電子書籍ストアの選び方
日本の電子書籍市場は、2012年10月にアマゾンがキンドルを、2013年3月にアップルがiBooksストアを国内でサービスイン、ブックウォーカーなどの日本勢と合わせて戦国時代に突入するかと思われていました。しかし、現在ブックウォーカー向けに制作されたほとんどの電子書籍がiBooksストアやキンドルでも販売されており、共存共栄の道を進んでいます。
コンテンツが横並びなら、どうやってストアを選ぶといいのでしょうか。実は、キーとなるポイントが対応するビューアであることに気づいている人は少ないように思えます。
というのも、本にはさまざまな判型が存在します。雑誌や写真集、文庫本、コミックスなど判型はバラバラですから、それを1つのデバイスで最適に表示するのには無理があります。本とは、コンテンツの在り方そのものがビューアとして機能するメディアだからです。
そのため電子書籍では、ビジュアル主体の雑誌やマンガは画像データとして、テキスト主体の本はテキストデータとして多くが配信されていますが、タブレットやスマートフォンに対応すれば十分と考えているストアが多いのです。ここに無理があると考えています。
その点、アマゾンのキンドルは、MacやウィンドウズPC、iOS、アンドロイド用のアプリに加えて、キンドル・ペーパーホワイト(Kindle Paperwhite)などの電子ペーパーを使った専用ビューアを販売しており、もっとも幅広い閲覧環境を提供しています。
iPadとキンドル
最終的に落ち着いたのは9.7インチのiPadエアとキンドル・ヴォヤージ(Kindle Voyage)の組み合わせです。iPadエアはマンガ用、キンドルは小説用と割り切ることが重要でした。クラウドで同期がしっかり取れるため、複数のデバイスを使い分けるのは簡単です。
キンドルで小説を読む
キンドル・ヴォヤージは、ボディサイズがA6判の文庫本とほぼ同じ大きさです。ディスプレイ部分は一回り小さいのですが、フォントや文字サイズを自由に設定できるため、むしろ紙の本より読みやすいかもしれません。
iPadでマンガを読む
9.7インチのiPadエアは、A5判のコミックスと同等のサイズなので、単ページ表示ならば快適に読めます。見開き表示にこだわるなら12.9インチのiPadプロがおすすめです。写り込みが気になるならアンチグレアフィルムを貼ってみては?
電子ペーパーの必要性
私はiBooksストアが始まったとき、iPadエアで小説を一冊読んでみました。レティナディスプレイでテキストはキレイに表示されますが、部屋を間接照明にして寝そべりながら読むと、眩しくてたまりませんでした。目に光の圧力のようなものがかかる感じがあり、読後に目を閉じて眠ろうとしてもチカチカして寝つきも悪くなりました。ブルーライトカットのメガネをかけたり、表示方法をセピアにしたりしましたが、問題は解決しません。
そこで、アマゾンのキンドル・ペーパーホワイトを購入して小説などを読んでみたところ、暗い部屋でも無理なく読めることに気づきました。iPadよりも軽いので手も疲れません。つまり、この電子ペーパーは書き換えが遅く、モノクロ16階調しかありませんが、テキストベースの電子書籍を読むには最適なディスプレイだったのです。
そして、キンドルを使い始めて気づいたことがもう1つあります。環境光の色温度についてです。これは蛍光灯だったり白熱電球やLEDだったり、屋外なら太陽光です。電子ペーパーは紙の本と同じく反射式なので自然に調和しますが、iPadなどの液晶ディスプレイは基本的に同じ色温度で光っており環境光と一致しません。デジタルカメラも苦手なミックス光源になり、これも目が疲れやすい原因の1つではないでしょうか。
キンドルなら環境光と色温度が一致する
iPadで電子書籍を読むと目が疲れやすいのは、光源を見つめることにもありますが、環境光(部屋の照明)と色温度が異なることも原因ではないでしょうか。上の写真は、ホワイトバランスを固定して撮影したものですが、キンドル・ヴォヤージの地色は背景と同じ色合いですが(左)、自ら光っているiPadは青っぽく浮いています(右)。人間の視覚には優れたオートホワイトバランスが備わっていますが、色温度が混在すると混乱してしまい、それが目の疲れに現れると考えています。ただし、キンドル・ヴォヤージはフロントライトを備えているので、明るさを最小に設定する必要があります。
雑誌はスピードが命?
一方、雑誌やマンガといったレイアウト固定の電子書籍には、iPadが最適だといえます。特に雑誌ではページ送りのスピードが快適さに直結します。雑誌は前から後ろへ順番にも読むものではないからです。紙のように読みたい記事をパラパラめくって探すことは難しいですが、その代わりに目次からジャンプすることができます。
さらに、見開きで雑誌やマンガを無理なく読むなら12・9インチのiPadプロが唯一のデバイスです。ただし、本のように閉じることはできないので持ち運びの便はよくありません。
紙の本に勝る万能な電子書籍ビューアは、個人的にまだ存在しないと思っているので、当面はこのように内容に応じて最適なデバイスを選ぶしかありません。本というメディアは実に奥深いものだと実感しました。
リフロー型と固定レイアウトが混在する作品
ちょっと困りものなのが基本的にリフロー型なのに、演出上固定レイアウトのページが挿入されている電子書籍です。キンドル・ペーパーホワイト系のデバイスでは読みづらいので、その部分はiPadで切り替えて読み、再びキンドル・ヴォヤージに戻りました。戻ったときに同期するかどうかのダイアログが表示されるので、シームレスな連係が取れていることがわかります。
その場でキンドル本を買える
キンドルには、リーダとストアがシームレスに利用できるメリットもあります。キンドル本しか表示されないのでアマゾンのWEBサイトのように余計なノイズがありません。さらに、シリーズもののタイトルはまとめ買いもできるのが便利。1冊ずつワンクリックすると小額の決済が連続しクレジットカードのポイントが貯まりにくいという問題も回避できます。
9.7インチiPadプロに期待
9.7インチiPadプロのみの機能ですが、環境光の色温度に合わせてディスプレイの色温度も調整することができます。液晶ディスプレイでも紙の本のように読めるようになるかもしれません。
iOSアプリ内で本が買えない
iOSデバイスのキンドルアプリはストア機能が省かれており、キンドル本を購入するにはサファリでアマゾンにアクセスするしかありません。アマゾンのWEBサイトでキンドル本を買おうとすると、関連グッズまでヒットしてしまうため、著名なタイトルであるほど見つけにくくなります。
【KEYWORD】リフロー型と固定レイアウト
リフロー型の電子書籍とは、テキストデータで提供され、リーダ側でフォントやサイズを変えられる形式。固定レイアウトは雑誌やマンガで使われ、PDFや画像データで提供されているもの。