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自転車盗難対策サービス「PedalNote」

著者: 崎谷実穂

自転車盗難対策サービス「PedalNote」

手口が巧妙化し、防ぐのが難しい自転車の盗難。泣き寝入りする前に、入っておくべきサービスがある。それが、捜索のためのビーコンと補償サービスがセットになった「PedalNote(ペダルノート)」だ。月額700円を払えば、盗難時には最大20万のお見舞金がもらえる。

善意の力で盗難車を捜索

23万6215件。これは2016年に日本国内で認知された、自転車盗難件数だ。年々減少傾向にあるとはいえ、1日に約630件もの盗難が起こっていることになる。最近では、盗んだ自転車を売るルートも多様化してきた。分解し、パーツごとにフリマアプリなどで販売されてしまっては、取り返すことなど到底できない。そんな社会背景をもとに誕生した、自転車オーナー向けのIoTサービスが「ペダルノート(PedalNote)」だ。

ペダルノートを開発したのは、株式会社ペダルノート代表取締役の小原芳章氏。大手中古車販売サイトの開発責任者だった小原氏は、独立後も自動車やオートバイ、自転車など「車」に関連する仕事を請け負っていた。そんな中、知人から「高価な自転車を盗難されてしまった」という話を聞いた。

  「ほんの数十分停めておいただけで盗まれてしまう。鍵をかけていても、鍵ごと切られてしまうので意味がない。こんなに盗難被害で困っている人がいるのに、補償サービスがないのは問題だと思いました」

そこで、小原氏は盗難された自転車を探す「ビーコン(ブルートゥースを活用した位置特定技術、その技術を利用したデバイス)」と、見つからなかった場合に買い替えの補償金が出る保険をセットにした商品を考案した。利用する場合はまず、自転車販売店でビーコンを購入し、自転車に取り付ける。そしてサイトからビーコンの登録番号を入力し、ペダルノートのアプリをダウンロードして自転車の情報を登録。それで設定は完了だ。

  「ペダルノートは、電波が強い高性能なビーコンを使用しています。アプリで位置確認できるだけで安心だから、補償はともあれビーコンが欲しいという人もいます」

ビーコンから発信される電波は「シーカー(Seeker)」という盗難自転車探しアプリに反応する。このシーカーは自転車ユーザでなくても登録でき、盗難自転車の捜索に協力することでギフト券などに交換できるポイントを貯められる。

15万円の自転車は要注意

ペダルノートの保険は、無料、月額300円のベーシック、月額700円のアドバンスの3プランがある。有料プランには個人賠償責任保険が入っており、アドバンスには盗難時の補償金20万円と、年1回の故障修理最大3万円補償などがついている。

  「この3万円は正直、保険会社としては赤字覚悟なんです。これは、ほかの保険にはないうちのオリジナル補償。ロードバイクはパンクだけでも修理に3万円ほどかかることがあるので、高い自転車に乗っている方は入っておくと得だと思います」

実は、自転車泥棒が狙っているのは、100万円を超える超高級自転車よりも、15万円くらいの自転車。持ち主の危機意識があまり高くなく、それでいてある程度高額で売れる価格帯だからだ。アドバンスの補償金が20万円なのは、絶妙な価格設定といえる。

アプリでの捜索や盗難補償が可能になったのは、スマートフォンの普及と電子情報での本人確認が容易になったことも関係している。

  「以前、オートバイの盗難全額補償保険があったんですよ。でも『鍵を切られたら全額補償』という条件にしていたため、申請が殺到し、保険会社のほうで補償しきれずサービスを停止してしまいました」

この条件では、あえて鍵を切って保険金をだまし取ろうとしたユーザがいたと考えられる。ペダルノートは、警察に盗難届を提出し、それをもとにアプリで申請することで捜索や補償が行われるため、そうした不正が起こりにくい。

今年中に、ペダルノートの取扱販売店は2000店舗まで増える予定だ。自転車に乗るならペダルノートのサービスに加入するのが当たり前、という時代が来るかもしれない。

普段はどこに行くにも自転車で移動する小原氏。使っているのは高級ロードバイクブランド「cervelo(サーベロ)」の自転車だ。しかし、どこにでも一緒に持ち込むため、盗難の心配はしていないという。自慢の愛車で自転車販売店をまわり、地道にPedalNoteの販路を広げていった。

PedalNote

【開発】PEDALNOTE, INC

【価格】無料

【場所】Mac App Store>ライフスタイル

「PedalNote」アプリは現在iOSのみ対応。今後は、自動販売機のビーコンとも連係して、捜索の精度をより上げていくことも予定されている。2017年9月にはツール・ド・東北でPedalNoteのビーコンが配布され、盗難を防ぐとともに出場者の安否確認などに使用された。

いくつかのメーカーのビーコンを試した中で、一番電波強度が高かった3bitter社製のビーコンを採用。このコイン型のビーコンを、リフレクターやハンドルの中などに入れて設置する。

Seeker

【開発】PEDALNOTE, INC

【価格】無料

【場所】Mac App Store>ライフスタイル

Seekerをインストールすると、盗難車が近くにある場合にポップアップで通知が来る。タップすると50円相当のポイントが付与され、その自転車が持ち主のもとに戻ると、ミッション成功報酬として1万円相当のポイントを協力者全員で山分けできる。