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TITLE13 滝の上のゾウ

著者: 鈴木陵生

TITLE13 滝の上のゾウ

ザンビアとジンバブエの国境にあるビクトリアの滝は、世界三大瀑布の1つでアフリカ最大の滝だ。僕らは滝にほど近い小さな街に滞在していたのだが、そこは世界中からの観光客と動物だらけだった。民家の上をヒヒが飛び交い、通勤の人々と一緒にイノシシ親子が歩く。さすがアフリカ、だ。

ある朝宿を出て目にした光景は、倒れかかった隣の家のフェンス、ひしゃげた木。周りには巨大な糞が転がっている。もしやと思い、宿のオーナーに尋ねると、やはり犯人はゾウだった。この街にはゾウまで出るのか。

「朝早く川辺に行けばゾウに会える」というオーナーの言葉を胸に、目当ての場所まで行ってみた。土産売りたちも集まるその場所で、いっこうに現れないゾウに待ちくたびれた僕は、土産売りの一人に聞いてみた。「すぐ来るから待て」と彼は言う。そして、おもむろに指差された遥か遠くの茂みに目を凝らせば、そこには巨大な影が。ゾウだ。

「着いてこい」。彼は土産物を抱えたまま歩き出した。川辺で水しぶきをあげるゾウの群れ。間近で見ると本当に大きい。一頭のゾウが、耳をパタパタさせてこちらを見ている。愛らしい仕草にほっこりしてふと振り返ると、土産売りがゆっくり後ずさりしている。そして一目散に逃げ出した! ただ事じゃないと感じた僕らは、必死に彼のあとを追いかけた。しばらく走ってから、彼は笑いながら言った。

「あの仕草は威嚇なんだ。危なかったね」

鈴木陵生(Ryosei Suzuki)

映像作家。2011年より夫婦で世界一周を始める。旅の様子を発信する映像サイト「旅する鈴木」が、平成26年度文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に。2014年11月、DVD&Blu-ray「World TimeLapse」(KADOKAWA)をリリース。【URL】 http://ryoseisuzuki.com

【PS】

土産売りの彼は、あのあとさらに笑いながら「追われたら逃げきれないんだぜ」と教えてくれました。うれしそうに。今回滞在した街のはずれは国立公園になっています。日中の出入りは自由ですが、レンジャーによる園内ツアーもあるので、次回は絶対それに参加したいと思います!