レティナ対応モデルのiMacやLGと共同開発された新型モニタなど、アップル界隈でのハイエンド・ディスプレイといえば「5K」規格がスタンダード。この流れに乗れずに5K対応が遅れていたMacプロだったが、macOSのアップデートによりついに利用可能になった。
待望のアップデート
ディスプレイの高解像度化はコンピュータ、特にアップル界隈ではここ数年で大きく進歩した分野の1つだ。アップルの高密度ディスプレイの代名詞「レティナディスプレイ」は、2010年に登場したiPhone 4で初めて搭載され、2012年にはiPadやMacBookプロなどへと採用モデルを増やし、2014年には27インチサイズで5K解像度を持ったiMacが発表された。
この流れに取り残されてしまったのがMacプロだ。アップルとLGが共同開発した「ウルトラファイン5Kディスプレイ(UltraFine 5K Display)」は、iMacと同じクオリティを持つディスプレイを採用した最先端モデルだが、接続にサンダーボルト3を必要とするため、これまではMacBookプロ(2016年モデル)のみが5K出力に対応。Macプロは4K出力までと公式にも表明されていた。
しかし、2017年1月下旬にこの状況が変わった。macOSのアップデート「10.12.3(16D32 )」の提供後、それまでウルトラファイン5Kディスプレイとの接続時は4K出力までしか選べなかったものが、標準で5K出力されるようになったのだ。
これに呼応するように、公式サイトもMacプロの仕様をアップデートし、「最大3台までの5Kディスプレイをサポートする」と記述を改めた。従来までMacプロでデルの「UP2715K」やHPの「Z27q」といった5Kディスプレイを接続するには、ディスプレイポート(DisplayPort)ケーブルを2本使って接続する必要があり、かつ2つの異なるバス(ポート)からケーブル出力する必要があったため、5Kディスプレイは実質1台しか使えない状況だった。今回の件はこの制約を取り払うという意味でも、非常に有意義なアップデートだといえる。
接続方式への懸念
非常に喜ばしいことだが、懸念事項として挙げられるのは、アップルの公式サイトにある技術文書が更新されず、正確な利用条件が不明確なことだ。現時点で判明しているのは、MacプロのOSは10・12・3以降であること、ディスプレイはウルトラファイン5Kディスプレイに「サンダーボルト3ーサンダーボルト2」アダプタとサンダーボルト2対応ケーブルを使って接続する必要がある、ということだ。
また、今後発売される5Kディスプレイ製品が同様の方式での接続が可能か、という疑問もあるだろう。そもそもサンダーボルト2端子が5Kサイズの映像データを出力するには、前述のとおり2系統のバスからの出力をアグリゲーション(集約)しないとデータ帯域が足りない計算になる。
これをアップルは何かしらの方法で強制的にシングルバスから5K出力を実現していることから、Macプロもしくはウルトラファイン5Kディスプレイどちらか側に(本来の規格を超えた)特別な実装をしているものと推測できる。2016年内にサンダーボルト3を搭載した新しいMacプロがリリースされればよかったのかもしれないが、とはいえ既存のMacプロユーザでも5Kディスプレイだけの投資で環境をアップデートできる点では大きなメリットになる。限られた条件ではあるが、5K環境を導入するには絶好の機会が訪れたといえるだろう。
「システム環境設定」の[ディスプレイ]パネルを開いてみると、標準では擬似解像度2560 x 1440ピクセルのレティナモードで描画されている。また、[オプション]キーを押しながら[変更]を選んでアドバンスオプションを表示すれば、等倍解像度の5129 x 2880ピクセルも選択可能だ。
「システムレポート」から「グラフィックス/ディスプレイ」の項目を確認。カラー深度もP3色域をカバーする30ビットカラー(通称ディープカラー)がサポートされており、スペック上ではMacBookプロ(2016)と違いは見当たらなかった。