第17回 やり抜く力はあるか?「才能が大事」は努力しない人の言葉
「努力」と「情熱」こそが勝ち負けを決める
たしかに、私はクラスでいちばん頭がいいとは言えないかもしれない。でもきっと誰よりも、粘り強くやり抜いてみせる」それでもまだ父が聞いていたら、最後にこうつけ加えよう。「お父さん、長い目で見れば才能よりも重要なのは、グリット(やり抜く力)なのよ」(アンジェラ・リー・ダックワース)
元マッキンゼーの心理学者のアンジェラ・ダックワースはマッカーサー賞(天才賞)を受賞するほどの才女ですが、子どもの頃は父親から出来がよくないと愚痴られていたそうです。その彼女が見つけたのがやり抜く力(GRIT)です。多くの人は成功のためには才能が大事だと考えがちですが、実はやり抜く力のほうが重要なのです。
たとえば、オリンピック選手たちは試合までの長い道のりの中で恐ろしいほどの努力を積み重ね、結果に結びつけているのでしょう。しかし、それを私たちは、彼らには「才能があるから」だと決めつけ、「努力したから」だとは考えません。才能という言葉はそれほど便利で、これを使うと自分たちの努力不足を認めずにすむのです。
やり抜く力には、パッション(情熱)が必要で、これがなければ行動を続けられません。自分の時間をワクワクするものに使い、それを継続することが鍵になります。興味、関心を持てるものが見つかったら時間をかけて掘り下げるのです。わからないことが見つかるたびに、それを興味の対象にしていくのです。適切なアドバイスやフィードバックをくれるコーチやメンターを持つことで情熱を失わずに、行動を習慣化できるようになります。オリンピック選手の陰には、優秀なコーチがいるのを見ればこのメンターの存在が欠かせないことに気づきます。
本書の数多くのケーススタディからは、やり抜く力によって私たちの人生がいかに変わるかを学べます。優秀なアメリカのウェストポイント(米国陸軍士官学校)の事例では、成績よりもGRITのほうが重要であることがわかります。どんなに入学時の成績がよい人でも、やり抜く力がなければこの学校の過酷な夏の合宿(ビースト)をパスできなかったそうです。今では、「GRITスコア」という評価システムを使うと誰が最後まで残れるかが事前にわかるようになっています。それほどまでに、やり抜く力には価値があるということ。その力を得るまでには時間がかかるかもしれませんが、いったん身につけたらそこからは、積み重ねを続けていくだけなのです。
徳本昌大
iPhoneやソーシャルメディアのビジネス活用を絶えず考える読書ブロガー。複数の広告会社勤務後、コミュニケーションコンサルタントとして独立。現在は、株式会社Ewil Japan、株式会社ビズライト・テクノロジーの取締役としても活動中。
【URL】http://tokumoto.jp/