した“Student Privacy Pledge(生徒のプライバシーに関する規約)”に、以下の3つの点で違反していると指摘している。
(1)グーグルの教育用アカウントでログインした際に、非教育目的のグーグルサービスにおける生徒の利用状況が収集され、同社の利益のために使用される点。
(2)クロームブックのクロームブラウザの「クロームシンク(Chrome Sync)」機能がデフォルトでオンになっており、生徒のすべてのWEB閲覧履歴などが収集され、同社の利益のために使用される点。
(3)クロームブックの教育向けグーグルアプリの個人情報関連の設定(セッティング次第で、グーグルおよびサードパーティに提供可能になる)が、管理者のみ変更できる仕様となっている点。
これらの点に対し、グーグルは何も問題はないという立場で、両者の意見は真っ向から対立している。
GAFE(Google Apps for Education)と呼ばれるグーグルのアプリ群(メール、カレンダー、ドライブ、ドックスなど)では生徒のプロファイル作成や広告表示は行わないとしているが、その他のサービスやアプリ(サーチ、ブックマーク、マップ、ニュース、フォト、ユーチューブなど)はそこに含まれていない。つまり、教育用アカウントでログインしたクロームブックでGAFE以外の、しかも一般に行われるような操作や処理をした場合には、その結果として得られたデータをグーグルが自社のビジネスのために利用できることになる。
これに対して、アップルは明確にプライバシーに関わる情報をサードパーティと共有するようなビジネスは行わないことを明言しており、iPadも例外ではない。
すべての情報がつながるデジタル社会のメリットを享受しながらプライバシーを守るには、それなりのコストがかかる。教育現場や行政は、導入するプラットフォームを決定する際に、その点をしっかり認識しておく必要があるだろう。
Googleのポリシー
Googleの公式プライバシー解説ページでは、同社がデータを活用することによる利便性が強調される。【URL】https://privacy.google.com/?hl=ja#