PHSの置き換えにとどまる院内スマホ
院内の連絡手段として使われてきたPHSは、対応端末の生産や保守サポートの終了が見込まれ、スマートフォンへの切り替えが進んでいる。
国もICTやAIを使った業務効率化を後押ししている。厚生労働省の「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」では、ICT機器などを導入して業務効率化に取り組む病院に対し、1病院あたり最大8,000万円、補助率4/5の補助を実施しており、生成AIを使った文書作成支援なども対象経費としている。
一方、オプティムによると、スマートフォンを導入しても通話中心のPHSの置き換えにとどまり、依頼内容の記録・共有や、記録・書類作成の負担軽減までつながっていない例もあるという。2024年4月には医師の時間外労働の上限規制が適用されており、同社は院内スマートフォンを連絡だけでなく、依頼や記録にも使える業務端末として活用する必要があるとしている。
チャットとワークフローで依頼・承認をスマホ上に集約
院内チャットでは、診療科や病棟などのグループ宛てや個人へのメンションで連絡できる。既読管理や未読通知、グループごとの通知設定、画像・音声ファイルの送信、音声入力などにも対応する。

院内チャットの利用イメージ送信前にはAIが報告内容をSBAR(状況・背景・評価・提言)などの観点で確認し、情報に抜け漏れがある場合は補完を促す。
薬剤の追加オーダーなどの依頼はワークフローとして送信でき、依頼を受けた医師はスマートフォン上で承認・却下できる。依頼には受領確認が付き、未応答の場合は自動で再通知する。誰がいつ依頼を受け、どこまで対応したかも一覧で確認できる。

チャット上の依頼をワークフロー化し、医師がスマートフォンから承認・却下できるまた、依頼を受けた側には直近のやり取りをAIが要約して提示し、過去の経緯を読み返さずに判断できるようにする。
撮影・録音データを端末に残さず記録化
セキュアカメラでは、創部の状態や服薬状況、医療機器の表示値などを撮影すると、患者IDと場所を自動で付与し、画像をセキュアサーバーへ保存する。撮影データはスマートフォン本体には残さない仕組みで、同社は私物スマートフォンを利用する場合でも撮影に伴う情報漏えいリスクを低減できるとしている。
セキュアボイスレコーダーでは、インフォームド・コンセントやカンファレンス、訪問先でのやり取りを患者IDと紐付けて暗号化保存できる。音声を文字化したうえで、敬語や単位表記の統一、フィラーの除去などをAIが自動で行う。録音データは一定期間で自動削除する。

セキュアカメラとボイスレコーダーの利用イメージチャット、画像、音声はAIの解析対象となり、訪問看護記録や経過記録、紹介状返書、IC要約などの種類を選ぶと、患者基本情報や関連する画像・音声をもとに記録文書のドラフトを作成する。

チャットや画像、音声などをもとにAIが記録文書のドラフトを作成するイメージ未入力項目をAIが推測して埋めることはなく、「要確認」として明示する。テンプレートは施設ごとに作成できる。
このほか、共用端末で入館ICカードやQRを読み取って利用者を切り替えられるID管理・ゲストモードや、院内のQ&A、マニュアル、各種ガイドラインを登録して利用するAIチャットボットを備える。
オプションで病院向け生成AIサービス「OPTiM AI ホスピタル」と連携すれば、電子カルテやDWHからバイタルや検査値などを参照できる。利用には導入施設でのDWH保有が前提となる。
MDM連携で未許可アプリや端末アクセスを制御
セキュリティ面では、3省2ガイドラインに準拠した環境で提供する。通信と保存データを暗号化するほか、アプリ終了時やログアウト時にはスマートフォン内のキャッシュを消去するクライアントファイルレス設計を採用する。
MDMによるセキュリティポリシーの適用、端末制限、リモートワイプにも対応する。また、患者情報を第三者の汎用AIに渡さず、院内に閉じた環境でAIを利用できるとしている。ID管理・ゲストモードでは、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の要件となる2要素認証にも対応する。
OPTiM AI ホスピタルフォンは、MDM・PC管理サービス「OPTiM Biz」と連携できる。オプティムによると、OPTiM Bizは全国の医療機関370施設、約5万台で稼働している。

MDM管理下のスマートフォンと「OPTiM AI ホスピタルフォン」、院内サーバーや電子カルテとの連携イメージ併用時には、管理下の端末で許可していないアプリのインストールを制限でき、コンシューマー向けメッセージアプリによる患者情報のやり取りを、運用ルールだけに頼らず技術的に制御できる。
また、管理下にある端末だけがOPTiM AI ホスピタルフォンを利用できる構成とすることで、許可していない私物端末や退職者の端末からのアクセスを防ぐ。
アプリは一括配信でき、数百台規模でも1台ずつキッティングする必要がない。OPTiM AI ホスピタルフォンを利用する端末に加え、院内のPCやタブレットも同じ管理画面で一元管理でき、資産管理と監査対応を一本化できるとしている。
月額1,500円から、最大1カ月の無償トライアル
提供開始は2027年1月を予定する。提供形態は月額サブスクリプションで、価格は1IDあたり月額1,500円~1,980円(税抜、予価)。最大1カ月の無償トライアルも用意する。
同サービスは特許出願中で、今後はAIによる記録作成の対象書類や、電子カルテとの連携範囲を拡大する予定だ。
病院でスマートフォンを業務端末として活用するには、アプリの導入だけでなく、端末への配布、機能制御、アクセス管理、紛失時の対応まで含めた運用設計が必要になる。OPTiM AI ホスピタルフォンは、既存のMDM基盤を活用しながら業務アプリとAI機能を追加し、端末管理と業務利用を一体的に運用できる点が特徴だ。多数のスマートフォンを配備する医療機関にとって、既存の端末管理を維持しながら活用範囲を広げる選択肢となる。

