Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日:

本格化するスキャナアプリを見定める

著者: 栗原亮

本格化するスキャナアプリを見定める

iPhoneがスキャナになるって知ってましたか? アドビも参入したことで盛り上がっていますが、Macユーザの観点からはどのアプリが向いているのかを確かめてみました。

本格化するスキャナアプリを見定める

ついに本命登場か?

事務におけるペーパーレス化が提唱されて半世紀以上が経過しようとしていますが、まだまだ紙の書類を扱うシーンは多く、それらをデジタル化するのは大変な労力を伴います。

そうした中、近年急速に実用性が増してきたのがiPhoneのスキャナアプリです。2017年6月にアドビシステムズからその名もズバリな「アドビスキャン」が登場したからです。

パフォーマンスは優秀

アドビといえばクリエイティブツールの名門ですから、これは期待せざるを得ません。早速、試してみることにしました。

アドビスキャンを起動するとアドビIDの入力を求められますので、登録または新規作成します。すると、すぐにカメラ画面に切り替わるので、机の上にある書類にカメラを向ければ自動的にシャッターが切れます。

撮影画像は自動補正され、さすが画像処理のノウハウに長けたアドビらしく、撮影条件が悪くなければほとんど修正なしにPDFデータの完成です。しかも、テキスト認識機能も備えているので内容で検索することも可能です。

これはスキャナアプリの決定版かと思ったのですが、現バージョンでは個人的な不満がいくつかあります。まず、標準解像度がやや低めなこと。そして、自動保存先がアドビ・ドキュメントクラウドが標準なのはよいのですが、アイクラウド・ドライブは書き出しメニューなどでないと保存できないことです。自動撮影と補正の精度は「スキャナ・アップ(Scanner App)を上回ることもあるのですが、撮影画像のクラウド保存については同アプリにおよびません。現状ではクリエイティブ・クラウドなどアドビのサービスを利用している人以外には勧めにくい部分も感じられます(アプリの性質からして仕方ありませんが)。悩ましい面はありますが、下記の比較表を参考に最適なアプリを選んでください。

(1)「Adobe Scan」を起動し、書類などにカメラをかざすと自動的に輪郭を認識してシャッターが切れます。画面ではわかりにくいのですが、動作は軽快で放っておくと何枚も撮影してしまうので注意が必要です。

(2)撮影した写真は自動補正されます。この画面で回転やトリミングなどの編集機能もあり、このあたりの使い勝手の良さはアドビ製品ならではです。

(3)PDFはAdobe Document Cloudに保存されます。利用にはMac版またはiOS版のAcrobat DCが必要です。サブスクリプションでは月額1380円(Acrobat Standard DCの場合)という価格がネックになるかもしれません。

(4)また、共有メニューを使えばAirDropやiCloud Driveへの書き出しも可能です。

(5)「Scanner App(旧称Scanner mini)」も無料のスキャンアプリで、自動シャッターや補正機能、テキストOCRなどを備えています。輪郭の認識などはAdobe Scanよりわずかに遅いですが、通常の用途では大きな問題はありません。

(6)Scanner Appでは主要なクラウドサービスに保存できるのがメリットです。特にiCloud Driveへの保存機能はアップルユーザにとっては大きなメリットです。

(7)主要なスキャナアプリの機能を比較してみました。それぞれ強みがありますので、自分のニーズに最適なアプリを選んでみるとよいでしょう。

 

ライティングを工夫してスキャン品質を上げる

自宅で撮影を失敗した理由

手軽にiPhoneでスキャンできるようになったのは良いのですが、なぜか自宅の机でスキャンするとたびたび撮影の失敗に見舞われました。外出先の喫茶店ではこうした現象は起こらなかったので、何が悪いのか違いを考えてみたところ「光源」の位置が影響していることに気がつきました。

私がよく行く喫茶店では頭上に多くの照明が配置されていて、場所によっては窓からの自然光も入り込むため手元の書類に自分の手の影が落ちるということはほぼありません。しかし、自宅の机では頭上の背後にシーリングライトがあるため、手元に影が落ちやすいというのが理由の1つです。

さらに、手元が暗くなるのを防ぐために設置したデスクライトの色温度が室内照明よりも高く、撮影した書類の一部分が青っぽくなってしまうというのも撮影失敗の理由でした。

美術館でも用いられる方法

この原因が明らかになったことで、ある対策を思い出しました。美術館や博物館で収蔵品の撮影をしていたカメラマンから聞いた話で、左右から均等に同じライトで照射するという技です。

もちろんこれはプロのテクニックで、機材などは真似できませんし、そもそも手軽にスキャンしたいという目的からもずれてしまいます。そこで思いついたのは、手頃な価格で販売されているUSBライトを2つ用意して撮影するという方法です。A4サイズの範囲をスキャンするのであれば十分な光量が得られますし、同じ製品を使えば色温度も揃うので先ほどのような失敗も少なくなるはずです。

早速、自宅の机に設置して撮影してみたところ、思った以上の効果がありました。アプリの自動補正の精度も心なしか上がったように感じられます。

しかも、平面の書類だけでなく少し厚みのある立体物もきれいにスキャンできるというのはうれしい誤算でした。この方法を使えば、小物のコレクションなども簡単にデータベース化できるようになるので活用していきたいと思います。

ライティングのちょっとした工夫で撮影のクオリティがアップしますので、皆さんも試してみてはいかがでしょう。

(1)スキャンアプリのよくある失敗が光源のコントロール(ライティング)です。片側からの照明だと部屋の色温度と合わずに色がずれたり、撮影する手の影が写り込んだりします。

(2)クリップで机に固定できるUSBライトを2つ購入しました。明るさはそこまで重要ではなく、2つとも同じモデルにするのがポイントです。そうすれば色温度を共通にできるからです。写真は、エレコムの「LEC-C012シリーズ」(【価格】2800円程度)です。

(3)LEDライトを左右斜め上から照射します。ここでは光沢感のある紙製のチケットを、A4サイズのコピー用紙に乗せています。照明が反射しないように角度を微調整したらアプリで撮影します。

(4)スキャン解像度は高くありませんが、高精度なフラットベッドスキャナで撮影したように綺麗にスキャンできていることがわかります。影の写り込みや照明による色ムラもありません。

(5)この方法だと立体物のスキャンにも応用できます。パスケース程度の厚さであれば、まったく問題なくスキャンできました。

(6)さらに厚みのある鉄道模型をスキャンしてみました。光を反射するパーツがあるため難易度はやや上がりますが、コレクションの記録用途にも使えそうです。

もっと媚薬

ここではペラもの書類や立体物のスキャンについて紹介してきましたが、場合によっては雑誌やノートのように製本された厚みのあるものをスキャンしたい場合もあります。その場合は、iPhoneを固定する長めのフレキシブルアームと自動スキャン機能を備えたアプリを組み合わせると、ページをめくりながら連続して撮影できます。いわゆる「非破壊自炊」と呼ばれる手法ですが、実際のところは手間と品質を考えると書籍のスキャンなどには適していません。もちろん、著作権法に抵触しない範囲で利用してください。個人的には、過去に作成した手書きの取材ノートをデジタル化してバックアップする際に使っています。捨てるのが躊躇われていたノートを処分できるのでスッキリしますよ。