先に述べたとおり「Liquid Retina XDR」ディスプレイには大きな弱点がある。ローカルディミングで制御されるminiLEDの総数はおよそ1万個、駆動は4個単位なので画素数では2千個あまりしかない。
対して、LCDパネルの総画素数は数百万に及ぶ。この解像度差により、輝度の高い表示の周辺に光が漏れる「Blooming」や、ヘイロー現象(Halo Effect)が発生する。
この現象は写真や動画などでは目立ちにくい一方で、CAD画面やテキスト表示など図形表示や文字表示では顕著に現れやすい。


「Ultra Retina XDR」の特徴とタンデムOLEDの狙い
暗い背景の中で明るい被写体の周りに光がにじむ「ブルーミング」現象は、OLEDではほとんど発生しない。これはOLEDでは個々のピクセルが自己発光する(バックライトを必要としない)ためだ。さらに冒頭で述べたように、LCDに比べてコントラス比に優れており色再現性も極めて高い。
その一方で、OLEDには高輝度を維持し続けることが難しいという弱点がある。OLEDはピクセル自体が発光するという特性上、高輝度では発熱が増え、それがピクセルを構成する発光体(有機層)の劣化を早めてしまう。
劣化したピクセルは輝度が低下してしまい、回復しない「焼き付き」となって残ってしまう。実際のOLEDではこのような劣化を低減するため、高輝度が継続する場合には最大輝度を制御して抑制する。これが「輝度の頭打ち(Brightness Limit)」と呼ばれる現象だ。
この問題への解決策が、M4搭載iPad Proで初採用された「タンデムOLED」である。タンデムOLEDは、発光体を2層重ねることで、個々の発光体への負担を大きく低減する。
2層の発光体の光エネルギーを合算することで、発光体へのダメージを抑えつつより高い輝度を実現可能だ。これにより「Ultra Retina XDR」は「Liquid Retina XDR」に匹敵する明るさやコントラストを確保しつつ、画質を損なう「ブルーミング」の削減を両立している。

MacBook Proに「Ultra Retina XDR」ディスプレイが搭載されることの意義
このことは、macOSで動作するMacBook ProではiPad Pro以上に重要だ。長年のソフトウェア資産を引き継ぐMacでは「ブルーミング」現象を誘発しやすいデザインのアプリが多く、よりプロフェッショナルな用途で使われることから表示品質やカラーマネージメント性能への要求が高い。
MacBook Proに「Ultra Retina XDR」が採用されることで、「Liquid Retina XDR」を大きく超える表示品質が実現され、よりプロの満足度の高い製品へと進化するだろう。
さらに次世代のMacBook Proではさらにいくつかの新機能がもたらされる可能性がある。その1つがノッチサイズの縮小や「Dynamic Island」採用の可能性だ。
OLEDがもたらすノッチの縮小とデザイン刷新の可能性
現在のMacBook Proのノッチ部には、センターフレームカメラとそのタリーランプ、そしてアンビエント(環境光)センサが搭載されている。だが、そのスペースはFace ID(生体顔認証)をも備えるiPhoneよりかなり広い。
これは「Liquid Retina XDR」ディスプレイにおけるminiLEDバックライトの厚みの影響が大きい。しかし、自己発光デバイスであるOLEDを採用する「Ultra Retina XDR」では、そのスペースを大幅に削減することができる。
場合によってはパンチホールサイズ、あるいは完全にディスプレイ背後に隠してしまう(カメラ使用時のみパンチホールが出現する)ことで完全にノッチを無くす設計も不可能ではない。

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また可変リフレッシュレート技術である「Pro Motion」の進化も期待できる。現在の「Liquid Retina XDR」は、24Hz〜120Hzの可変範囲だが、「Ultra Retina XDR」の採用によって10Hz以下までリフレッシュレートを落とし、さらにバッテリ動作時間を延ばせるようになる。
そしてOLED採用のもう一つの大きなメリットは、ディスプレイの大幅な薄型化だ。LCDに不可欠なバックライト、中でもmini LEDによる直下型バックライトの「Liquid Retina XDR」は重く厚い。だが、自己発光デバイスである「Ultra Retina XDR」では、タンデム化したとしても大幅な薄型化と軽量化が実現できる。
そしてそれは、すでにiPad Proが証明している。MacBook Proへの「Ultra Retina XDR」の採用は、ノッチの縮小やさらなる狭額化によって、まったく新しいデザインへと進化するきっかけになるだろう。

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