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新MacBook Pro全方位検証!?デザイン/タッチバー

新MacBook Pro全方位検証!?デザイン/タッチバー

技術の粋を極めた美しさ溢れるボディ

新MacBookプロは、デザイン面において大きなアップデートが施された。史上最薄・最軽量と謳われるその細部を見ていこう。

ユニボディのさらなる高みへ

「美しさを犠牲に強さを手に入れる」というロジックは、アップルには当てはまらない。たとえハイエンド向け製品であっても、妥協なき美しさと性能を両立させ続けてきたのがアップルだ。今回の新MacBookプロももちろんその例に漏れず、むしろMacBookプロ史上においてもっともミニマルなデザインに到達している。

特に大きなポイントは、これまで側面にあった各種のポートを整理し、4基(タッチバー非搭載モデルは2基)のサンダーボルト3(USB-C)ポートに集約したことだ。さらに、これまで黒い樹脂を使用していたヒンジ部分が天板と一体成型のアルミニウムになった点も、スタイリッシュな印象を与えるのに寄与している。ディスプレイを閉じた状態では、天板に鏡面仕上げのアップルマークが刻印されただけのソリッドなアルミニウムのプレートに見える。

新MacBookプロがこれまで以上にスマートな印象を与えるのには、本体の厚みも大きく関係している。前モデルの厚みは13/15インチともに1.8センチだったが、新しいMacBookプロは13インチが1・49センチ、15インチが1・55センチとさらに薄くなっている。これは現在のMacBookファミリーで最薄のMacBook(1・31センチ)に迫るものであり、かつて最薄だったMacBookエア(1.7センチ)を凌駕する。

性能のために美しさを犠牲にしない。新しいMacBookプロはそんなアップルの哲学が極限まで体現されており、ユニボディというコンセプトの高みへさらに一歩前進したといっても過言ではないだろう。

●前面と上面

幅と奥行きは、前モデルに比べコンパクトになった。重ねてみないと実感できないかもしれないが、幅、奥行きともに1センチ近く小さくなっている。併せて重量も、0.19~0.2キロ軽くなっている。

天板にあったアップルマークは、従来のディスプレイの光が投下する白いプラスチックが廃止され、MacBookと同様、鏡面仕上げのものになった。

●側面(左側)

かつて側面にあったマグセーフポートやサンダーボルト2ポートは姿を消し、サンダーボルト3(USB-C)ポートに集約された。また、厚みが前モデルに比べ、13インチで0.31センチ、15インチで0.25センチ薄くなっているのも大きな変化だ。

●側面(右側)

13インチモデルには、タッチバー搭載モデルと非搭載モデルが存在する。15インチモデルはタッチバー搭載モデルのみだ。仕様の変更によりヒンジ部分の凹みが少なくなり、タッチバーの上にある空きが広く感じるようになった。

●付属品

MacBookプロ本体に加え、USB-C電源アダプタとUSB-C充電ケーブルが付属する。13インチモデルに付属する電源アダプタは61W、15インチモデルは87Wとタイプが異なり、外寸や重量も少しずつ違う。

 

指先で直感的に操作できるTouch BarとTouch IDの真価

新MacBookプロの最大の注目ポイントは、何といっても新搭載の「タッチバー(Touch Bar)」とタッチID(Touch ID)だろう。果たしてこの新たな操作方法は、我々に何をもたらしてくれるのだろうか。

ファンクションキーの廃止

新MacBookプロでは、キーボード上のファンクションキーがなくなり、代わりにキーボード上部に有機ELパネルを用いた極細のマルチタッチディスプレイが組み込まれている。これが「タッチバー(Touch Bar)」だ。

このタッチバーに表示されるツールは、ユーザの今していることに合わせて自動的に変化し、それを指先で簡単にコントロールできる。明るさを調節したり、絵文字を入力したり、ブックマークを選んだり…。これまで固定化されていたボタンから、より柔軟で使い方が無限に広がる操作体系へ。この新しいインターフェイスこそが、アップルが新世代のノートブックに付与した新たな方向性の始まりなのだ。

【Touch Barの特徴 1】ファンクションキーに加えシステムの調整も可能

タッチバーは、従来のF1~F12のファンクションキーとしても使えるほか、ディスプレイの輝度や音量のアップダウンを行うシステムコントロールが可能。なお、通常時システムコントロールは省略表示になっているが、表示されている[>]をタップすると展開される。また、キーボードの[Fn]キーを押している間は通常のファンクションキーに変化する。

【Touch Barの特徴 2】自動的に表示内容が変わり、直感的に作業できる

タッチバーでは、使用しているソフトに応じて表示が自動的に変わる。「写真」ソフトで編集しているときには調整や傾き補正のツールが操作できたり、カラーバーから色を選べたりする。一部のソフトでは表示されるツールをカスタマイズ可能だ。シーンに応じたインターフェイスに切り替わる。動画や音楽制作ソフトでは、タイムラインを表示するサブディスプレイとしても利用できる。

【Touch Barの特徴 3】メールやメモのテキスト入力でインテリジェントな予測変換

タッチバーには、iOSデバイスのようなテキストの予測変換候補が表示される。「メール」や「メモ」などのテキストを扱うソフトでは、表示される入力候補をタップするだけで入力可能だ。また、一部のソフトでは絵文字の入力も可能となっている。滑らかにスクロールするタッチバー上の絵文字一覧から、必要なものを直接選べるのだ。なお、日本語の予測入力は現段階で不可能のようだ。

【Touch Barの特徴 4】電話応答やダイアログ選択もタップ1つでOK

Macのウインドウにダイアログが表示されたときは、タッチバー上に[キャンセル]や[OK]といったボタンがタッチバー上に表示され、タップ操作で直接選ぶことができる。これは、MacとiPhoneの着信連係機能にも役立つ。タッチバーに電話の発信者との名前と、[拒否]と[応答]ボタンが表示されるので、これまでのようにマウスポインタで通知バナーをクリックするよりも素早く応答できる。

【Touch Barの特徴 5】ログインも買い物も指1本でバーの右端にタッチIDを搭載

タッチバーの右端にはタッチIDが搭載され、安全かつ簡単な生体認証が可能になった。ログインパスワードの入力が不要になるだけでなく、iTunesストアなどでの購入でアップルIDのパスワードを入れる必要もなくなる。さらに、以前はiPhoneなどのタッチIDが必要だったアップルペイもMac単体で決済できる。なお、タッチIDセンサは電源ボタンを兼ねており、クリック感がある。

ソフトによってさまざまに変化するタッチバー

既存の技術で新しい価値を

新MacBookプロで採用されたタッチバーは、実にアップルらしい、よく考えられた革新的な入力インターフェイスだ。

キーボードは半世紀以上その形状をほとんど変えておらず、現在でも最速の文字入力インターフェイスといえる。検索キーワードのような単語や短文は音声入力が実用的になってきたが、長文となるとタッチタイピングには遠くおよばない。しかし、キーボードは押下するという操作しかできないレガシーな入力スタイルでもある。

そこで、このキーボードを補助しながら、Macをさらに便利に操作できるように開発されたのがタッチバーである。このキーボード上部に設けられたストリップ状のマルチタップディスプレイはユーザが今していることに合わせて自動的に変化し、その作業に関連したツールを表示してくれる。そして指でタップするだけで、そのアクションを簡単に実行できる。実際の使用感は実に快適で、指先によって滑らかにコントロールすることができ、また押し込むという余分な力も必要ない。

このタッチバーに関しては、単なるお遊び的なギミックだという声も一部で上がっている。また、キーボード、トラックパッドに続いて、もう1つの操作インターフェイスを設けることは操作の複雑化を招くという指摘もある。しかし、実際に使ってみるとそうした不安は払拭される。

アップルが得意とするのは、シンプル化だ。つまり、複雑で多くの人にとって難解であったものを誰もが使えるようにして、新たな可能性を提示することである。その点から見ると、実にタッチバーはよく考えられている。操作はあくまで横方向のみに限定することでシンプルにし、ちょうど画面を覗き込む視野内に設け、かつキーボードから手を離すことなく扱えるポジションに配置している。

そして、もっとも重要なのは、「すでに使い方を知っている」ツールが視覚的に表示されるという点だ。それらはファンクションキーやキーコンビネーション等を設定することで「奥から掘り起こす」ことは従来からできたが、それは慣れ親しんだ人だけのこと。そうでない人にとっては単なる複雑でしかないファンクションキー等の複雑な設定を、新たに誰もが自然に使える柔軟な操作体系へと昇華させた意味は大きい。

従来のファンクションキーがよい人はそのように使うこともできるし、多くの人にとっては複雑なパソコン操作をより直感的に行う方法として、シーンによってはキーボードとトラックパッドも触れることなく操作する方法として、1つのアクションしか行えなかった固定的なボタンに代わって新たな価値を提示したタッチバーは、今後のMacやアップルデバイスの行方を左右する「「非常に面白い方向性の始まり」だといえよう。

【システム】輝度や音量などのシステム変更に便利

タッチバーの初期画面は、「コントロールストリップ」と呼ばれる輝度、消音、音量、Siriの4つが表示されており、このコントロールストリップの一番左にある[〈]ボタンをタップすることで、従来のファンクションキーと同様に輝度を変えたりミッションコントロールを使ったりできる「システムコントロール」となる。輝度や音量をタップするとスライダに変化し、ドラッグで調整できる。

通常のファンクションキー(F1~F12キー)を表示させたいときは、[fn]キーを押すことで表示される。また、スクリーンショット時には[選択した部分]や[ウインドウ]などが表示される。これらの操作は、他のアプリを操作しているときにも変更可能だ。

初期画面

コントロールストリップ展開時(システムコントロール)

[fn]キーを押したとき

【Finder】ツールバーをダイレクトで操作可能

デスクトップ上でファインダを最前面にすると、タッチバーにはまずファインダ上部にあるツールバーとほぼ同じ項目が表示される。したがって表示方法の切り替えやクイックルックが利用できるほか、「共有」メニューを開くと共有先のサービスのロゴがあしらわれたボタンが展開し、ワンタップで選べる。エアドロップ(AirDrop)やメッセージで素早くテキストや画像を共有したいときにも、わざわざ「共有」メニューを開かなくてもよいのだ。

また、リスト表示などにすると名前や作成日付などダイレクトに並べ替え方法を選べる。従来はプルダウンメニューをいちいち開く必要があったが、ワンタップで変更できるのはスムースな操作感である。

ファインダを最前面にしたとき

[共有]メニューをクリックしたとき

【Safari】お気に入りを選んでタブを切り替えられる

サファリを起ち上げると、まずタッチバーにはウインドウのツールバーとほぼ同じ項目が表示される。しかし、アドレスバーをタップすると、お気に入りに登録してあるWEBサイトがロゴとともに表示されるので、いちいちディスプレイを見なくても目的のWEBサイトにアクセスできる。

また、タブを追加するボタンも表示されるので、タッチバーのみで次々と別のWEBサイトを開くことができる。さらに、サファリで動画を開いてフルスクリーン再生すると、タッチバーがリモコンのようになって、再生や停止はもちろん、タイムラインをドラッグすることでスクラブ操作も可能だ。

アドレスバーをクリックしたとき

「お気に入り登録」をクリックしたとき

【メール】返信やメールボックスの移動が快適に

「メール」ソフトでは、ツールバーにあるボタンをタッチバーで直接タップできるので、新規メールやメールの返信がこれまで以上にスムースに行える。まず、メールの移動では移動先もタッチバーで指定できる。また、「フラグ」を付けたいときや、メールをゴミ箱に移動させたいときも、タッチバーから簡単に選択可能だ。

メールの本文作成中にはテキスト入力の支援が表示され、これまでMacでは入力しにくかった絵文字が扱いやすくなった。よく使う絵文字や[食べ物と飲み物]などのジャンルをタッチバー上で選択できる。送信ボタンもタッチバーに表示されるので、ほとんどキーボードから手を離さずに作業が完結するだろう。

メールを選択したとき

テキストを入力をするとき

【プレビュー】フルスクリーンで威力を発揮する

プレビューはタッチバーの恩恵を多く感じることができるソフトの1つだ。特に、画像をフルスクリーン表示することで、ディスプレイ側には画像だけを、タッチバーにはツールバーを表示して編集、といった操作が可能になる。また、マークアップ機能を使うと、フリーハンドツールやテキスト追加ボタンがタッチバー上に表示される。

画像にテキストを追加する場合は、フォントや文字サイズ、そしてカラーをタッチバーのみで変更可能だ。線やオブジェクトも同様で、塗りつぶしカラーや線の幅、種類(実線や破線)の変更がやはりタッチバーだけで行える。そのほか、切り抜きや回転と反転などもタッチバーで操作可能だ。

マークアップ機能を選択したとき

テキストを追加したとき

「塗りつぶしカラー」を選択したとき

【写真】まるで専用の現像コントローラ

「写真」ソフトもタッチバーをうまく活用できる標準ソフトだ。たとえば、傾き補正はこれまでマウスポインタ右側のダイヤルをドラッグしていたが、タッチバーのスライダでより直感的かつ滑らかに操作可能となった。

また、調整を行うときも[ライト][カラー][白黒]と表示され、それぞれタップするとスライダがプレビュー付きで表示される。まるで専用のコンソールで現像を行っているような使い心地だ。そのほか、ライブラリを表示しているときはフィルムストリップのようなサムネイルが表示されドラッグで写真をブラウズできるし、お気に入り(♥)や回転などもタッチバーだけで操作可能だ。

「編集」機能を選択したとき

サムネイル表示

トリミングしているとき

カスタマイズでもっと使いやすくできる!

自由にカスタマイズ可能

システム環境設定の[キーボード]パネルでは、システム全体で使うコントロールストリップのカスタマイズが行えるほか、タッチバー自体の挙動を変更できる。

たとえば、コントロールストリップを展開することにより輝度や音量などのシステム変更ボタンがタッチバー全体に表示されるが、これを固定で表示させることができる。また、アプリでタッチバーにより多くのツールを表示させたいときは、コントロールストリップを非表示にして代わりにツールを配置できる「Appコントロール」が用意されている。

また、対応するソフトの一部では、[Touch Barをカスタマイズ]というメニューが備わっており、タッチバーに配置するツールなどをカスタマイズできる。

カスタマイズの方法は、ディスプレイ側に表示されたツールを画面下部にドラッグしてタッチバーの設置したいところにドロップするだけ。デフォルトに戻すときは[デフォルトセット]をドラッグ&ドロップすればOKだ。この操作方法は、Macで普段ツールバーをカスタマイズする方法と同じなので、比較的すぐに覚えられるだろう。

ただし、タッチバーがカスタマイズできるかどうかはソフト次第となっており、とても機能の多いプレビューや「写真」ではカスタマイズ不可能だ。

●タッチバーのレイアウトを変更

システム環境設定の[キーボード]パネルで、[コントロールストリップをカスタマイズ]をクリックすると、このような画面になり、コントロールストリップのレイアウトが変更できる。

●タッチバーの設定(ファインダ)

ファインダでは豊富にツールが用意されている。より広くツールを配置したいときは、[キーボード]パネルの[Touch Barに表示する項目]を[Appコントロール]に設定し、コントロールストリップを非表示にするとよいだろう。

●タッチバーの設定(メール)

メールでは受信メッセージに対する操作を増やすことができる。[返信]と[全員に返信]が別個のツールになっているので、両方設置しておくと使い分けが便利だろう。

●タッチバーの動作を変更

システム環境設定の[キーボード]パネルには、[Touch Barに表示する項目]と[Fnキーを押して]というプルダウンメニューが追加されている。

●ファンクションキーを設定

システム環境設定の[キーボード]→[ショートカット]のサイドバーで[ファンクションキー]に追加したソフトを最前面にするとF1~F12のファンクションキーに固定できる。

ログインもApple Payも指一本で

基本はiPhoneと同じ

タッチバーとタッチIDを搭載したMacBookプロの設定アシスタントでは、タッチIDへ指紋の登録が可能になっている。指紋を登録しておけばログインはワンタッチで済むようになる。macOSシエラでは、アップルウォッチによる自動ログイン機能も搭載されているが、こちらのほうがよりスムースだろう。指紋の追加はシステム環境設定の[Touch ID]パネルからも可能だ。

タッチIDに対応したことで、アップルペイにも単体で対応可能となった。システム環境設定には新たに[WalletとApple Pay]パネルが追加されているので、クレジットカードを登録すればMac単体で決済が行える。

ただし、MacBookプロにNFCやFeliCaが内蔵されているわけではないため、使えるのはオンラインショッピングのみ。つまり、iDやクイックペイでの決済は不可能なので、iPhone 7のアップルペイよりも利用できるクレジットカードは少なくなる。

タッチIDは、iTunesストアやMacアップストアの購入認証にも使える。今のところアップルペイに対応したWEBサイトはごくわずか(アップルのWEBサイトも未対応!)なので、当分はソフトやコンテンツ購入での利用がメインとなるだろう。

●ログインにも買い物にも使える

新MacBookプロのタッチバーの右にタッチIDが搭載された。これにより素早いログインやiTunesストア、Macアップストアでのお買い物が可能になった。

●まずは指紋の登録

指紋の登録は初回起動時に始まる設定アシスタントか、システム環境設定の[Touch ID]パネルで行う。タッチバー右端のタッチIDセンサに指を当てたり離したりする。iPhoneのように振動フィードバックはない。

●Macでアップルペイを登録

アップルペイを始めるには、システム環境設定の[WalletとApple Pay]パネルでクレジットカードを登録。クレジットカードはFaceTimeカメラで読み取ることができるので、読み取りエリアにカードが納まるようにかざそう。クレジットカードを登録すると、[WalletとApple Pay]パネルでカードの管理や明細を表示できるようになる。これでWEBサイトで決済可能だ。