Macで融合するフラワーアーティストの表現。花とアートから、サイエンスとテクノロジーの交差点へ

2026.11.02 松村太郎 約5分
Macで融合するフラワーアーティストの表現。花とアートから、サイエンスとテクノロジーの交差点へ

花の色を美しく伝えるため、フラワーアーティストの東信(あずま まこと)さんが気にするのは「黒」だといいます。花びらの鮮やかさを支えるのは、背景の黒です。生きた花に毎日向き合う作り手にとって、その質は表現のクオリティに直結します。

2026年10月28日、米国・ロサンゼルスで開かれたAppleの新型MacBookのお披露目イベント「Pro and tell.」。同イベントにて、東さんは東京で営む花屋やラボの活動の一部を持ち込み、Macを使った表現を紹介し、世界中のクリエイターにインスピレーションを与えていました。

そこにあったのは、花とアート、テクノロジー、そしてサイエンスが結び付く制作の現場でした。

フラワーアーティストの東信さん。1976年生まれ、福岡県出身。東京・南青山でオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を経営するほか、花・植物を用いた造形表現にも注力し、世界各地で数多くの作品を発表している。2009年には、実験的植物集団「東信、花樹研究所(AMKK)」を立ち上げた。

フラワーアーティスト・東信がデバイスのディスプレイに求めること

「黒が締まれば締まるほど、お花の色がすごく際立ってくる」

デバイスのディスプレイについて東さんは、続けて「黄色とオレンジが非常に難しいんですよ」と話します。なるべくパソコン上で色味の調整をせず、自分の目で見た色を再現したい。そのため、ディスプレイ上で色がどう見えるかは、作品を仕上げるうえで重要な判断になります。

2026年10月28日にリリースされた最新のMacBook Proには、有機ELパネルを2枚組み合わせるタンデムOLEDを採用したPROLED XDRディスプレイが採用されました。東さんはその表示性能について「コントラストが明確になり、肉眼で見た花とディスプレイで見た花との差が小さくなったように感じる」と言います。

東さんがディスプレイを評価するときの基準は、目の前の花にあるのです。

花はディスプレイの都合に合わせて色を変えてくれません。作り手が知っている実物の姿と、デジタルで届ける姿。その距離をどう縮めるか。東さんにとってディスプレイの品質は、その問いに応えるための条件となっています。

ディスプレイの色表示性能は、花や植物を用いた表現のクオリティを左右します。

コンピュータ技術の進化はアート表現も進化させる

もうひとつ、東さんの表現を広げたコンピュータの進化にタイムラプスがあると言います。一定の間隔で撮った写真をつなぎ、蕾が開き、咲き、枯れていく変化を映像として見せるのです。東さんが率いる実験的植物集団「東信、花樹研究所(AMKK)」でコンピュータを制作へ取り入れたのは、15年前。しかし、思い描く花の動きを表現しようとしても、当初は技術が十分に追いつかない部分がありました。

現在は大量の写真を扱う制作環境が進化し、花の動きをより滑らかに見せられます。また、細かな記録が可能になったことで花びらの角度や影の付き方にも目を向けられるようになり、花とより深く対話できるようになったといいます。

ただし、記録を細かくすればそれに向き合う人間の作業も増えると東さんは話します。処理能力の向上によって、観察し、選び、作品にするための対象も増えていくのです。

人が花を眺めるのは、一生のうちのわずかな時間しかありません。そのため、人は花の表情の多くを知りません。しかし、タイムラプスによって時間を圧縮することで、花の変化をひと続きに見てとることができます。その体験を生んでいるのはコンピュータなのです。

東さんが手がける花を用いた多彩な表現

東さんの表現は、花が生きる環境づくりにも発展しています。会場で紹介された植物保管容器「パルダリウム」は、温度と湿度に加え、光や風などを取り入れた作品です。蕾の状態や開花の段階に合わせて最適な環境を再現します。

植物保管容器「パルダリウム」。

花屋として積み重ねてきた問いに、環境を管理する技術が加わる。その装置づくりには、Macも使われています。図面を扱う専門のオペレーターがいる一方、東さん自身もMacで図面を見ながらバランスを考えており、テクノロジーを実現する装置そのものもまた、作品のうちだと言います。

「ただ環境を作ったらいいというわけじゃなくて、やっぱり見た目もこだわりたいですね」

また、フリーズドライした花をアクリルに収めた作品もありました。花の姿を物として残すこと、変化を映像で残すこと。残し方が増えるほど、目の前の花の何を受け継ぎたいのか、という問いも具体的になります。

アクリルには遺伝子情報が書かれています。東さんは、「現代の標本」と称しました。

「東信、花樹研究所(AMKK)」の活動は大学院との共同研究に発展

花をよりよく咲かせたい。咲いた姿をより正確に映し出して表現したい。そのためには、植物の知識とサイエンス、エンジニアリングが必要です。東さん自身、生きた花とデータの間を行き来する感覚があると話します。それらは従来は別のところにある知識ですが、それらをコンピュータの技術が結びつけています。

近年は大学と協力し、研究員を大学院に派遣する取り組みも始めています。花から受けた感覚を起点にした表現が研究を求め、研究によって得た知識が次の表現につながっていく。活動のすばらしい循環が生まれているのです。現在は、花をどう残すか、色をどう捉えるか、といったところから発展し、なぜ人は花が好きなのかという問いにまで発展を見せています。

また、若手の育成にも取り組み、東さん自身が作品を作り続けることはもちろん、組織としての成長を目指しています。

テクノロジーが発展するほど、一輪を見つめる

情報の整理や取り出しには、AIも使い始めている一方、最後には人間のチェックが必要だと東さんは考えています。日々表情が変わる生花を前に、その目で確認しながら作る行為にこそ自分たちの強みがあると言います。

MacBookなどの新しいデバイスを導入する理由は、「新しいもの好き」だからではなく、動画や大量の静止画を撮り、花を記録し続けるために優れた性能が必要だから。東さんは、テクノロジーとともに表現を進化させれば、植物の記録や自然の保全にも役立つのではないかと考えています。作品を見せるだけで終わらない、知ること、残すことへの関心があるのです。

「花の命があってからのクリエイティブ」

この言葉は、テクノロジーとの絶妙な距離感を示しています。先に花があり、その美しさを表現するためにMacがある。MacBook Proのディスプレイ性能を求めるのは、一輪の花を、ただ正確に届けたいからなのです。

TAGS #Mac

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