iPadプロのためのアプリ
アップストアには、すでにiPad用アプリが130万本以上も存在しており、iPadをさまざまな用途に使用できる。だが、その多くはiPhone向けに開発されたアプリをiPadに対応させたものだ。iPadプロはアップルペンシル対応やフルサイズキーボードとの親和性、高い処理性能のプロセッサなど、iPhoneにはない特徴を備える。iPadプロユーザとしては、それらを活かせるiPadプロのためのアプリを使いたい。
たとえば、「グッドノーツ(GoodNotes)」や「ノータビリティ(Notability)」といった手書きノートアプリは、アップルペンシルで格段に使いやすくなった。OCR機能による検索、録音とメモの同期など、本物のノートでは得られない機能を手書きメモで使える。「mazec」や「Nebo」などを使えば、手書きでテキストを入力できる。iOSはファイルシステムの制約が厳しいが、「グッドリーダ(GoodReader)」や「ドキュメンツ(Documents)」を活用すると、ドキュメント閲覧やファイル/フォルダ管理に関する生産性を向上させられる。
手書きのGoodNotes
手書きノートアプリで「Notability」と人気を二分する「GoodNotes」。どちらもオススメだが、GoodNotesは日本語の手書きでもOCR認識してくれるので、検索やテキスト書き出しなどを行える。
プロ用途ならMac優先
しかし、プロ向け用途のアプリが足りない。ライティング環境の「ユリシーズ(Ulysses)」、画像アプリの「アフィニティ・フォト(Affinity Photo)」や「ピクセルメーター(Pixelmator)」などはあるが、その多くはMac版からiPadへ移植されたアプリだ。iPadプロのためにゼロから開発されたアプリは少ない。
プロ用途のアプリのアイデアが浮かんだ開発者は、まずMacでの提供を考える。アドビのアプリのようにMac版と組み合わせて使うことを前提としたiPad版アプリも多い。iPadプロをメインに使うプロユーザが少ないのだから仕方のないことではあるが、プロ用途のアプリが増え、プロ用途にiPadプロを活用しようというユーザが増加する良循環が生じないと、iPadプロ独自の成長は起こらない。
アップルは、新しいiPadプロを開発者カンファレンスであるWWDCで発表したが、iPadプロをターゲットにしたアプリ開発から良循環を促すという狙いがあったのではないだろうか。
すでに存在するiPadプロの特色を活かせるアプリを使うと、その可能性が見えてくる。たとえば、ドローイング・アプリの「ペーパー(Paper)」だ。水彩ブラシに色をつけて、パレットに色を置き、さらに別の色をとって混ぜながら色を作れるなど、本物のパレットを使うように表現できる。
また、3Dコンテンツ作成アプリ「ユーメイク(uMake)」を使うと、「絵を描くのは得意だけど…」という人でも、スケッチをマルチタッチで動かしながら簡単に3Dモデルに仕上げられる。どちらも機能が絞り込まれていて、これまでの常識だとプロ向けツールとは呼べないかもしれないが、シンプルゆえに「描く」「作る」という行為に集中できる。そうしたアプリを使うと「写真を扱うなら機能豊富なフォトショップ」というような機能へのこだわりが停滞に思えてくる。
写真のAffinity Photo
WWDCの基調講演でもデモが披露されたiPad版の「Affinity Photo」、Mac版の機能の多くを備え、そしてApple Pencilを使って快適に編集作業を行えるようにデザインされている。
3DモデリングのuMake
3Dモデリングのツールは操作が複雑で、ツールの習得だけで一苦労だったが、「uMake」は平面的なスケッチをマルチタッチで動かし、手書きでデザインを調整しながら3Dモデルを完成できる。魔法のようなツール。