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CPUとGPU●新型iMacを速攻チェック!

CPUとGPU●新型iMacを速攻チェック!

待望の世代交代

モデルチェンジといえばやはり注目したいのは、内部プロセッサだろう。2014年はインテルCPUの更新が停滞した時期であったことも影響し、2013年モデルで採用された第5世代マイクロアーキテクチャ「ハスウェル(Haswell)」からマイナーアップデートされた「ハスウェル・リフレッシュ(Haswell Refresh)」への変更に留まらざるを得ず、実質5K解像度を持つ27インチのレティナディスプレイモデルが追加されるだけという状況だった。

しかし、今年は21・5インチモデルにMacBookプロと同じ、プロセスルールが22nm(ナノメートル)から14nmへと大幅に微細化された「ブロードウェル(Broadwell)」を採用。さらに27インチモデルは最新の第6世代CPUとなったスカイレイクへとアップデートし、さらに1世代進んだ形となった。

同時期にリリースされたモデルに、異なる世代のCPUを採用したのは差別化というよりは単にTDP(熱電力設計)と製造コストのバランスを見たチョイスである可能性が高い。理由はいくつかあるが、スカイレイクでサポートされたいくつかのフィーチャーを27インチモデルでも採用していないこと(後述)や、どちらの世代のCPUも同じプロセスルールで作られているということもあり、クロック数あたりの性能差が大きく出ないことなどが挙げられる。

これらを裏づけるデータとして、各所で上がり始めたベンチマークスコアから考察してみよう。コアi5/3.1GHz(5675R, Broadwell-K)を搭載する21・5インチモデルのiMacは、昨年リリースされたコアi5/3.5GHz(4690, Haswell Refresh)を搭載した27インチモデルに比べても、3%高いスコアを記録している。実際には同スペックではなく、現行モデルのほうがクロック周波数が400MHz低いことを考えると、17%近く性能が向上していることになる。

執筆時点では未出荷だったためCTOで選べるコアi7/4GHz(6700K, Skylake)モデルは推測値になるが、おそらくMacプロに搭載されるクアッドコアの「ジーオン(Xeon)」3.7GHz(E3-1225 v2, Ivy Bridge)を超えるパフォーマンスを備えるだろう。

iMacの内部

iMac 21.5インチ4Kレティナの内部。構造が極力シンプル化され、数少ないパーツで出来上がっていることがわかる。画面右下にあるのがロジックボードだ。

次世代への布石

グラフィックス(GPU)も世代交代が順調に進んでいる。27インチモデルに搭載されるディスクリート(独立型)GPU「AMD ラデオンR9」シリーズは、前モデルのiMac 5Kレティナから採用されているが、今回のアップデートでは最新版「Rx 300」世代に切り替わっている。こちらはハードウェアスペックは前世代の「Rx 200」シリーズのリフレッシュと呼べる位置づけだが、ソフトウェア的にはウィンドウズ10に採用された「ダイレクトX12(DirectX 12)」への対応、そして「オープンGL(OpenGL)」では4.3だけでなく「バルカン(Vulkan)」(OpenGL Next Generation)と呼ばれる次世代のバージョンへの対応が謳われている。

このバルカンは、レガシーな設計が蓄積しているオープンGLをリセットし、ゼロから構築し直して刷新するパフォーマンスを強く意識したAPIである。その中にはAMDが開発していたローレベルグラフィックスAPI「マントル(Mantle)」が組み込まれていることが特徴の1つだ。

重要なのはこの機能がプログラムが抽象化されていない、よりハードウェアに近い位置(「Near by Metal」と呼ばれている)からアクセスできるようになり、オーバヘッドの少ない状態で処理が実行されることで高いパフォーマンスを実現できるようになること。そしてこれはiOS 8から登場し、OS Xエルキャピタンでもシステムワイドに取り入れられたAPI「メタル(Metal)」と基本的な発想を同じところに持つ。つまり、Rx 300シリーズはハードウェアの設計段階からプログラムがGPUにアクセスされることが前提になっており、エルキャピタンでの動作向上はもちろん今後のシステムアップデートでもさらに最適化が進むことでその潜在能力を引き出してくれるいわば「眠れる獅子」のような存在だといえる。

内蔵GPUも必要十分に

一方で21.5インチモデルが採用するのは、CPUに内蔵される「インテルHDグラフィックス(Intel HD Graphics)」だ。一昔前であればチップセット統合型グラフィックスといえば低コストノートの代用品のようなイメージがあったが、第8世代に相当するブロードウェルでは共有仮想アドレス領域がハードウェアでサポートされ、CPUコアとGPUコアの間のデータ交換が容易になるなど、ディスクリートモデルよりも「物理的にお互いが近い」メリットを活かした設計となった。仕様を見てもダイレクトX12やオープンGL 4.4、オープンCL 2.0への対応にはじまり、4Kクラスの出力を可能にするディスプレイポート(DisplayPort)1.2をサポートするなど、性能面では数世代前のGPUを凌駕するほどの性能を備える存在となっている。

そもそもiMacは大型ディスプレイを備えるオールインワンモデルとして利用されるケースが多く、外部ディスプレイを拡張するユーザは稀であることを考えると、インテルHDグラフィックスの積極利用によって省電力化や静音化を図るメリットのほうがユースケースとしては大きくなる。いたずらにベンチマークだけに踊らされるのではなく、「足るを知る」でニーズとバランスをとりつつ設計するセンスの良さは、さすがアップルといったところだろう。

新型iMacのベンチマーク結果

ギークベンチ(Geekbench 3)による新旧iMacのCPUの性能結果。ベンチマークで見てもスカイレイクを搭載したLate 2015のiMacは、ハスウェル世代のものに比べて同クロックで16%近い性能向上を記録している。上位モデルでもクロック数が3.5GHzから3.3GHzに下げられたが、それでも約5%性能向上しながら、消費電力を抑える設計へと移行している。

出典/Macお宝鑑定団 【URL】http://www.macotakara.jp/blog/macintosh/entry-28221.html

21.5インチはスカイレイク非搭載

iMac 21.5インチ 4Kレティナのロジックボード。ロジックボード表側にある赤で囲まれた部分がインテルグラフィックス6200を内蔵したプロセッサ。その下には16GBのサムスン製メモリ。

CTOによるプロセッサの変更

レティナディスプレイを搭載しない21.5インチのiMacは1.6GHzならびに2.8GHzともにCTOでプロセッサのアップグレードはできない。また、27インチのiMacの下位モデルもプロセッサのアップグレードは不可だ。

14nmのスカイレイクのダイ

スカイレイクのダイ写真。左側がグラフィックスコア、右側が4つのプロセッサコア。14nmまで微細化されたプロセスルールはCPUそのものの小型化、低消費電力化に大きく貢献しているだけではない。ダイサイズが同じであればその分グラフィックスプロセッサが拡張可能となり、より強力な描画性能を内蔵する。これによってチップ内蔵GPUは今やディスクリートと切磋琢磨する存在にまで成長しつつある。