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Power PCへの転換期。ハイエンドデスクトップとして登場した「Power Macintosh 8100/80AV」

著者: 大谷和利

Power PCへの転換期。ハイエンドデスクトップとして登場した「Power Macintosh 8100/80AV」

第一世代Power Macのトップモデル

ノート型Macについていくつか記事を書いてきたが、今回はデスクトップモデルを採り上げてみよう。1994年に発売され、自分でもメインマシンとして購入したPower Macintosh 8100/80AVである。

初代Macintoshの誕生の10周年にあたるこの年、Appleは、Macintoshに搭載するCPUを、Motorola製の68000系のマイクロプロセッサから、Apple/IBM/MotorolaのAIM連合によって共同開発されたPowerPCへ転換し始めた。

両者の最大の違いは、68000系がCISC(複合命令セットコンピュータ)アーキテクチャに基づくのに対し、PowerPCはRISC(縮小命令セットコンピュータ)アーキテクチャを採用していたことにある。CISCでは個々の命令を高機能化するが、RISCは多数の単純な命令を高速実行したほうが効率が良いとの考えがベースにあり、Appleは、進化の行き止まりにあった68000系からPowerPCに乗り換えることにしたのである(ちなみに現在のマイクロプロセッサの設計思想は、CISCとRISCの長所を組み合わせたものが主流となっている)。

通常であればCISCからRISCへの転換は、OSやソフトウェアの変換も余儀なくされ、実現するまでに長い期間がかかるためビジネス的なリスクが大きい。ところが、かねてから68000系の将来に疑問を持っていた社内の有志エンジニアたちが、当時の経営陣にも秘密裏にMacのRISC化の研究を進めていたため、短期間で移行を完了できたというエピソードが残っている。

Power Macintosh 8100/80AVは、ピザボックススタイルのPower Macintosh 6100、および標準的なデスクトップモデルのPower Macintosh 7100とともに発表されたPowerPC採用Macの第一世代モデルのハイエンド機であり、僕は仕事柄、この新しいアーキテクチャのマシンをいち早く購入し、使ってみる必要があった。

コストダウンの波の中。優れたAV機能を備えるAppleらしい1台だった

このマシンは、製品名の末尾にオーディオ・ビジュアルの略である“AV”が付加されていることからもわかるように、マルチメディアタイトルなどの制作を意識したモデルで、Sビデオとコンポジットビデオの入出力機能を備えていた。当時はまだ、ビデオカメラなどで撮影された動画のデジタル編集を行うには、アナログのビデオ信号をコンピュータ側でデジタイズする方式が一般的だったのだ。そのAV機能を、僕は主にQuickTimeムービーの制作に利用し、1995年に複数の写真から360度のVRフォトを作り出すQuickTime VR技術が登場してからは、そのオーサリングにも活用した。

また、モデムやファクスモデムの機能をエミュレートできるGeoPortと呼ばれるApple独自のシリアルポートも備えるなど、本体のみでさまざまな処理が行えることを目指したApple色の濃い製品でもあった。

Power Macintosh 8100/80AVで残念だったのは、樹脂製のフロントとリアパネルを除いて板金製のボディが、68000系時代のMacintosh Quadra 800の使い回しだという点と、内部基板へのアクセス性の悪さである。ハイエンドモデルにもコストダウンの波が押し寄せてくる、そんな時代だった。

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著者プロフィール

大谷和利

大谷和利

1958年東京都生まれ。テクノロジーライター、私設アップル・エバンジェリスト、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)取締役。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツへのインタビューを含むコンピュータ専門誌への執筆をはじめ、企業のデザイン部門の取材、製品企画のコンサルティングを行っている。

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