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MNP利用者が減少の理由は「携帯番号」離れ

著者: 山田昇

MNP利用者が減少の理由は「携帯番号」離れ

これまで使っていた携帯電話番号を引き継いで別の通信キャリアに乗り換えられるのが「ナンバーポータビリティー(MNP)」という制度。キャリア選択の自由度が増えるのが一番のメリットだが、2016年はMNPの利用者が大幅に減ったという。その理由はどこにあるのかを考察してみた。

契機は「実質0円」の規制

2017年8月16日付けの朝日新聞に「番号変えない携帯会社の乗り換え、利用数24%減」という記事が掲載された。

記事の内容は、2016年度におけるナンバーポータビリティー(MNP)の利用件数が、前年度比24・5%減の468万件だったというもの。この記事の情報源は、2017年8月4日に総務省が発表した「電気通信番号に関する使用状況の公表(平成28年度)」の報告書だ。同紙ではこの理由を、2016年4月に総務省が「実質0円」といった端末の安売りを規制した影響だと分析している。

しかし筆者は、規制によってMNPの利用者数が減ったというより、これまで異常なキャッシュバックキャンペーンで増え過ぎていたMNPが、規制をかけたことで適正レベルに戻っただけではないかと感じている。さらにいえば、携帯電話のユーザが電話番号に固執し続ける理由が希薄になったことも、MNPを利用しなくなった原因の1つだと考えている。

フィーチャーフォン全盛期、自分の電話番号を変えた際には知り合いに新しい番号を通知するのが当たり前だった。しかし、日本でiPhoneでは、アップルIDによってメッセージのやりとりが可能になり、電話番号がわからなくても連絡を取り合えるようになった。その結果として電話番号やキャリアメールの存在意義が希薄になり、キャリアの乗り換えによってこれらの情報が変わってしまうことに対して、多くの人が抵抗を持たなくなったのではないだろうか。

加えて、現在はLINEや、フェイスブックメッセンジャー、スカイプ、ウィーチャット(WeChat)などのメッセージングツールや、バイバー(Viber)などのVoIPアプリが普及したことも、電話番号に固執する人が減った理由だ考えられる。

新しいiPhoneに買い換えるときに、キャリアを継続するか、別のキャリアに乗り換えるかを検討する人は多いと思う。しかし今や、乗り換えの場合でもMNPを使わないケースが増えているようだ。

どうユーザを引き止めるか

筆者の記憶を掘り起こしてみても、現在から1年前まで、「連絡先」に新しい電話番号を登録した覚えがない。筆者は年間1000枚以上の名刺交換を行っているが、電話をしなければならない重要な相手と判断したとしても、新しく連絡先に追加することがなくなっていた。その理由は、LINEやフェイスブックなどでフォローし合うことで、その人との連絡手段が手に入るからだ。

もし、メッセージではなく電話をかける必要が出た場合「相手のSNSのプロフィール情報から電話番号を探す」行動が一番にくる。逆にいえば、自分の電話番号が変わった場合も「自分自身のプロフィールにある電話番号を変更する」ことで、常に正しい電話番号が相手に伝わるようになるだろう。

また、VoIPアプリで通話することに慣れると、アカウントさえわかっていれば電話番号は何でもよくなってしまう。

そうした理由からか、キャリアを変更しないのに一度解約して新規契約を行ったり、家族間の音声定額通話に入っていてもLINEでコミュニケーションを済ますユーザが増えてきたようだ。「同じ電話番号に固執しない」という考え方は、これからどんどん広がると思う。

ところで、実質0円規制によって2016年1月31日をもってMNP一括0円や大幅キャッシュバックが終了したが、終了日までの駆け込み需要は相当数あったと考えられる。2018年1月にはそのときの駆け込みユーザの2年縛りが終了することになり、各キャリアやMVNO業者は、新型iPhone発売よりも、この2年縛りが終了するユーザの狩り取りキャンペーンが加熱しそうだ。

その時点では、電話番号に固執する必要性がさらに希薄になっており、MNPキャンペーンはユーザの心に刺さらない。どのような手で攻めてくるのか楽しみだ。

朝日新聞に掲載された該当記事はオンラインでも確認できる。【URL】http://www.asahi.com/articles/ASK8J4Q4YK8JULFA00C.html