アップデートされたmacOSシエラで「写真」ソフトを起動すると、しばらくの間フォトライブラリの解析が行われます。これにより、撮影日時や場所、写り込んだ人物や被写体などから自動的に写真を分類・整理してくれる「メモリー」機能が使えるようになり、さまざまな過去の思い出をアルバムやスライドショーとして楽しめるのです。また、撮影したシーンや被写体に関するキーワードから写真を探せる「インテリジェンス検索」も利用可能になります。
さらに、写真の編集機能も強化され、「ブリリアンス」の調整機能やマークアップによる描き込み機能が新たに追加されました。アイクラウド・フォトライブラリとの連係により、これまでよりもスムースにMacとiOSデバイスで写真を管理できるようになっています。
ここでは「写真」の新機能や強化点について解説していきます。
インテリジェンス検索する
新しくなった「写真」のインテリジェンス検索は、ディープラーニングによる画像解析機能によって、フォトライブラリ内の写真を自動的にそのシーンや対象物のカテゴリ名、人物の表情や思い出のイベントから検索できるようにするものです。これまで写真をキーワードで検索するには、アルバムで整理したり個別の写真にタグ付けや説明文を追加する必要があったのですが、こうした手間が一切不要となります。
検索可能なカテゴリ名やキーワードは公表されていませんが、技術情報などから現状は153種類のカテゴリと4432種類のシーンやオブジェクトをキーワードとして検索できるとされています。このキーワードはグローバルで共通ですが、日本語環境では英語で検索できません。実際に試したところ「猫」「カレー」「タワー」「水辺」といった普遍性のあるキーワードの検索精度はかなり高いですが、「おにぎり」「富士山」といったローカルワードはほとんど対応していません。また、ユーザ自身がカテゴリを増やしたり、カスタマイズすることもできません。膨大な検索キーワードをユーザが覚えるわけにもいきませんので、現状ではより抽象度の高いキーワードで検索するのが、使いこなしのポイントになります。
ウインドウ右上の検索欄にキーワードを入力すると、それに該当するシーンや対象物が含まれた写真を「カテゴリ」として分類して結果を表示してくれます。また、「地域」や「撮影地」、「アルバム」などからも探してくれます。
たとえば、「果実」のようなカテゴリで検索すると、みかんやイチゴ、ブドウといったように、色や形状のまったく異なるオブジェクトでも同じ属性として抽出されて表示されます。この機械学習の精度はかなり高い印象です。
「寒い」のような形容詞でも、雪景色のシーンなど連想される写真が選択されました。ただし、夏の写真を探したいときに「暑い」や「夏」ではカテゴリが表示されないため、「青空」のような別の単語で探してみましょう。
マークアップで追加する
写真の編集機能も地味ながら改良が施されています。特に注目したいのが、マークアップ機能の追加です。これは「プレビュー」や「メール」の添付書類ではすでに搭載されている機能で、写真や画像の上に手書きでさまざまな図形や文字を描き加えられます。
写真の場合、もっとも考えられるのが「落書き」としての機能です。少し失敗した写真であっても、絵を描き込むことでユニークな写真になります。また、追加したマークアップはあとからでも削除できますので、写真の修正指示や解説用の図版作成などの作業でも利用可能です。
[編集]→[機能拡張]→[Markup]と選択することで、プレビューやメールの添付書類と同じようなマークアップツールバーが表示されます。ここから図形や文字を写真に書き込めるようになります。
マークアップツールバーを使ってスケッチ、テキストなどで描き込みます。シェイプの色や線の太さは自由に変更可能です。スケッチでは、三角形などをラフに描いても、図形と認識された場合は自動で正しく変換されます。
[シェイプ]メニューの[ハイライト]と[ルーペ]を利用すると、写真の一部だけを明るくしたり、拡大表示できます。写真だけでなく、図版の解説などに応用できます。ルーペの拡大率は、縁に表示される緑色のハンドルをドラッグします。
ブリリアンスでプロ並み編集
iOS 10の「写真」アプリの編集機能に[ブリリアンス]という見慣れない調整項目が増えたことに気がついた人もいるかもしれませんが、Macの「写真」にも同じ項目が追加されています。このブリリアンスは「輝き・光沢」の意味で、スライダを動かすだけで写真の明るい部分と暗い部分がそれぞれ調整され、被写体をよりくっきりと浮かび上がらせる効果があります。明るさやコントラストのみで調整するより自然な効果が得られるので、SNSに投稿する写真などに利用したい新機能です。
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[編集]→[調整]→[ライト]と辿ると[ブリリアンス]の項目が追加されています。Macでは明るさとピクセル数を分布図にしたヒストグラムと連動して表示されるので、その効果がわかりやすくなっています。
メモリーでアルバム作成
写真は撮った直後よりも、あとから見たときに思い出が蘇って楽しいものです。写真の新機能「メモリー」は撮影地や写っている人から自動的にコレクションを生成する機能で、起動して確認すると日々新たなメモリーが作られています。また、以前に作成したアルバムを手動でメモリーに追加することも可能です。メモリーはスライドショー再生するなどして楽しむのが一般的ですが、旅行の写真などをアルバムで整理する手間が省けるのもメリットの1つではないでしょうか。
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「今年のベスト」「過去3カ月のベスト」「千代田区」のようにコレクションが自動生成されるメモリー機能。アップルTVなどでスライドショー再生するとさらに楽しめるでしょう。