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〈森の生活〉を送る場所/四角大輔の「Mobile Bohemian 旅するように暮らし、遊び、働く」 【第2話】

著者: 四角大輔

〈森の生活〉を送る場所/四角大輔の「Mobile Bohemian 旅するように暮らし、遊び、働く」 【第2話】

原生林に囲まれた湖の畔に建つ、ニュージーランドの自宅に久しぶりに帰還。

ここは、ぼくが半自給自足の〝森の生活〟を営む重要なホームだ。ケータイ圏外で水道もきていない、というと世捨て人が住むような場所だと思われるが、電気と電話線は届いている。それだけあれば、ネットをとおして仕事ができる。ここは立派な、ぼくの〈クリエイティブオフィス〉なのだ。

Mobile Bohemian(生活旅人)であるぼくが、年の半分強という、もっとも長い期間を過ごすこのライフスタイル拠点は、自身の〈思考・身体・心〉をリデザインし、パフォーマンスを最大限まで引き上げるためのベースキャンプでもある。ここを訪れたあるアーティストは「究極のリトリート(自分を見つめ直すための施設)だ」と表した。

実際ここには、世界各地からデザイナーや作家、ミュージシャン、起業家といった〈0から1を生み出すクリエイター〉がやって来る。友人である彼らは普段、都市空間を拠点にしており、24時間オンライン状態で爆発的な量の情報に触れ、多数の人たちと常に社交している。それでは、脳と体は疲れ果て、自身の心の在り処を見失ってしまう。そんな環境から避難するように、皆ぼくのところにやって来るのだ。

うちで食べるものは、庭で育てたオーガニックの野菜と果物、湖や近くの海で自ら釣ってくる野生魚がメイン。体と脳のパフォーマンスを低下させる、農薬や食品添加物などの化学物質を摂取することはほぼない。生活用水と飲料水は、美しい湖から湧き水をポンプでくみ上げたもの。つまり純度100パーセントのミネラルウォーターだ。森が生み出す空気の酸素濃度は高く、マイナスイオンが充満している。家にいるだけで、森林浴をしている状態だ。

日の出とともに目覚め、湖で泳いだり釣りをしたり。ヨガや湖畔ラン&ウォーク、マウンテンバイクやカヤックもする。日没とともに活動をやめ、夜はローソクの灯りで過ごし、インターネット・ルータの電源を切る生活。身体には心地よい疲労感が残り、毎晩ぐっすり眠れる。この暮らしは、どんな夜型人間をも早寝早起きにさせる。

ここにいる間、アトピーなどのアレルギーを持つ人は症状が消え、感情のアップダウンが激しい人は安定する。不眠症が改善したり、軽度の鬱が完治した仲間もいる。そして、曲を創れなくなったアーティストや書けなくなった作家などが、スランプから脱出するきっかけになることもあった。なぜそうなるのか。答えは簡単。食とライフスタイルが健全化することで、心身が整うからだ。その結果、より高いクリエイティビティを手にすることができる。

日本とは季節が逆なので、ニュージーランドは今がちょうど春の終わり。これから夏が始まり、至福の季節へと突入する。寒すぎず暑すぎず、雨も湿気も少ない天国のような気候だ。この期間はなるべくこの地を離れたくないので、旅は最小限にし、湖畔で表現活動に集中する。

年の半分を〈生活旅人〉としてインプットに費やし、残りの半分を〈森の生活者〉としてアウトプットに特化する。クリエイティブであり続けるために、自身のパフォーマンスを最大限まで引き上げるために、できる限りこの暮らしを続けたいと思う。

iPhone 6で撮影。

※この記事は『Mac Fan 2016年1月号』に掲載されたものです。

著者プロフィール

四角大輔

四角大輔

作家/森の生活者/環境保護アンバサダー。ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。会員制コミュニティ〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。ポッドキャスト〈‪noiseless‬ world〉ナビゲーター。『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『バックパッキング登山大全』など著書多数。

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