Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日: 更新日:

選ぶべきは本当にプロ? iPadシリーズの選び方

著者: 鈴木みそ

選ぶべきは本当にプロ? iPadシリーズの選び方

iPadシリーズ全ラインアップ

【CHECK 1】自分に最適なのはどれ?現行モデルの選び方

とかく今は出たばかりのiPadプロに興味がいってしまいがちだ。iPadの購入を検討するならば、落ち着いて自分の用途と照らし合わせて検討すべきだろう。上記の全ラインアップのスペックを参照しながら、「何が必要」で「何が必要でないか」を冷静に考えてみよう。

まずiPad(第6世代)は初代から続く伝統的な9.7インチ画面で、本体サイズは240×169.5ミリ、厚さ7.5ミリ。iPadプロの影に隠れてしまっているが、2018年3月に発売されたばかりの“今年モデル”だ。カラーはシルバーとスペースグレイに加え、iPadプロにはないゴールドを展開する。シルバーとゴールドではベゼルが白いのもプロとの違いだ。プロ以外で初めてアップルペンシルに対応したモデルでもある。

スペック面ではiPhone 7シリーズと同じA10フュージョンチップを搭載。メモリは初代iPadプロと同じ2GBを搭載する。ほとんどの用途に十分対応できる能力があると言っていいだろう。シリーズで唯一の3万円代(32GB Wi-Fiモデル・税別)という買いやすさもポイントだ。

これに対して新型iPadプロは、11インチ/12.9インチというひと回り大きな画面サイズが違いのひとつである。より広い作業領域が要求されるクリエイティブ系に最適だ。USB-C搭載でディスプレイやデジタルカメラなど外部機器との接続が容易なことや、ホームボタンを排したフルスクリーンなどもそれを後押しする。

カメラ性能はシリーズでも上位で、懸念されたレンズの出っ張りはiPhoneで感じるほどの違和感はなく、裸でフラットに置いてもガタつきは気にならない。また、ストレージ容量に512GBと1TBの選択肢があるのもiPadプロのみ。RAW現像や動画編集で大量の素材を取り込む場合にも頼りになるだろう。

同じ「プロ」の名を冠す10.5インチモデルも併売されているが、こちらは2017年リリースモデル。A10Xフュージョンチップを搭載し、タッチIDを搭載したホームボタンを有する。アクセサリは第1世代のアップルペンシルとスマートキーボードに対応。ゴールド、ローズゴールドを含めた4色ラインアップなのも特徴だ。11インチモデルとの最低価格での値段差は約2万円となっている。

一方、小型・軽量モデルのiPadミニ4もいまだ根強い人気を保っている。一番の理由は片手で持ちやすいサイズ感と軽さ。PCのサブ機として手帳感覚で使うには最適だ。またガラケーと組み合わせてiPhoneの“通話以外版”として運用することも可能だろう。チップはA8と4世代前ながら、メモリが2GBということもあって、性能的には現役レベル。iOS 12のアップデートによるパフォーマンスの向上も忘れてはならない。

iPad(第6世代)も実は2018年モデル。Apple Pencil(第1世代)が使えるモデルだ。iPadシリーズの中で一番手が届きやすい値段である。

iPhoneが大型化したといってもまだ開きがある。縦長のiPhoneに対して画面比率4対3のiPad miniは、感覚的な入力・閲覧のしやすさという面でも広く見える

【CHECK 2】11インチ? 12.9インチ? サイズで迷ったときの選び方

iPadプロを買うのであれば、悩むのがサイズ選びだ。スペックに差はないため、持ち運びが多いなら11インチ、据え置きなら12.9インチ、と考えるのが普通だ。しかし、12.9インチはホームボタンが廃止されたスペースを「画面サイズ拡大」でなく「本体サイズ縮小」に振り向けたため、以前は大小の間で5センチ以上あった長辺の差が約3.3センチにまで縮まった。可搬性で不利といえない状況だ。

差が出るとすればアプリの種類と使い方だろう。たとえばスケッチ系アプリを使う場合、12.9インチなら4分の1を写真表示にしても、描画エリアを9.7インチと同等に確保できる。また、作業領域はツールパレットにも影響を受ける。使いたいアプリのインターフェイスにどんな特徴があるかを考慮しよう。

加えて容量の選び方にも注意したい。iPadプロは1TBモデルのみメモリが6GB、その他は4GB搭載である。1TBモデルは価格が突出しているが、同時にメモリも1.5倍のものを手に入れられるのだ。

イラスト制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」。PC版を受け継いだインターフェイスのため、このアプリを11インチで使う場合、画面が窮屈になってしまうことがある。12・9インチを選ぶか、外部ディスプレイを用意したい。

スプリットビューで資料写真を見ながら「メモ」アプリで描画した。12・9インチなら、このスタイルでも描画エリアを広々と使える。

【CHECK 3】Wi-Fi? セルラー? 運用を考慮した選び方

各シリーズとも、Wi-FiモデルとWi-Fi+セルラーモデル(以下、セルラーモデル)では価格に1万5000円以上の開きがある。しかし、その差があってもなおセルラーモデルを選ぶべきだろう。

Wi-Fiモデルを選んだとして、ネットワーク接続時にフリーWi-Fiを渡り歩くことも不可能ではないが、それでは範囲が制限されるし、接続にメールアドレスの登録やゲストコード入力を求められる場合もある。また、テザリングでの運用は接続の手間や通信量の心配が意外にストレスになる。自由度とコストを考慮するとセルラーモデルでかつ「SIMフリーモデル」+格安SIMが最善策だと考えられる。

通信というとWEBやSNS、動画などを気にしがちだが、実はそれだけではない。バックグラウンドでのメール受信、メモ・メッセージ・カレンダーなどの同期、通知など、土台の部分でiOSの使い勝手を大きく左右してしまうのだ。これが後々の活用度に大きな差を生む要因となる。特にiPhoneやMacと連係して使うとそれが顕著だ。

自宅や会社での利用がメインならばWi-Fiモデル、外に持ち出して使う可能性があるならセルラーモデルを選ぶことをおすすめしたい。

eSIMを搭載する新iPad Proなら、海外へ行った際に現地で通信容量を購入できる。iPad、iPad mini4のセルラーモデルもApple SIMを購入すれば同じことが可能だ。

キャリア? 格安?iPadのSIMの賢い選択

iPadのセルラーモデルを選んだ場合、ネットワークは大手キャリアよりも、割安なプランを提供するいわゆる「格安SIM」が断然おすすめだ。通話機能のない「通信専用SIM」は安価で、各社とも月額数百円からのプランがある。NTTドコモの「ベーシックシェアパック」など複数回線契約で安く追加できるケースなら見積もりをしてみる価値はあるが、そうでなければ各種割引を考慮しても「SIMフリー端末+格安SIM」というスタイルがおすすめだ。“2年縛り”がなく、利用状況に合わせて柔軟にプラン変更できることも利点のひとつ。以下の格安SIMの料金プランの例を見て、乗り換えを検討してみてもいいだろう。

格安SIMの料金プラン一例(原稿執筆時)。NTTドコモは子回線の扱いにすることで単独の月額利用料は安くなるが、親回線で月額6500円(5GB)からのプラン契約が必須だ。

【CHECK 4】アップルペンシルは必要?アクセサリの選び方

アップルペンシルは、iPadとiPadプロでペイント系アプリやPDFの注釈など細かい書き込みをしたい方にはぜひおすすめしたい。そうでない方は無理に買う必要はなく、様子見したうえで一般のスタイラスを選んでもいいだろう。

文字入力が多いならば、スマートキーボードフォリオも欲しいところ。入力のしやすさに加え画面の広さを有効活用でき、特に表計算アプリなどで利点が大きい。逆に、入力よりも動画やWEBなどの閲覧中心なら、立てたときの底面積が狭い「スマートフォリオ」のほうが取り回しやすさで有利だろう。

iPadプロ用にサードパーティ製のキーボードやカバーを購入するなら、アップルペンシルに対応しているかどうかの確認が必須だ。現時点ではケース厚の干渉によりペアリング・充電に非対応のものが多い。また、イヤフォンについてもブルートゥースかUSB-C接続のもの、あるいはUSB-Cとライトニングの変換ジャックが必要になる。

文字入力用途がそこまでないのなら、キーボードは買わないと割り切ってもいいだろう。フォームの入力といった文字数であれば、ソフトウェアキーボードも慣れ次第。フリック入力も使える。

本体サイズが小さくなったとはいえ12.9インチにキーボードフォリオを装着すると約1.04キロと12インチMacBookの重さをオーバーする。

編集部推奨![用途別]iPadシリーズおすすめモデル構成セット

A エントリー歓迎!iPad入門セット

初めてiPadを購入する方には、買いやすい価格のiPad(第6世代)がおすすめ。ビジネス用途にも文句ないスペックだ。各種アプリやビジネスドキュメント程度であれば容量は32GBでも問題ないが、写真や動画を大量に扱うのであれば128GBを選択しよう。よりiPadらしい使い勝手を楽しむなら初代Apple Pencilも用意したい。積極的に活用の場を広げるにはCellularモデルが良いだろう。カバーはApple製Smart Coverがもっとも身軽。キーボードを使いたいなら、純正はないため、サードパーティ製Bluetoothキーボードを用意しよう。

B とことんクリエイティブ!理想の制作環境セット

iPad Proを究極のクリエイティブツールとして使うなら、最上位のモデルを選択したい。もちろんApple Pencilは必須だ。自宅や職場での利用を想定してWi-Fiモデルを選択したが、ここに至ってはCellularモデルとの価格差は誤差の範囲かもしれない。ペイント系アプリを使う際、本体の向きを変えながら描く人なら、Smart Folioは付けないほうが扱いやすいだろう。背面の傷を防ぐにはサードパーティ製のシンプルなクリアカバーやスキンシールが便利だ。持ち運び用にApple Pencilごと収納できるスリーブケースを追加しても良いだろう。

C 持ち運び重視ならコレ!機動力勝負のコンパクトセット

ビジネスをサポートするサブデバイスとして、電子書籍端末として、あるいはスマホ代わりとしても最適なのがiPad mini 4。ほぼA5サイズで扱いは手帳感覚で、カバンに出し入れがしやすい。余裕を持ったストレージで動画も音楽もたっぷり持ち歩き、機動性を損なわないAirPodsで楽しもう。スマホ向けゲームのインターフェイスもこのサイズなら操作しやすいはず。小さくてもバッテリ持続時間は新型iPad Proと同等というパワフルさも安心。データ専用SIMで安価に運用し、通話にはガラケーを用いるというモバイルスタイルにもおすすめだ。