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Apple WatchがiPodに⁉︎ 変態ケース「tinyPod」レビュー。弱点もあるが、ただの“アイデア商品”ではない。独自の魅力を発見!

著者: 松山茂

Apple WatchがiPodに⁉︎ 変態ケース「tinyPod」レビュー。弱点もあるが、ただの“アイデア商品”ではない。独自の魅力を発見!

「tinyPod」は、Apple Watchを“手首から解放”する。新発想のケースをレビューしていこう。

Apple Watchを買い替えたとき、それまで使っていた1本はどうしているだろうか。

iPhoneであればサブ端末として手元に残す手もある。しかし、手首に巻くというApple Watchの性質上、サブの必要性があまりない。

筆者は歴代のApple Watchを使ってきたが、いずれも「Apple Trade In」や中古ショップに下取りに出したり、家族や友人に譲るなどしている。その点、「tinyPod」は“使わなくなったApple Watch”に新たな可能性を見せてくれると思う。なんと、Apple WatchがiPod風のデバイスに生まれ変わるのだ。

tinyPodが半年かけてやってきた。2モデル、各3サイズのラインアップ

tinyPodの存在を知ったのは、2024年7月のこと。その時点では予約受付中で、販売は秋頃の予定とあった。

モデルは2種類。スクロールホイールを搭載したtinyPodと、スクロールホイールなしのtinyPod liteだ。それぞれ41/40mm、45/44mm、49mm (Ultra)の3サイズがあり、Apple Watch Series 4〜9とSE、Ultra 1〜2に対応している。当然、スクロールホイールを試したいのでtinyPodを注文した。

ところが待てど暮らせど届かない。暮れも迫った12月の中旬、やっと配送されて手元に到着した。というわけで、待ちに待ったレビューなのである。

tinyPodとtinyPod liteは、Apple Watchに応じた3つのサイズをラインアップする。上図はtinyPod。送料込みで1万6000円だった。写真●tinyPod
こちらはスクロールホイールなしのtinyPod lite。柔らかい素材を使ったソフトシェルタイプで、側面に露出するApple WatchのDigital Crownで操作する。公式サイトでは、tinyPod liteが39ドル、tinyPodが89ドルだ。

Apple愛が溢れるtinyPod。まずはセットアップをしていこう!

tinyPodは、Apple製品へのリスペクトを感じるパッケージに入っていた。ちなみに、公式Webサイトを開くと表示される「Say Hello to tinyPod.」の文字、フォント、そしてアニメーションからもApple愛を感じる。ぜひ一度、サイトを訪れてみてほしい。

tinyPodの公式サイト。Apple風の演出が楽しい。
Appleライクなパッケージ。QRコードからセットアップしていこう。

箱を開けると、すぐにtinyPodと対面した。Apple Watchをはめ込む部分に「Setup」と書かれたQRコードを印刷した紙がある。それを読み取ると、セットアップの手順が説明されたWebページに遷移した。

Apple Watchの事前設定と準備

QRコードを読み込んだiPhoneの画面。画面に沿ってApple Watchの設定を進めよう。
tinyPodを装着する向きの関係上、Apple Watchの「設定」→[一般]→[向き]で「Digital Crown」を[左]に変更する必要がある。
また「設定」→[パスコード]で[手首検出]をオフにしよう。
Apple Watch Series 4、5、6、SEの場合、サイズが小さいのでtinyPod内に隙間ができてしまう。もし該当モデルを使う場合は、付属の黒いフォームをtinyPod内に貼り付ける。
tinyPodの裏蓋を外し、バンドを外したApple Watchをセット。蓋を閉じれば準備完了だ。

tinyPodの仕様

裏蓋を閉じても背面のセンサ部分は露出する。そのため、磁気充電ケーブルを使って充電可能だ。
左側面。Apple WatchのサイドボタンとDigital Crownを押すためのボタン、マイク用の穴を搭載している。
右側面にはスピーカ用の穴もある。
先述のとおり、Apple Watchの背面は露出する。当然だが、手首に密着させないため心拍数などは取得できない。あくまでそこは割り切って使用するケースだ。

スクロールホイールでApple Watchを操作する。その“カラクリ”を分解して確かめる

tinyPodのスクロールホイールは、初代iPodのように物理的に回転するパーツでできている。この回転をどのようにApple Watchに伝えているのだろうか。興味本位で分解してみた。

ゴムベルトでホイールの回転をDigital Crownに伝える、シンプルな構造のようだ。当然、機械式なのでバッテリなどの電力は一切必要ない。なお、スクロールホイールの中央は押せるように見えるが、ダミーで動作はしない。

tinyPodを分解した。ホイールにかかったゴムベルトをプーリを介してDigital Crownまで誘導。ゴムベルトをDigital Crownに接触させることで操作している。

Apple Watchをミュージックプレイヤに。iPodユーザならわかる、懐かしく楽しい操作感

まずは、Apple WatchをiPod代わりとして使ってみよう。Apple Watchに曲をダウンロードし、AirPodsで再生してみた。

tinyPodを装着したApple Watchで音楽を聴くため、曲をダウンロードしておく。Apple Watchと連係しているiPhoneで「ウォッチ」アプリを開き、[マイウォッチ]から[ミュージック]をタップ。[プレイリストとアルバム]の[+ ミュージックを追加]から、プレイリストやアルバムを追加しよう。

…たしかにiPod的に使える。アルバムや曲の選択をスクロールホイールで行う。この操作感は、かつてiPodユーザだったなら懐かしさを、iPodを知らないユーザなら新鮮さを覚えるのではないだろうか。

正直、Apple Watchの画面をタップしたほうが早い。また、Apple Watch単体でも同じことができる。しかし、スクロールホイールを操るこの感覚には、特別な楽しさがある。

Apple Watchに曲をダウンロードしておけば、iPhoneが手元になくても音楽が聴ける。まさにiPodのように使えるわけだ。
スクロールホイールを使って、画面をスクロールできる。
ボリュームの上げ下げも可能だ。

tinyPodの使い方はいろいろ。ヘルスケアデータの取得も“無理ではない”

当然ながら、Apple Watchの「ミュージック」以外のアプリも利用できる。「Podcast」を聴いたり、「メール」や「メッセージ」でコミュニケーションをとったり。「天気」や「カレンダー」などをチェックする情報デバイスとして活用するのも、新感覚で面白いだろう。

また、見守りツールとしてApple Watchを子どもに持たせるときのケースとしてもいい。その場合は、安価でDigital Crownの操作がしやすいtinyPod liteがおすすめだ。

実際はApple Watch単体でアプリを実行しているだけだ。それなのに、tinyPodを使うとまったく別のデバイスを操作しているような感覚になる。

腕に装着しないので、Apple Watch背面のセンサを使ったヘルスケア関連の計測はできない。ただ、試しに露出するセンサに腕を押し付けたところ、心拍数や血中酸素は測定できた。

背面のセンサを腕に押し付ければ、心拍数の測定や血中酸素のチェックは可能。ただし、Digital Crownはケースで覆われるため、心電図の取得はできない。

今一歩のスクロールホイール。操作性にはもう少しこだわってほしかった

新発想で面白いケースなのだが、スクロールホイールの操作性は今ひとつ。ゴムベルトでDigital Crownを回転させるという構造上、ある程度スクロールホイールに負荷がかかるのは避けられない。しかし、指が滑ってスクロールホイールを上手く動かせなくなるのは予想外だった。

メーカーは、Webサイトで「Reinventing the wheel.. A tiny bit.」(ホイールの再発明…ほんの少しだけ)とアピールしている。そのメッセージにあるように、tinyPod最大の価値はスクロールホイールを復活させたことにあると筆者は考えている。だからこそ、その操作性にはとことんこだわって欲しかったというのが正直な感想だ。

Webサイトのメッセージ。クオリティの高いサイトだけに、期待感が自ずと高まってしまう。

WebサイトのtinyPodの写真では、ボディの表面とスクロールホイール部分は艶のある同素材に見える。しかし、実際のスクロールホイールには滑り止め用の細かな凹凸加工があった。素材感の違いは、使い勝手の向上のためとまだ理解できる。ただ、その加工を施していながら、快適な操作感を実現できていないのは残念だ。指先が乾燥していたりすると、操作しづらさが顕著に現れる。

テープを貼ってカスタマイズ。ユーザを“試す”変態ケースだが、ユニークさは唯一無二

試しに、スクロールホイール表面にパーマセルテープを貼ってみた。すると、操作性が飛躍的に向上した。逆に言えば、こんなにちょっとした工夫で解決する可能性があるということだ。もしtinyPodのリニューアルの予定があるのなら、メーカーにはスクロールホイールの快適性を追求してほしい。

写真撮影の現場などでよく利用する、パーマセルテープ(紙製の粘着テープ)を貼ってみた。表面がザラザラしているので、指の引っ掛かりがよくなった。

また、「ホイールの回転でスクロールして中央のボタンで選択」というiPodのユーザインターフェイスを記憶しているせいか、ホイールの中央を指で押し、「あぁ、違った」とサイドのボタンを押し直すこともたびたびあった。これはApple Watchを使う以上仕方のないことだ。ユーザが操作に慣れるしかない。

このようにいくつか気になる部分はある。しかし、Apple Watchを再利用するという目的では有用な選択肢の1つだ。それも、かなりユニークである。もし使っていないApple Watchが手元にあるなら、tinyPodの購入を検討してみてはいかがだろうか。

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著者プロフィール

松山茂

松山茂

東京の下町・谷中を拠点として日々カメラと猫を愛でながら暮らすフリーライター。MacやiPhone、iPadを初代モデルから使ってきたのが自慢。

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