MacBookをお使いの皆さんに質問したい。あなたは、どのようなタイミングでMacBookを充電しているだろうか。意外と多いのが、普段は電源に接続せず、バッテリが減ってきたら電源ケーブルをつないで充電するという使い方だ。
実はこれをしていると、バッテリサイクルが回り、寿命を縮めるのにつながってしまう。では、どのようにMacBookを充電するのが正解なのか。正しい戦略を3パターンでご紹介する。
MacBookはスリープ運用が正解。起動時の消費電力のほうが大きいとされている
MacBookユーザの間にはさまざまな論争がある。MacBookを使い終えたらスリープさせておくのがいいのか、電源をオフにするのがいいのか、というのはその典型例だ。ちなみに、この論争の結論は「スリープさせておくのがいい」である。MacBookはスリープ状態で放置しておくより、起動時のほうが大きな電力を消費するからだ。
MacBookは、設定や環境によるが、スリープ中もメールチェックなどを行っている。しかし、このようなバックグラウンド動作は高効率コアが行う。
M5チップは、高性能コア(Pコア)×4、高効率コア(Eコア)×6という構成だ。Pコアは電力を消費するが、高速性が魅力。一方、Eコアは処理能力に限界はあるものの電力効率が極めて高い。スリープ中の動作は、このEコアで処理されるため、ほとんど電力を消費しないのだ。
こういった点から、MacBookは電源を切らずにスリープ、つまり蓋を閉じるだけで運用するのが賢い、という説が有力だ。
MacBookの電源ケーブルは挿しっぱなしがいい? バッテリ寿命を考える
もうひとつ、大きな論争になっているのが、「電源ケーブルは挿したまま使ったほうがいいのか、できるだけ挿さずに使ったほうがいいのか」だ。どちらがバッテリの寿命を延ばせるのか、さまざまな考え方がある。
しかし、バッテリ問題の考え方は意外に単純だ。リチウムイオンバッテリの残量と電圧を可視化してみると、図のようになる。真ん中の平になっている部分がバッテリにとっては安定状態だ。20%以下の低電圧状態、80%以上の高電圧状態はバッテリに負担がかかり、寿命が縮む。つまり、20%から80%の間で運用するのがポイントとなる。

また、充放電時の熱もバッテリに悪影響を与える。しかし、現在のMacBookは放熱効率に優れるため、映像編集といった高負荷な作業を長時間続けるようなことがなければあまり気にする必要はないだろう。パソコンスタンドなどを使って、本体背面を浮かしておくくらいで対策としては十分である。
バッテリを劣化させやすい“ダメな使い方”はわかりやすい。
1)常に電源を供給し続け、残量100%の状態で使う。
バッテリにダメージを与え続けることとなり、劣化が早く進む。
2)バッテリが20%程度まで減ったところで給電し、80%まで充電できたら給電をやめる。
バッテリの寿命は充放電サイクルを繰り返すことで減っていく。電源と接続できる状態でも本体のバッテリを無駄に駆動させることは、寿命を縮めることにつながっている。
利用スタイル別テクニック。「バッテリー充電の最適化」の使い分け
では、どうやって「20%80%運用」をすればいいのだろうか。3つの利用スタイル別に考えてみよう。
1)ほぼデスクで使い、いつでも電源が利用できる
2)毎日決まった時刻(午後の定例会議など)で電源が利用できないモバイル運用をする
3)不定期な外出や会議で、電源が利用できない時間帯があるモバイル運用をする
私たちAppleユーザは、iPhone、Mac、iPadを併用している人が多く、いずれのデバイスも同じ感覚で使ってしまいがちだ。しかし電源の観点では、iPhone、iPadと比べてMacBookは大きく異なる。
iPhone、iPadはバッテリが主電源であり、電源ケーブルを挿すのはバッテリを充電するためだ。そのため、電源ケーブルを挿しながらデバイスを使うと、バッテリは充電と放電を同時に行うため、バッテリ寿命を早く縮めることになる。
一方、MacBookはあくまでも電源が主電源だ。そして、電源が得られない場合にバッテリを利用する。そのため、電源ケーブルを挿したときはバッテリではなく、まずは本体に電源が供給される。バッテリを充電するのはその余力分だ。そして、バッテリ残量が80%に達すると充電は停止。このパススルー電源の機能があるのがMacBookの最大の特徴である。
1)ほぼデスクで使い、いつでも電源が利用できる場合/「バッテリー充電の最適化はオフ
運用:常に電源ケーブルを挿したまま使う
設定:「バッテリー充電の最適化」をオフにして、充電上限を80%とする

この運用だと、バッテリは常に80%がキープされ、放電もしないし充電もしない。つまり、バッテリをほとんど使われないので劣化が進むこともない。バッテリの寿命をもっとも伸ばせる使い方と言えるだろう。
なお、「バッテリー充電の最適化」はオンでもオフでもかまわない。充電上限を設定した場合、そちらが優先されるからだ。
ちなみに、モバイル運用をほとんどしない使い方では、3カ月に1回程度は充電上限を100%にし、その後、電源ケーブルを外して20%ぐらいまで使い、再度100%に持っていくという“リフレッシュ”が推奨されている。これは、バッテリ管理システムを校正するための作業だ。
バッテリ残量は正確に知ることが難しく、電圧の変化から推測をしている。バッテリ残量を常に80%にキープし続けると、変化量の誤差が蓄積し、バッテリ残量を正確に把握できなくなるのだ。そこでこのリフレッシュを行うと、バッテリ残量を正確に測定できるようになる。
なお、電源供給はMagSafe 3ケーブルを使うことをおすすめする。MagSafeは最大140W供給できるが、USB-Cでは100Wになる。MacBook NeoやMacBook Airではほぼ起こらないが、MacBook Proではレンダリングなどの重い作業をする時は消費電力が100Wを超えることがある。
また、USBポートを使って、iPhoneや周辺機器にMacBookから充電することもできる。このとき、MagSafeケーブルを使っておくと、USBポートが空くため、周辺機器を使いながら充電することが可能だ。
2)毎日決まった時刻(午後の定例会議など)で電源が利用できない/「バッテリー充電の最適化はオン
運用:常に電源ケーブルを挿したまま使う
設定:「バッテリー充電の最適化」オン。充電上限を100%とする

午前中はデスクで仕事をするが、午後はカフェスペースに行ってモバイル運用するなど、モバイル運用の時間がある程度決まっている場合がこれだ。
該当する人は、「バッテリー充電の最適化」を活用しよう。この機能は、利用履歴を学習し、モバイル運用される時間帯の直前には100%まで充電するが、そうでないときは80%で充電を止めるというもの。
100%になるためバッテリに負担を与えるが、すぐにモバイル運用を始めるため、80%以下にまで放電されることになる。80%以上の時間を最小限にとどめながら、モバイル運用でのバッテリ切れの不安を解消するというバランスの取れたやり方だ。
そして、デスクに戻り、電源ケーブルを挿せばバッテリは80%まで充電される。電源が使える時間帯は上限を80%、使えない時間帯の直前は上限を100%と自動的に調整してくれるわけだ。
ただし、この方法はひとつ問題がある。それは充電の最適化は、使用履歴に基づいて充電上限を決定するため、学習するまでに1週間ほどかかるということだ。最初はいつでも100%まで充電されてしまい困惑するが、辛抱強くこの運用を続けていると80%で充電が止まるようになる。
3)不定期な外出や会議で、電源が利用できない時間帯がある/「バッテリー充電の最適化はオン
運用:常に電源ケーブルを挿したまま使う
設定:「バッテリー充電の最適化」オン。充電上限を80%とする


デスク主体で使うが、不特定の時間帯にモバイル運用をする場合は、充電の最適化はうまく機能しない。充電の最適化は時間帯を元に判断されるからだ。ただユーザ心理としては、モバイル運用する直前は100%充電にしておきたい。一方、モバイル運用をしないときは80%充電に抑えておきたい。
これを解決するには、「バッテリー充電の最適化」をオンにし、なおかつ充電上限を80%に設定しておく。これでデスクでは80%で充電が止まるようになる。
モバイル運用する時はどうするのか。モバイル運用をする30分前に、メニューバーのバッテリを開き、「今すぐフル充電」を選ぶ。こうすると、充電上限を80%に設定しておいても100%まで充電が進む。そこで電源ケーブルを抜き、モバイル運用をすればバッテリ切れの不安を減らすことができる。
MacBookは電源が主体のデバイス。電源ケーブルは挿したままが基本
私たちは、iPhoneやiPadの運用に慣れてしまい、MacBookはあくまでも電源が主体で、バッテリは補助という感覚を忘れている。極端なことを言えば、MacBookはバッテリが故障したり、取り外したりしても、電源があれば動作させられる(ただし、ほかの問題が発生するリスクがあるため使用すべきではないが)。
MacBookは常に電源ケーブルを挿したまま使うのが基本だ。しかし、それではバッテリが過度に充電されて寿命を縮めてしまうため、さまざまな設定や工夫が必要になる。
Mシリーズチップは、かつてないほど高性能であり、日常作業が主体であればMacBookは長期間にわたって使うことが期待できる。バッテリを労り、少しでも長い間MacBookを使おう。

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著者プロフィール
牧野武文
フリーライター/ITジャーナリスト。ITビジネスやテクノロジーについて、消費者や生活者の視点からやさしく解説することに定評がある。IT関連書を中心に「玩具」「ゲーム」「文学」など、さまざまなジャンルの書籍を幅広く執筆。








