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12月にはいよいよ「iMac Pro」が登場!

12月にはいよいよ「iMac Pro」が登場!

Coming Soon!/iMac Pro

【発売】アップルジャパン

【価格】4999米ドル~(日本での予定価格は未発表)

Retina 5Kディスプレイ/8コア・10コア・18コア プロセッサ/32GB メモリ/1TB SSD ストレージ/Vega GPU/10Gb イーサネット

進化はまだ道半ば

リリースのタイミングを、CPUやGPUを筆頭とした各ハードウェア・コンポーネントの更新時期に合わせてきた今回のiMacは、現時点でトップクラスの性能とコストパフォーマンスを誇る仕上がりになっている。

この時点でもすでに「ベスト・バイ」と言っても構わないのだが、実は新しいiMacにはまだ未完成の部分がある。それはOSだ。現在搭載されているオペレーティングシステム(OS)、macOSシエラではハードウェア性能を充分には引き出せていないのだ。

現在開発中の次期macOSハイシエラでは、27インチのiMacでVRゴーグルへの対応が発表されたが、これは内蔵する「ラデオン・プロ500」シリーズが極めて高い描画と演算性能を持っているからにほかならない。

向上が目覚ましいGPU性能はVRだけでなく、普段表示されているデスクトップ画面の描画などにもより積極的に使われるようになる「メタル2」フレームワークが搭載されており、より滑らかでストレスのないユーザインターフェイスが実装される。

このほかにもCPUに搭載された専用アクセラレータを使って新型ビデオコーデック「HEVC(H・265)」をハードウェアで処理できるようになったり、フラッシュストレージ搭載モデルではより高速で安全なファイルシステムとして開発された「APFS(Apple File System)」が使えるようになるなど、ハードウェアの「伸び代」が実はまだまだ残されている。

ハイエンドへの新たな道筋

そして何より期待が高まるのは、年末にリリースを控えたiMacプロの存在だろう。鳴り物入りで登場したものの、放熱の問題を解決できないため最新世代へとハードウェア更新できないジレンマを抱えているMacプロは、本来牽引するはずだったハイエンド分野で大きく水を開けられている。

この状況を打開するには筐体設計を根本からやり直すと判断したアップルは、次期Macプロのモデルチェンジが2018年以降になるという異例のアナウンスを発表、その間のハイエンドを引き受ける存在として指名されたのがiMacだ。

iMacを使うプロフェッショナル層からは、以前より「もっと性能の高い構成も用意してほしい」という要望は少なからず上がっていたのは事実だ。とはいえ、コストパフォーマンスの良さも重要な特徴であり、購入単価こそ高いもののハイエンドの母数は絶対数で多くない。ビジネス視点で見ればこのシェアをMacプロと競合して奪い合うメリットも大きくなかっただろう。

だがMacプロの問題が解決できないとなると、話は別だ。ハイエンドの不在を埋めるデスクトップ、というゴールが設定されたプロ向けに特化したiMacは、作り手であるハードウェアエンジニアたちにも大きなモチベーションになっただろう。その意気込みは現在公開されている仕様からも見て取れる。CPUにはインテルのサーバクラスブランドであるジオン(Xeon)が採用され、コア数も8/10/18から選択できる。ジオンは今までMacプロに採用実績はあったものの、iMacシリーズには初の試みとなる。

同じ18コアモデルであれば、新しく発表された「コアi9」シリーズを採用するプランも選択できたはずだ。これを選ばなかった理由はおそらくメモリにある。高度な科学計算やレンダリング、エンコードなどは長時間の作業を必要とするが、この際に重要となるのがメモリに「ECC(エラー訂正符号)」が搭載されているかどうかだ。メモリエラーのために作業がやり直しとなってしまうと膨大な時間の損失につながるという点で、この技術はハイエンド分野においては必須だ。価格の制約がなくなり、性能面で妥協する必要がなくなれば最良のもの、ジオンを選ぶ理由となるだろう。

そして妥協のなさがもっとも表れているのはCPU以上にGPUだろう。iMacプロに搭載されるAMDの「ラデオン・プロ・ベガ(Radeon Pro Vega)」シリーズは現在最高峰と言われているエヌビディア(nVIDIA)の「タイタンXP(TITAN XP)」を30%以上凌ぐ性能を持つと言われており、ゲームやVRだけでなくディープラーニングといった機械学習の分野でも活躍が期待できるモデルだ。

そして何より驚かされるのは、これだけのスペックを内蔵しながら十分な排熱量を確保している冷却デザインだ。内部設計は見直されたものの、筐体の意匠に関しては大きく変更されていないという事実に改めてiMacの基本設計の優秀さを思い知らされる。

あらゆる意味でiMacどころか、Mac史上最大のスペックを持つこのiMacプロに期待をかけるユーザは多いだろう。発売まであと4カ月、再びMacがハイエンド市場を席巻する日を目撃するのは、もう間もなくだ。