デジタルデータの保存に取り組む非営利組織「Internet Archive(インターネット・アーカイブ)」がMacintoshコレクションを公開した。HTML5時代のWEBブラウザ向けにサポートされたエミュレータを用いて、誰でも簡単にWEBブラウザ上で「MacOS System 7.0.1」といったMac OSや当時のソフトを体験できる。
ソフトウェアの歴史を保存
初代Macintoshから数えると、Macの歴史はパソコンの歴史と呼べるほど長く、OS Xより前のMac用OSに触れたことがないというMacユーザが今や珍しくない。そんなクラシックMac OSを、現代でも簡単に体験できるような環境が最近になって整った。非営利組織インターネット・アーカイブがMacintosh初期のOSやソフト、ゲームなどのコレクションを公開したからだ。ローカルで動作させるためのISOイメージも用意されているが、ジャバスクリプト(JavaScript)ベースのエミュレータを使ってWEBブラウザ上でロードして操作できる。
インターネット・アーカイブは、デジタル形式のデータのインターネット図書館として1996年に設立された。映画、テレビ番組、書籍、音楽といったマルチメディアコンテンツ、WEBページ、ソフトウェアなどをライブラリに収蔵し、一般に公開している。ソフトウェアのアーカイブは、これまでにMS−DOSゲーム、1970~1980年代のコンソール・ゲーム、Amigaプログラム、Apple IIプログラムなどを公開してきた。Macintoshコレクションは1984年から1989年を中心にした約40のプログラムでスタートし、その後の拡大で1990年代のソフトにもコレクションを広げている。
GUIの衝撃を追体験
そうした古いOSやソフトに今アクセスできる価値を一言で言い表すと「体験」である。Macは搭載CPUをモトローラの680×0からPowerPC、インテル製プロセッサに変えてきた。今では正常に動作するクラシックMac OS時代のハードウェアは少なく、その頃のOSやソフトを体験するにはエミュレータを使うしかない。
インターネット・アーカイブはMacintoshコレクションに、ハンパ・ハグ氏が開発したMacintoshエミュレータ「PCE」をHTML5時代のブラウザで実行できるようにポートしたものを主に採用している。それによってローカルエミュレータの知識やスキルを持たない人でも、誰でも簡単にワンクリックで680×0時代のOSを体験できる。
実際に使ってみると、ディスクを読み込む間まで再現されていて、じりじりと待たされる感覚がかつてのユーザには懐かしい。使ったことがない人たちにとって、Macintoshのイメージは「グラフィカルユーザインターフェイスの開拓者」といったところだろうが、それは功績の一部に過ぎない。当時のプログラムには、小さな白黒ディスプレイとわずかなメモリの制約の中で人々のためのパソコンを実現したアイデアが存分に詰まっている。
こうしたクラシックMacintoshを体験したら、ぜひともインターネット・アーカイブで「Macworld」を検索してみてほしい。Macintoshコレクションのライブラリには含まれていないが、マックワールド誌のバックナンバーが数多くアーカイブされている。タイムスリップというといささか大げさだが、当時の記事や人々の反応も併せてクラシックMac OSやソフトを体験すると、リンゴをかじるぐらい簡単に操作できるコンピュータの登場に人々が興奮した様子をより肌で感じられるはずだ。
「MacOS System 6.0.8」、いわゆるシステム6は1988年にリリースされた、白黒画面向けで基本的にシングルタスクのOSだが、MultiFinderが改善され、コオペラティブな疑似マルチタスク環境が利用できるようになった。【URL】https://archive.org/details/mac_MacOS_6.0.8
シリコン・ビーチ・ソフトウエアが開発した初期のMacintosh用のアクションゲーム「Dark Castle」。初期のMacintoshでしか動作しなかったが、サンプルサウンドとエフェクトが高く評価され、後にリメイク版が製作された。【URL】https://archive.org/details/mac_DarkCastle_1_2
インターネット・アーカイブで読める1984年のMacworldプレミア号、「Macデスクトップ・ツアー」や「Macの内部」といった特集ページが組まれている。【URL】https://archive.org/details/MacWorld_8404_April_1984_premier