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ARグラス「XREAL One」先行レビュー! iPhoneやMacとケーブル1本でつながる。最小最軽量の“外部ディスプレイ”がやってきた

著者: 山本敦

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ARグラス「XREAL One」先行レビュー! iPhoneやMacとケーブル1本でつながる。最小最軽量の“外部ディスプレイ”がやってきた

中国のARスタートアップであるXREALは、2025年1月17日、ARグラスの新製品「XREAL One」を発売する。本記事では、それに先駆けて実機レビューをお届けしよう。

6万9980円の衝撃。“手頃”な価格で手に入る最先端ARグラス

XREALは前身のNrealとして創業した2017年から、OST(光学シースルー)タイプのARグラスと、関連するアクセサリの開発に特化してきた。新製品のXREAL Oneはブランドの新しいフラグシップモデルだが、6万9980円という販売価格は、最先端のARグラスとしては手頃といえる。

本機は“ウェアラブルタイプのディスプレイ”と定義してもよい。iPhone、Mac、iPadを筆頭としたDisplayPort over USB Type-C(DP Alt Mode)に対応するデバイスにUSB-Cケーブルで接続すると、XREAL Oneのディスプレイにデバイスの画面がミラーリング表示される。透過表示(シースルー)に対応しているので、画面に映像を映しながら実風景を肉眼視することも可能だ。

XREAL Oneは、ソニーの0.68型マイクロOLEDを搭載している。解像度は片目あたり最大フルHD(1920×1080画素)。ARグラスの内側上部に配置されたハーフミラーにマイクロOLEDディスプレイの映像が投射され、ユーザはこれを視認する。

ハーフミラーに投射されたマイクロOLEDディスプレイによる映像を左右の目で見る。

画面視野角は50度、最大リフレッシュレートは120Hzで、最大90Hzのアップスケール処理機能を搭載する。最大輝度が600nitsという明るさは、従来の上位モデルである「XREAL Air 2 Pro」よりも100nits向上した。実際、映像の第一印象は明るく色鮮やかで、精細感にも富んでいる。

XREAL Oneが搭載する独自チップ「X1」。従来モデルの“課題”を見事に解消

XREAL Oneには、新規開発された専用のSoC「X1チップ」が搭載されている。従来のXREALシリーズは専用のアダプタ、または外部デバイス上で動作するXREAL製のソフトウェアを介してARグラスに映像コンテンツを表示していた。そのため制御の処理にわずかなタイムラグが発生することもあり、接続したデバイスからの操作が緩慢に感じられることがあったが、「X1チップ」の搭載で見事に解消されている。

XREALが本機のために新開発した「X1チップ」を搭載している。

XREAL Oneは、さまざまなデバイスとUSBケーブルで“直結”し、X1チップで映像処理を引き受ける。その効果として、表示の滑らかさが大きく改善された。従来のXREALシリーズでは20〜30ミリ秒前後だった映像表示の遅延速度が、約3ミリ秒にまで大幅に短縮されているからだ。iPhoneにUSB-Cケーブルで直結してゲームをプレイしてみると、映像がもたつくような感覚はなく快適に遊べた。

MacBookに接続する場合も、従来のXREALシリーズでは「Nebula for PC」というMac対応のアプリケーションが必要だった。一方、XREAL OneはMacとのUSB-Cケーブル1本で接続できる。それにより映像の安定感は大きく増した。

明るく視認性に優れたディスプレイ。同時に“身軽さ”も獲得した

今回、iPhone 16 Pro、M3搭載MacBook Pro、M4搭載iPad Proと接続してXREAL Oneを試した。どのデバイスでも動作は快調で、接続や操作性も安定感がある。

また、Androidデバイスは最初にGoogle Pixel 9 Proで試してみた。すると、本来はPixelの画面をXREAL Oneにミラーリングできるはずがうまく表示されない。Pixel 8 Proでは同じ手順で難なくミラーリングができるのだが。XREAL Oneの発売時には、Pixel 9シリーズへの対応が済んでいることを期待したい。

iPhone 16 ProにXREAL Oneを接続。「写真」など多くのアプリは、iPhoneが起動している間、接続したXREAL Oneのディスプレイにミラーリング表示される。

XREAL Oneの映像は、とても明るく視認性が高かった。利用環境が明るめの室内であっても、画面輝度を最大値にする必要はない。また解像度はフルHDだが、精細感にも富んでいる。

さらに、画面の視認性を一層高められるよう、XREAL Oneは背景の明るさだけを変える電子調光機能を備えている。それにより、従来モデルには搭載されていた着脱式の遮光カバーを排除。本体の“身軽さ”を向上させた。

本体のボタンで楽々操作。「XREAL One」×「Apple Music」の意外な好相性!

XREAL Oneは、装着したユーザの頭の回転や傾きを検知する3DoF対応(XYZ軸)のARグラスだ。頭の動きに対する映像の追随性能も高く、安定している。画面は視野の目の前で「固定」するか、頭の動きをトラッキングしてブレ補正をかけながら追跡するモードが選択可能。遅延の解消とブレ補正の効果か、筆者はゲームをプレイしても“酔う”ことはなかった。

操作ボタンは、本体右側のテンプル(つる)に用意されている。下側には、メニュー操作やレベル調整に使う「+/−ボタン」と、モードの切り替えや長押しによる画面のセンタリングなどの操作に利用する「Xボタン」。Xボタンは、先述のヘッドトラッキングモードの切り替えや、ワイドスクリーン表示に切り替える際に使用する。そして、上側はカスタマイズ可能な「クイックボタン」だ。ボタン操作に対する反応は機敏で心地よい。

右側のテンプルの下側にあるオレンジ色の「Xボタン」は、使用する頻度が高い。

映像だけでなく、本体の内蔵スピーカによるサウンドもクオリティが高い。XREAL Oneは、同社のARグラスではじめて、オーディオブランド・Boseと音をチューニングしたモデルだ。Boseらしいボールドで力強いサウンドが、そのままXREAL Oneに継承されている。

音楽や映画、YouTubeの鑑賞にも最適だが、筆者はApple Musicのカラオケ機能である「Apple Music Sing」との相性がとてもよいと感じた。XREAL Oneは、低音までどっしりと響くカラオケトラックを再生してくれる。耳をふさがずに装着できるので、自分の声も聞ける。想像以上に楽しいので、Apple Musicの利用者で、XREAL Oneを購入される方はぜひ試してほしい。

サウンドが明瞭なBoseのスピーカを内蔵。「Apple Music Sing」ととても相性がよかった。

“のぞき見”対策はあと一歩。アップデートや専用アプリに期待したい

XREAL Oneはウェアラブルタイプの“外部ディスプレイ”だ。そのため、接続しているデバイスの画面がスリープすると、XREAL Oneは映像信号を受信していない状態だと判定し、表示をオフにする。また、パソコンやスマートフォンの画面を非表示にしてXREAL Oneだけに映す使い方は、一部のアプリケーションとの組み合わせに限られる。

筆者がiPhone 16 ProとMacBook Proで試した限りでは、Apple TV+、Netflix、AmazonプライムビデオではiPhoneの画面にコントローラだけが表示され、映像コンテンツはXREAL Oneの画面だけで鑑賞できた。これであれば、映画やドラマを周囲からのぞき見されずに楽しめる。

Netflixのアプリの場合、コンテンツを再生中、映像はXREAL Oneの画面だけに表示された。

Apple MusicのミュージックビデオやYouTubeの動画コンテンツは、iPhoneの画面をオフにするとXREAL Oneの映像も非表示になり、スピーカからサウンドだけが聞こえた(筆者はYouTube Premiumを契約している)。一方「写真」アプリでは、iPhoneがスリープするとXREAL Oneの映像もサウンドもオフになる。Apple BooksやKindleのような電子書籍リーダーアプリも同様だ。

組み合わせるデバイスによってもXREAL Oneの振る舞いは変わるようだが、iPhoneなどスマホで撮影した写真やビデオ、そして電子書籍やYouTubeなども、XREAL Oneだけで閲覧できるのが望ましい。あるいは、別途XREALの独自アプリを用いて、ユーザが指定したコンテンツはデバイスをスリープさせたあとも観られる環境が欲しい。

またXREAL Oneの内蔵スピーカは、いわば“耳をふさがないイヤフォン”のようなものだ。ボリュームを上げると盛大に“音もれ”する。カフェや電車など、周囲に人がいる環境でXREAL Oneを使うのであれば、コンテンツを再生するデバイスにBluetoothワイヤレスイヤフォン・ヘッドフォンをペアリングし、「映像はXREAL One、サウンドはオーディオ機器」と切り分けて使うといいだろう。

iPhoneにワイヤレスイヤフォンをBluetooth接続しておけば、サウンドはイヤフォンに出力できる。

手軽なシェアもXREAL Oneならではの利点。“一般化”がいよいよ見えてきた!

XREAL Oneは、DP Alt Modeに対応するデバイスに「挿すだけで使える」ことが最大の魅力だ。家族や友人が自分のスマホやパソコンにXREAL Oneを接続すれば、ARグラスの没入体験をすぐにシェアできる。本体のデザインや装着方法もサングラスに限りなく近いので、筆者の家族も抵抗感なく身に着けてくれた。Apple Vision ProやMeta Quest 3では、なかなかこうはいかない。

デザインは“ほぼサングラス”。屋外の人が集まる場所でも使いやすい。

課題は視力の補正だ。XREAL Oneをメガネの上から掛けることも無理ではないが、画面が見えづらくなるし装着感が落ちる。さらに屋外で使っていると周囲から奇異の目で見られてしまうだろう。コンタクトレンズを使うか、または別売りの「度付きインサートレンズ」を用意したい。

XREAL Oneは快適な装着感にもこだわったARグラスだが、長時間使っていると、マイクロOLEDディスプレイを内蔵する本体上部、眉間のあたりがほんのりと熱を帯びてくる。今回は寒い冬にテストしたので視聴の妨げにはならなかったが、暑い夏の時期にどう感じらるかは検証する必要がありそうだ。

ともあれ、XREAL OneはiPhone、Mac、iPadなどUSB-Cを搭載するAppleデバイスと直結し、シンプルに没入型エンターテインメントが楽しめる良品だ。画質や操作性も申し分ない。ARグラスが、いよいよ一般ユーザにとっても“買い”のアイテムになってきたことを実感する新モデルだった。

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著者プロフィール

山本敦

山本敦

オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ITからオーディオ・ビジュアルまでスマート・エレクトロニクスの領域を多方面に幅広くカバーする。最先端の機器やサービスには自ら体当たりしながら触れて、魅力をわかりやすく伝えることがモットー。特にポータブルオーディオ製品には毎年300を超える新製品を試している。英語・仏語を活かし、海外のイベントにも年間多数取材。IT関連の商品企画・開発者へのインタビューもこなす。

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