重要なファイルを守る外付けハードディスク
ハードディスクドライブ(HDD、以下ハードディスク)は、金属またはガラス製の磁気を帯びたディスク(円盤、プラッタとも呼ぶ)に、データを記録するタイプのストレージ(補助記憶装置)です。磁気のプラスとマイナスがデジタルデータの最小単位である0と1のビットに対応し、ケース内のディスクを高速に回転させることで大量のデータの書き込みや読み出しを行っています。このディスクの面積や円盤の数、書き込む密度を高めることによって容量が増やせ、現在は数テラバイトという大容量のストレージも普及しています。
このハードディスクは、コンピュータ用のストレージとして長い歴史を持ち、現在もiMacやMacミニ、MacBookプロのローエンドモデルでは内蔵されています。その一方で、省電力や小型軽量が求められるモバイルMacでは、ハードディスクよりも高速に読み書きできて消費電力も少ないソリッドステートドライブ(SSD)が内蔵ストレージの主流になりつつあります。
とはいえ、容量に対する価格を考えるとSSDよりもはるかに安いハードディスクは現在も大きなアドバンテージがあります。その活躍の場所は、Macの内部よりも電源供給や本体サイズの制約の少ない外部ストレージ、すなわち「外付けハードディスク」へと移行しつつあります。
大量の写真や動画を保存したり、Macのバックアップ用途に最適なハードディスクの仕組みはもちろん、用途別に外付けハードディスクの選び方を解説します。
【アップル知りたいキーワード】
ハードディスクはいったいどこで使われているの?
ハードディスクを単体で搭載するMacは少なくなっていますが、完全になくなったわけではありません。むしろ、ハードディスクの利点を活かした製品は現在も数多く存在しているのです。
ハードディスクを搭載したMac
Macでハードディスクを内蔵しているのは、筐体の大きさに余裕のあるiMacシリーズと一部のMacBookプロのみです。また、SSDとハードディスクの両方を搭載して双方の利点を活かした「フュージョンドライブ」をカスタマイズで搭載したり、標準で搭載しているMacミニがあります。薄型軽量化と省電力を目指すMacBookシリーズではSSDが採用されています。
サードパーティ製は多種多様
外付けハードディスクはサードパーティ製が主流で、主に据え置き型で外部から電源を供給するタイプと、手軽に持ち運べる小型の製品に分けられます。複数台の高速なハードディスクを搭載して、業務でも使えるプロ仕様の製品もあります。
アップル純正の外付けハードディスク
アップル純正のWi-Fi(無線LAN)アクセスポイントである「AirMac Time Capsule」は、内部に2TB/3TBのハードディスクを内蔵し、Macのタイムマシン・バックアップに使われます。バックアップだけでなく、写真や動画などのユーザデータも保存できるため、アップル純正の外付けハードディスクと呼んでも差し支えありません。
【ハードウェア図鑑】外付けハードディスクの仕組み
外部ストレージの基本であるハードディスクは、ケース内部で実際に各種の部品が「動いて」データを読み書きしています。その大容量のデータを取り扱える仕組みを見ていきましょう。
ハードディスクの構造
外付けハードディスクには、USBやサンダーボルトなどのインターフェイスがあり、Macと有線で接続されるのが一般的です。ハードディスク内部には磁気を記録するためのディスク(円盤)が複数あり、データの読み書きを行うときはスイングアーム先端にある磁気ヘッドがディスク上の内周部と外周部の間を移動します。ディスクを回転せるのはスピンドルモータの役割で、読み書きを行っている際に本体を乱暴に扱うとヘッドがディスクに接触するなどして物理的な破損につながります。
ハードディスクの動き
データを読み書きする際には、スイングアームを動かしてヘッドを内周と外周に移動させます。ディスクを高速で回転させてヘッドをデータのある位置に通過させますが、その回転数は1秒間に最大5400~7200回転(単位はrpm)となり、高速なものでは1万5000回転以上の速度で回転しています。記録されるデータは、できるだけディスクの回転方向に連続して書き込まれますが、連続した容量がない場合にはデータがディスクのあちこちに分散し、アクセス速度が低下します。
ディスクとデータ位置の関係
ハードディスクの各ディスク(プラッタ)のドーナツ状の帯の部分を「トラック」と呼び、複数枚に積み重ねたディスクの同一トラック群を「シリンダ」と呼びます。また、円をケーキのように区切り、各トラックに記録できるデータの最小単位を決めていて、これを「セクタ」と呼んでいます。このセクタが小さいほどディスク面積あたりのデータ容量を無駄なく使用できます。なお、かつて1セクタあたりの容量は512バイトでしたが、いまでは高密度な4Kセクタ(約4000バイト)が主流で、扱えるデータ容量は大幅に増加しています。
【もっと教えて】
ファインダなどでMacのストレージを確認すると「Macintosh HD」という名前があります。このHDはハードディスクの略称です。SSDだけを搭載したMacでも「Macintosh HD」という名前が使われているのは、かつてのハードディスク内蔵Macの名残です。
【もっと教えて】
内蔵パーツとしてのハードディスクの外形サイズは規格化されています。現在は2.5インチと3.5インチサイズが主流ですが、iMacなど薄型のモデルではデスクトップでも2.5インチサイズモデルが採用されています。