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12.9インチよりも10.5インチのほうが最適?

著者: 山下洋一

12.9インチよりも10.5インチのほうが最適?

選びやすくなったラインナップ

iPadプロに付いて回るのが「~に使えるのか?」という疑問だ。「仕事に使えるか?」「ノートPCの代わりとして使えるか?」「お絵描きに使えるか?」など、仕事からクリティティブな活動、趣味までiPadプロに対する人々の関心は幅広い。

第二世代になって、iPadプロのラインナップから9.7インチモデルが消え、新たに10.5インチモデルが登場した。9.7インチは軽量スリムで持ち運びやすく、ビデオを見たり、WEBページを読むといった「コンテンツ消費」に適したサイズ感だった。だが、資料とエディタを並べて文書を作成したり、絵を描くというような作業では画面が窮屈になりがちで、モバイルノートPCに劣らないパフォーマンスを活かしきれないところがあった。一方、12.9インチは、マルチタスク作業も快適にこなせるプロ向けの用途に適した広々としたサイズだが、普通にタブレットとして使うには大きすぎて扱いにくいという声が少なくない。タブレットらしい可搬性を取るか、作業が快適な大きなサイズを取るか、第一世代のiPadプロでは一長一短の選択を迫られた。

10.5インチのiPadプロの登場によって、そんな選択に悩まされなくなった。10.5インチの画面の対角距離は9.7インチからわずか0.8インチ(約2センチ)長くなっただけだが、画面は18%大きくなり、絵を描いてもマルチタスク作業でも不満なく使える。サイズ感は9.7インチに近いが、実際の使用感は小型の12.9インチモデルである。

画面が大きくなったマイナス面を見ると、9.7インチよりも長辺が10・6ミリ、短辺が4.6ミリ大きく、重量も32グラム重くなった。でも、本体サイズはそれほど大きくなっておらず、厚みは変わっていないため、手に持った感覚では逆に軽くなっているような錯覚を覚える。

10.5インチはタブレットの携帯性を備え、iPadプロに求められるプロダクティビティやクリエイティビティもサポートするバランスの良いタブレットであり、多くの人が満足できるだろう。10.5インチでも窮屈でもっと広い作業スペースが必要なら、可搬性をそれほど優先しないユーザだろうから12.9インチが選択肢になる。ただし、12.9インチは前世代と同じベゼル幅で、今では野暮ったいデザインに感じられる。前世代よりも36グラム軽量になったが、本体の小型化も実現して欲しかったところだ。

2種類のサイズ

10.5インチモデルは本体サイズが250.6×174.1×6.1ミリ、重さは469グラム(Wi-Fiモデル)。9.7インチモデルと同じ厚みで一回り大きくなった。12.9インチモデルのサイズは305.7×220.6×6.9ミリ、重量は677グラム (同)。前世代と同じサイズで軽量になった。

9.7インチから一回りアップ

10.5インチは9.7インチから一回り大きくなってコミックや単行本、ペーパーバックをより原寸に近いサイズで見開き表示できる。12.9インチは雑誌もほぼ原寸大で楽しめる。

異なるユーザインターフェイス

機能的にはiPadプロとiPadの間で多くが区別されているが、ユーザーインターフェイス(UI)は12.9インチと10.5インチの間で線引きされている。たとえば、スプリットビューを使用したとき、画面の大きい12.9インチでは小サイズにしたアプリを除いて標準UIで表示される。10.5インチだと逆に大サイズにしたアプリ以外はシンプルなUIになる。ソフトウェアキーボードも、12.9インチが備える高機能なキーボードではなく、9.7インチと同じシンプルなキーボードだ。

ただ、シンプルなUIが機能面で劣るかというと、12.9インチのボタンが並ぶUIよりも必要な要素に絞り込まれた10.5インチのUIのほうが使いやすいと感じる部分が多々あった。iPadプロであっても基本的にタッチ操作が主だからかもしれないが、総じて10.5インチにはタブレットとしてのバランスの良さを感じる。

スプリットビューの比較

10.5インチでスプリットビューを使うと、二等分ではどちらもシンプルなUIになる。標準のUIで表示されるのは大・小で並べたときの大きなアプリのみ(左)。一方、12インチでスプリットビューを使うと、二等分でどちらも上部のバーに機能アイコンなどが並ぶ標準UIだ。10.5インチとは逆に大・小で並べたときの小さなアプリのみシンプルなUIになる。

親指がベゼルに触れる

10.5インチは長辺のベゼルが狭く、操作していると親指が画面に触れてしまう。まれにタッチと認識されていまうが、スライドオーバーの画面が飛び出してくるような誤認識は起こらない。

操作しづらい製品あり!

狭額になったことでBluetoothキーボードの台にディスプレイの一部が隠れてしまうなど、9.7インチ向けの周辺機器の中には操作しづらくなった製品がいくつか出てきた。