［Chapter 3］マネーツリー株式会社 山口賢造さん●デキるビジネスパーソンのとっておきソフト?

根っからのソフト好き

「ソフトはいろいろと使ってますね。たとえばパスワード管理なら『ワンパスワード（1Password）』、情報の管理には『ポケット（Pocket）』、RSSリーダは『リーダー3（Reeder 3）』を利用しています。もともとソフト好きなので、気になるものは、まずインストールして試してみています」

そう話すのは、マネーツリー株式会社のシニアマーケター・山口賢造さん。以前はアップルに務めていたこともあるそうです。同社は個人の向けの資産管理ソフト「マネーツリー（Moneytree）」を開発、提供している企業。2012年に起業した、いわゆるスタートアップです。最近では大手金融機関や会計ソフトメーカーとの連携も多いとのこと。「フィンテック（FinTech）」という言葉が市民権を得てきたことも、その成長の後押しをしていると山口さんは話します。

「私の仕事はマーケティングです。マネーツリーの良さを多くの人に知ってもらうため、プレゼンテーションをしたりイベントを企画したりしています」

こだわりのエディタを愛用

ソフト好きという山口さんに、特に愛用のものを挙げてもらいました。その1つが「オムニアウトライナー（OmniOutliner ）」です。

「アウトラインソフトは、米国などではよく使われてますが、日本ではややマイナーな印象があります。しかし実際に使ってみると、何かを思考するときに非常に有効です。情報の整理もできますし、セグメントに分けて考えることも可能です」

オムニアウトライナーを6年ほど愛用しているという山口さん。ソフトを開発するときのコンセプト作り、制作に当たってのプロジェクトの管理、そしてプレスリリースの作成などで主に活用しているそうです。

「文字列を移動させるときも、コピー＆ペーストでなくブロックで移動できるのが便利です。アイデアを自由に組み替える感じですね、自分の仕事にピッタリです」

文章作成に関しては、「Ommライター（OmmWriter）」も使っているとのこと。独特のインターフェイスで、最近人気のテキストエディタソフトです。

「起動するとフルスクリーン表示になり、風景などの画像が全面に表示される機能があるんです。同時にBGMも再生される。画面に表示されるのは文字だけですから、ヘッドフォンと組み合わせて使うと、文章を作成するという作業だけに没入できます」

Ommライターは、無駄のないシンプルな画面が気に入っているとのこと。特に集中して文章を書くときに使っているそうです。

「グラフィックを扱うときは『オムニグラフ（OmniGraffle ）』を活用しています。プレゼンテーションの資料を作成するときなどに威力を発揮してくれるソフトです」

オムニグラフでは、図形や矢印などのパーツを「ステンシル」と呼びます。ステンシルは、標準で搭載されているもののほか、インターネット上に数多くの種類が公開されています。そのステンシルを組み合わせることで、見栄えのする図版が簡単に作成できる点が愛用している理由だそうです。

「ガイドラインを使って、きれいにレイアウトを整えられる点もいいですね。現在ではアップルの『ページズ（Pages）』など、同様の機能が付いているソフトもありますが、オムニグラフは、かなり以前からこの機能をサポートしていました。ユーザのニーズをよく考えているところも好印象です」

こだわりは「使いやすさ」

数多くのソフトを使い分けている印象の山口さんですが、どのような方法でソフトの情報を得ているのでしょうか。実は会社や知人との会話で、新しいソフトを知ることが多いそうです。

「弊社のスタッフは18人なんですが、日本を含めて、実に8カ国のメンバーがそろっているんですよ。彼らは日本人とは違った観点でソフトをチェックしていたりするんです。その結果、思わぬソフトに出会うこともありますね」

最後に山口さんに、気に入っているソフトの共通点は何か、という質問をしてみました。

「『フィーチャークリープ』という言葉をご存じでしょうか。『機能を追い求める』といった意味です。ソフトがバージョンアップのたびに機能がどんどん追加され複雑になり、結果、使いにくくなることを指します。そういったソフトは、使っているうちに自然に避けてしまいますね。その点、オムニ社の製品にしろOmmライターにしろ、非常にシンプルで使いやすいところが気に入っています。私が愛用しているソフトの共通点は、そこにあると思います」（取材・文／矢口和則）