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「読む」~『KISSジーン・シモンズのミー・インク』書評

著者: 徳本昌大

「読む」~『KISSジーン・シモンズのミー・インク』書評

第12回 ロックスターに学ぶビッグな成功のためのユニークな「兵法」

失敗を恐れず「もっと」を追求する

KISSはロックバンドもブランドにすることができると示したパイオニアだ。ブランド化によって収入源を拡大することができた。グッズの販売も自分たちでコントロールしていたので中間搾取にも遭わなかった。アルバムにはグッズの注文用紙を同封した。(ジーン・シモンズ)

KISSといえば、白塗りにド派手なメイクが特徴的なアメリカの伝説的(といってもまだまだ現役なのがすごい!)ハードロックバンド。本書は、そのKISSメンバーの代表格、ジーン・シモンズが記した本気のビジネス書です。ロックミュージシャンが書いた本だと思えないくらい、ビジネスにおける成功のノウハウが詰まっています。

彼は、あらゆるものをヒントにして自分を変えていきました。イスラエル移民の貧しい少年が、アメリカで成功を収めていく過程はワクワクする物語であると同時に、学びの宝庫でもあります。彼はアメリカで初めて英語やビジネスについて学び、その後のKISSのブランディングやファンマーケティングに応用していきました。ソーシャルメディア時代以前にこれだけのビジネスモデルを考え、実践していたのが驚きです。KISSは、スタイル、音楽、ファッション、マガジンなどあらゆるものをブランドにして、ファンを一気に囲い込んでいきました。

彼はユダヤのわかりにくい名前を捨て、シモンズというロックっぽい名前に改名するなどスタイルにもこだわります。成功のために、自らの名前すら捨てたのです。ロックは白人の文化だと見抜き、自分で自分を命名する。改名時にほかのロックミュージシャンとの名前との比較を行うなど、マーケティング的な視点で自分を売ろうとする姿勢に共感しました!

40年以上の活動の中でKISSのCDとDVDの売上は1億枚を突破し、世界中で販売するライセンス商品は5000以上。卓越したビジネスセンスで、大きな実績を残しています。マーケティング戦略を自ら立案し、映画やほかの事業などでも、次々と成功を手に入れました。

彼が成功し続けてきた理由はただ1つ。失敗を恐れなかったからです。いつでも、いきなり本番に飛び込んでチャレンジをするから、成功のスピードが速い。直感に従いすぐに動くことで、チャンスを短期間でものにします。楽譜が読めなくても作曲はできるし、面倒な契約書も成功のためならあっという間に作れてしまう。できないという言い訳は、彼にはないようです。

KISSジーン・シモンズのミー・インク

ジーン・シモンズ著

日経BP社/1944円

2016年4月刊

徳本昌大

iPhoneやソーシャルメディアのビジネス活用を絶えず考える読書ブロガー。複数の広告会社勤務後、コミュニケーションコンサルタントとして独立。現在は、株式会社Ewil Japan、株式会社ビズライト・テクノロジーの取締役としても活動中。

【URL】http://tokumoto.jp/